表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理系スライムは汚物の海から這い上がる  作者: 愚痴氏
第二章 現地種族との接触
92/155

第91話 ゴブリンリーダー

ブクマありがとうございます。

ゴブリンリーダーであるヨナは以前は、大きな勢力拡大に奔走していた。


ヨナはかつては虚弱児童であった。

生まれた当初は体が弱く、母親は看病のために数年間子供を作れなかったという。

なんとか物心つくまで育ったころにはガキ大将の使いっ走りにされた。父親からは、「いない子」扱いされていた。

無視は、すごく、辛かった。

成人してからは病気もしなくなったが、幼少期の病気のせいか、STRがあまり伸びなかった。STRの伸びない男はモテない。


成人のころに【統率】というスキルが生えたが、それを意中のゴブリンに言っても、「だから?STRが低いやつは何しても無駄なのよ」と返された。辛し。



だが、それでもめげることはなかった。

なぜならば、彼にはここではない世界の記憶があったからだ。


かつて地球の日本で、駿也と呼ばれていた記憶は、ただの夢と断じるにはあまりにも連続性があった。


ごく普通の一般家庭に生まれ、幼稚園から小学校に入り、中学、高校、大学までの学歴、

そして、4年間の大学生活を終えて、社会人になろうとした最中に死ぬまで(・・・・)


もちろん、彼女はできた。幼馴染が大学まで、同じだったから当然だろう。



全部、ぜんぶが記憶に新しかった。


もしかしたらその優越感、選民思想が無意識のうちに表に現れていたのかもしれない、とゴブリンリーダーに変わった今では思・・・いや、そこまで賢くもないだろ。と、ヨナは思い返す。


とにかく、異世界とも思える場所に転移したヨナは、唯一無二ともいえる拠り所であるスキル【統率】を使って育てていった。前世でゲームなどほとんどやらなかったため、スキルの上げ方など分からなかったが、「天の声」(仮称)の声に助けられた。






全てが変わったのは後に「厄災」とゴブリン達の間で呼称される、モンスターの群れの襲来の時である。


それはある昼下がりのこと。体長はゴブリンの2倍程。身体は仲のいい種族のオークほどがっちりとはしていなかったが、身にまとっているものの格が違った。見たこともない、きらきらした防具と思わしきものをその群れの中でも体格の良いもの達は身に着けており、体格の良くないものも、一目で上質と思われる、破けているところの少ない服を着ていた。


だが、ヨナには見覚えがあった。20数年の付き合いで、むしろゴブリンという今の自分よりもなじみが深いものだから、当然ともいえる。顔立ちは東洋系のそれではないが、人間である、と。


同時に思ったのは。

(ダッセェ。)

現代日本に元々生まれた彼にとって、ただのコスプレにしか見えなかったのだ。

もっとも、ゴブリンの腰蓑などとは比べるべくもないのだが。




『厄災』と称されている、人間たちだが、こちらに対して全く躊躇なく攻撃してきたということは、敵対種族。そう割り切る術はゴブリン生活の中で根付いていた。


そして、突然の人間の来訪(襲来)に驚いている間に、彼らはゴブリンを殺し始めた。


その戦闘技術もゴブリンとは格が違うものだった。煌びやかな防具達は容易にこちらの攻撃を受け流してくる。上質服を纏った人間達は何かつぶやいたかと思うと、炎や水、氷の柱などが現れ屈強なゴブリンたちはまとめて薙ぎ払われる。


その火の玉や氷の柱など、全く知らない技術が使われていることに驚きを隠せない。


自身より遥かにSTR、VITが優れたまさに赤子の手をひねるように掃討されていく光景は、ヨナを心胆寒からしめるには十分すぎた。

いつの間にか、立っていたはずの自分は腰が抜け、座り込んでいる。

股間を温かいものが流れ落ちるのを感じていた。


人間を遠巻きに見つめるゴブリン達の声が聞こえる。

「ガアァ!」「ギェアウオガ!!」

本来なんの意味も持たないその言葉は、この場合においてのみ意味があった。


最前線で魔法により貫かれ、倒れて人間に踏みつけられたゴブリンが、最後の力を振り絞り、その服の裾を掴む。


またあるゴブリンは雄叫びを上げながら突貫、カウンターで殺された。


ゴブリン達は果敢に散っていく。皆、恐怖と戦い、抑え込むために叫んでいるのだ。

彼らの犠牲もあって、侵略者たちはヨナのいるゴブリンの住処へと侵入を果たせていない。



そうして死んでいくのを呆然と眺めるしかないゴブリンは、ふと周りを見渡せば大勢いた。





これは、なんだ。人間がゴブリンを蹂躙している?


ふざけるな。生まれて間もなくのころ、混乱していた俺を助けてくれたのはゴブリンだ。


状況にようやく慣れてきたと思えば、仲間がかつての仲間に虐殺されている。


ふざけるな、ふざけるな。



「グエアグィイイィア!!(ふざけんな!!)」


震える膝に手を当て、やおら立ち上がる。


幸い、この怒りの感情に反して脳内は実にクリア。




しかもよく見ればニンゲンたちは個体単位でみれば、その動きは単調だ。ただその一撃一撃それぞれが脅威なだけ。さらに、彼らは互いの死角をカバーしようともしていない。彼らはまるで、その体格差、威力に目をつぶれば、子供ゴブリンの狩りごっこに見えなくもない。

STRが低いせいで狩りにも出させてもらえず、いつも子供たちの狩りごっこの適役として相手をしていたヨナだから、暇つぶしに地表を這う蟻共に【統率】を使い、同士討ちを仕向けていたからこそ気づけたことか。


一気に視界が開けた。


このままだとみんな死ぬ。

状況を打開するためには。


生えてこの方、一度も仲間に対しては使わず、ステータスの肥やしとなっていた【統率】だが、同族に対しての使い方は体が分かっていた。戦っているゴブリン、呆けているゴブリンに向けて使う。まだスキルレベルが低く、一度に従えられるのは六人のみ。連続で使い続けてその欠点をカバー。


ピコン!スキル【統率】のレベルが上がりました!


スキルの使い過ぎからくる頭痛に耐えながら【統率】で操り、個々の侵略者たちを気づかせずに分離していく。


分離させて、誘導させたところで、侵入者たちは足を取られる。落とし穴だ。時間がなかったので、深い穴ではないが、その深さは気をそらし、その対策を逡巡させるに十分。

そのすきをつき、少しゴブリンから見て近くなった頭部へと一斉攻撃。棍棒を投擲したり、しがみついたり...etc.


それに動揺した彼らに攻撃する余裕などない。脛に棍棒を振り下ろし、目を突き、きらきら防具にはそこからはみ出た頸部に打撃を加え続ける。夜明けごろにようやくすべての侵略者が息絶えた。


ピコン!レベルが上がりました!

ピコン!レベルが上がりました!

ピコン!レベルが上がりました!

ピコン!レベルが上がりました!


自分は手を出していないのに、経験値が手に入った。

【統率】のおかげだろう。


ピコン!規定量のゴブリンを統率していることを確認。進化を開始します。


眠気が襲い、それに素直に身を任せると眠りに落ちた。

目を覚ますと、ヨナはゴブリンリーダーへと変貌していた。


一回り以上大きくなった肉体。

ゴブリン達がこちらを見つめてくる目には、尊敬の感情がありありと見えた。


今世における、初めての感覚に多少どころではないむずがゆさを感じたが、それを抑え込んで、命令を下す。


斥候を出せ、と。

前世の記憶があるからヨナは精神年齢高いもん、それを鼻にかけてたらいじめられるのは必至。

4回生までの間で彼女のできなかった人だけ石を投げてください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ