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理系スライムは汚物の海から這い上がる  作者: 愚痴氏
第二章 現地種族との接触
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第93話 力の差

ブクマ・感想ありがとうございます。

ステータス表記弄りますが、内容に変化はございません。

ゴブリンは未だ感知圏内、というわけで目の前の探索者達に対して状況説明を求めること、どちらを優先するべきか、逡巡は一瞬だ。


「アレはこっちの獲物でいいな?」

確認の意味で一応聞き。


「・・・・・・ッ!!アレは俺たちの獲物だ!」

一気に追い込みをかけようとしたところで止められた。


「アレは結構知恵が回るらしい。お前達にこんな罠見破れんだろ?私がやろう」

あえて直接的な言葉を選ぶ。策略では勝てそうにないと、自覚させるためだ。


「…ッ!!お前は!!罠があるとわかっているのにあいつらを見殺しにしたってことかっ!!」


縦に伸びがちな隊列の真ん中あたりにいた男が歩いてきて、そのまま胸ぐらをつかみ、持ち上げようとする。


けどそれは困るんだよなあ。


荒事で服が汚れるのを避けるため、外套の下は裸だ。ゴブリンの耳の数珠繋ぎと共に地面に埋めてきた。



そう、裸だ。


羞恥心なんてものはとっくの昔に消滅したが、見せて回りたいわけでもない。


というわけで。


掴み上げる肘の内側に手刀を当て、自然に曲げながら上腕を掴み。


(うるせ)え」


胸骨の真ん中をめがけ、掌底を当てる。


「ごあっ…?!」

男の心音に乱れが生じていることを感じ取り、そっと手を振りほどく。


最短でかつ手加減のしやすい、胸骨や肋骨の上からの攻撃は、息を無理やり吐き出させ、呼吸を乱すことで攻撃を止めることに成功したらしい。


追いつける感知圏内を突破されそう、という理由と、そもそも鬱陶しいという理由から、黙らせることにしたのだ。


「何人も死人出しておいて何が獲物だ。お前達にアレは荷が重い」

それだけ言って、短剣を落として踵を返す。


「ゴホッ……おえ…クソッ……仇なのに…」


そんな呟きを聞き流しながら。



人も誰もいないルートを策定したらあとは早い。

畑にある細工も関係ない。魔導鳴子、だったか。アレが作動するとして鳴り出すより早く畑を駆け抜けてしまえば問題はないのだから、実質直線コースに近い。他の罠もあったりして、気が抜けない状況ではあるが。


進行方向、先頭の、首魁と思われるゴブリンが振り返るのがわかった。

音速にかなり近い速度で走っているはずだから、音を感じとっても反応するだけの時間はないはずなのだが…まあいいか。


森を抜け、視界がひらけたため(感知能力的にも)、さらにギアを上げ、横から回り込むようにして突進、周りに控えたゴブリンを巻き込むようにして正拳突き、1体を殺し、1体の肉を抉って転倒させることに成功する。首魁には鮮やかな体捌きによるスライディングで避けられた。




そんなやり方もあるのか。かなり予想外だった。今度の参考にしよう。戦線離脱した一体を氷属性魔法で止めをさしつつ心に留めておく。


初撃を避けられた今、相対速度的に距離は離れていく一方だ。


二撃目。氷属性魔法を単発、進行方向上に撃ち込む。

魔法は基本的にはどれだけ速く飛ばそうとも放った本人の運動量には変化がない。


これはとても素晴らしいことだ。

魔銃をはじめとする銃器などは変な構え方をしただけで手首を痛めるというのだから、それに比べるとなんと良心的なことか。


とにかく、体勢を立て直さんというときに、魔法は体術に比べリスクの少ないしのぎ方と言って過言ではあるまい。

そんな方法で追撃を食らわせたわけだが・・・



野郎、身内を盾にしてしのぎやがった。


魔法には発動後方向などをある程度弄ることができる追尾性能と、決めた的に当たるまで止まらない貫通性能があるため、より正確に言うなら「その追尾性能・貫通性能を魔物が体内に持っている高魔素で打ち消した」という感じか。


その結果として盾となり、倒れたゴブリンの胴体には拳よりは小さいものの風穴が空いていた。

正中近くの腹部に空いたそれは、大血管を傷つけていたようで、鼓動に合わせて鮮血が噴き出す噴き出す。鮮血交じりのハラワタが、その中味と共に零れ落ちていく。


現代日本でもまず助からないような傷を負ったゴブリンは、治癒の類のスキルがないと助かるわけもなく。

それでも最期の意地なのか、私を見つめ、手を伸ばしていた。


・・・優先順位を変更。

魔法の衝撃で吹き飛ばされたゴブリンに合わせて歩幅を変更し、そのゴブリンの頭蓋を踏み割り、その生を強制終了(シャットダウン)する。


しかし、それに気を取られたせいで首魁と少々間が開く。


だが、これで手駒(・・)は3つ減った。

次の手はどんな方法を出してくるのか。


期待しながら正拳突きを繰り出す・・・と見せかけた薙ぎ。





しかし、その行動は中断せざるを得なくなる。


感知圏内を秒速約2キロという超高速で向かってくるの存在を検知したからだ。

それも小指の先、銃弾ほどのサイズと恐ろしく小さい。


もし、超高速により生み出される衝撃波、それによる空気の屈折率の歪み。それをわき目で見えていなければ気づかなかっただろう。


そのコースはまっすぐおあつらえ向きに私の側頭部に向かっていた。


もちろん人間の体のような致命的な弱点がスライムをベースとしている私にあるわけがないが、頭蓋骨の中にもそこそこ重要なモノは入っている。



というわけで、指で方向をずらすことにした。


ばきぃん。


正面から受け止めるのではなく、【圧力魔法】すらも用いて弾着の角度を調整。

その代償として肉を衝撃で吹き飛ばされ、骨を構成する金属フレームも大きくゆがんだ。


この程度のダメージで済んだのは、ひとえに弾が割合柔らかかったため、その運動エネルギーが思ったよりも吸収されたこと、その過程でこちらの肉体への接触面積が増えたことにより、【圧力魔法】による調整がうまくいったことが大きい。

・・・もっとも、それでも弾は十分小さいため、【圧力魔法】による抗力の調整が間に合わず、人体の構造に準拠してスライムでできた層の薄い側頭部などは簡単に貫通できてしまえるのだが。


数拍をおいてまだ次が来る。これだけの威力だから、気を付ければ魔力感知にも引っかかると思ったのだが、それにも引っかからないというのは・・・なかなか辛いものがある。



首魁が目が眩むほどの高魔素の塊をどこからか取り出している。

妙に覚えのある魔力パターンだが、ひとまず置いておくとして。


高速弾をそう何発も受け止められはしないため、減速・加速を調整して、つづく2発目を避けながら観察してみると、興味深いことが分かった。



この弾、魔力を魔法的に使った兵器ではない。


エネルギー変換効率が1であることはありえず、全ての物質が完全に反応するわけもないから当然なのだが、魔素の他の物質とは決定的に違う、高魔素を形成することで、魔力というエネルギーを蓄え、伝達するという性質を利用している場合、高魔素の反応が出るはずである。


それがないということは、高魔素のエネルギーを感知できないレベルまで他のエネルギーに変換しつくした、もしくは元から使っていない。


どちらにせよ、未知のエネルギーでもない限り、ニュートン物理学の世界だ。


タネが分からずとも、いや分かったところで現状何の意味があるというのか。


要は、物理で壊せる、それさえ分かっていれば十分だろう。



身体強化に使用するMPの量を大幅に増加、過負荷(オーバーロード)に耐えきれず、魔術回路が燐光を漏らす形でエネルギーロスが起きる。

それは同時に目の中でも起こり、眼球の内側を走る魔術回路が発する光は魔術回路が皮膚でおおわれていない分強く、瞳から発する光として放出され、視界が薄くフィルターにかけられる。





さて、対抗策も狭められたところだが、翻って首魁ゴブリンとその仲間たちは。

風が吹き荒れる中、周りの空気ごとその高魔素塊に吸い込まれていく。


隙をわざわざ見せてくれたのだ、逃す道理もなく、咄嗟に氷属性魔法を発動。



投げ込んだのを最後に首魁諸共ゴブリンは消えてしまった。



・・・反応が完全に消失した?


音でも、魔力反応でも捉えられないとなると、大方死んでいるとかぐらいだ。

つまり、今起こったことは「転移」。

それも、「バラバラになった自分の肉体を風で飛ばす」などというまがい物の技術ではなく、

まっとうに空間を歪めた、正統派ともいえる転移。


それにより、空間を渡って移動したのだ。


使用するタイミングなどに違和感を感じるが、

また、あの首魁と再会した時には真っ向から(・・・・・)聞き出す必要があるな、と心のメモに書き加えた。



まあよい。

今相手をするべきはスナイパー1人だけ。

2発目で3点法を利用しようやく距離が算出できた。

地平線をはさんでの曲射、それも初弾からあててくるとは恐れ入るが、移動しないスナイパーなどただの的だ。

3発目が来ないことから、離脱している可能性も考えられたが、念のためその場所を横から回り込むことにした。

地球上という条件は付きますが、立ち上がった状態から見て、人間の目線は約4キロ程度先までしか見通せないとされています。

これがいわゆる地平線で、2m以下の身長しかないアリスもそれぐらいしか視覚では見えません。

知覚範囲の半径が4キロまで至れていないから、知覚できないわけですね。


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