第85話 組合と癒着
ブクマありがとうございます。
組合の扉をくぐると、おじさんのこちらを見る目が二対。
組合長と、なぜかバーテンダー。
おっさんは私を見上げるなり、
「なぁにやってんだぁテメェはぁ?!」
同時に拳がカウンターに叩きつけられ、けたたましい音を立て、他のカウンターにいる係の女性陣が目を向ける。
何を怒っているのかさっぱりわからない。いや、聴覚をもって知ってはいるんだが、組合を出るときに教えてもらってないから一緒のことだ。
「ごめんなさい、本当に何を怒っているのかさっぱりわからない。」
「ああ?クエストを初めて受けた場合は終わった後に、受けた時の係員に知らせる決まりだろうが!言ったろ?」
知ってた。
「全くの初耳なんだが。そもそもカウンターにいなくて、名前も聞いてないのにどうしろっていうんだ。」
そういうと、少したじろいだ様子を見せる。
「俺、ほんとに言ってない?」
「さすがに3日も経ってないのに忘れないだろう。」
受付の係の人の目が怖い。その様子から見るに、受付という業務をあまりしない人間らしい。役職が違うのだろうか。
「忘れてたっぽいな。」
おっさんはあっさりと手のひらを返した。
今度から説明は彼に聞くのはやめておいたほうがよさそうだ。
おっさんの怒る理由もひと段落したため、受付の係の人に話しかける。
「どこにどんな魔物が出現する、とかそういう情報は、どうやって手に入れるんだ?」
「それは資料室が主ですが、まだランクがFのあなたは高レベルの魔物の討伐依頼は受けることができません。」
レベルが上がるまでずっと常設をやれ、ってことか。
「それ以外にも、あるだろう。どの道が危ない、とか」
「・・・死にたいんですか、あなたは?!レベル15が勝てる相手ではないのがほとんどなのに。」
・・・はっ。
「自分が生きようが、死のうが関係あるまい。助けも求めんさ。」
「はあ。それでは隣町のはずれにゴブリンの巣があるという情報があります。できますよね?」
その巣にリーダーとなる存在がいるかにもよるが、多分いけるはずだな。
首肯し、隣町へ向かう道を聞く。歩いて半日・・・と言われたがステータスがある現状、その表記だと往々にして誤解が生じそうなのだが。
隣町に向かう道沿いにその巣は立地しているらしい。
ああ、それともう一つ。
「なんでバーテンダーのおじさんここにいるんだよ?」
「そりゃもちろん、一晩だけしか拘束されなかったのでしょう」
・・・それがここでのルールなのか?
手短に礼を言い、足早に扉をくぐって門へと向かう。
奥で「お前もなかなかの策士だな。」とか会話がなされているのを知覚しながら。
どうせそんなことだろうと思ったよ。というか、そこら辺の会話丸聞こえしてました。
門番をしてくれている人に、バーテンダーについて聞いてみる。
「すまない、組合にいるバーテンダーさんなんだが」
すると、意外な返答があった。
「ああ、ヨスターさん?あの人つい最近また捕まってたけど前組合長だぞ?なんなら現組合長の父親だけど」
ん?いや、それだと計算が合わない。
「あのバーテンダー何歳だよ?」
現組合長と比較しても、そう歳を食っているようには見えない。最大でも10も離れているようには見えない。子供というのは、相当特殊な例でも13ぐらいは離れているはず、そう思ったのだが、
「ああ、組合長には代々エルフの家系が務めることになってるからな、人間種の基準では測れんさ」
このセリフで覆されることになる。
「しかし、そこまでエルフの特徴が出ていないようだが?」
しかし、それにしては色々特徴に合致しないところがある。魔法の得意な種族ということもあり、ステータスでもMPが伸びやすく、組合長を代替わりするほど年齢を重ねていれば流石に体から発せられる高魔素の質・量どちらかに変化が生じてもおかしくないはずが、気づかなかった。
「ああ、純血でもないらしいね。長寿という特徴だけが遺伝したんじゃないか?」
なるほど。エルフの特徴がないのもそれで一応説明がつくか。エルフと人間の種族差をDNA解析するなんてことは当然ないわけで、そんなことが起こりうるといわれたら納得するほかない。
それと。
「またって言ってたけど、一晩で暴力沙汰起こした人間釈放するってどうなんだ?」
ん?と彼が言う。
「ああ、ここの人間じゃないのか。ヨスターさんはここらを治める領主に大きな貸しがあるらしくてね。大体のことならすぐに解放されるのさ」
仕事しろよ領主。私情持ち込みすぎだろ。
そう言うことなら理屈は分かる。納得はしかねるが。
必要だと思える情報は手に入った。とりあえず礼は言ってすぐに移動を開始する。
流石に現在の筋力から行けば一般人でいう半日などすぐに稼げる距離だとは思うのだが、一応念のため。
あの街には街道が一つしか整備されていない。それもそのはず、メインとして栄える産業もないため、人が集まるはずもない、そこそこ辺境の地だからだ。そのため、隣町など、道に迷うことはまずありえない。道なりに進むだけなのだから。
石造りの街道をゆく。
街道沿いには魔物が隠れられそうな草むらの様なものはない。地面にはところどころ土が見えているところもある。定期的に焼き払われているのだ。この街道を焼き払うのだってかなりの費用が掛かるのだろ・・・いや、魔法で焼けばいいのか。魔法とは考えれば考えるほどチートである。
視界はクリア、馬車らしきものと徒歩の旅人らしき人影が6つほど。この程度の人数なら、変な噂も立てられることもあるまい。立てられても気にしないが。
そう一人合点し、驀進ともいうべき巡航速度での走行を始める。
はい。というわけでヨスターさんはクズなんですね。あと権力同士の癒着がえげつないですね




