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理系スライムは汚物の海から這い上がる  作者: 愚痴氏
第二章 現地種族との接触
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第80話 ギルド登録

ブクマありがとうございます。

先に比べ人けの少なくなった組合の扉を潜る。

情報を聞きたい場合、どこで聞いたらいいのだろうか。

マントの裾を人に踏まれないよう気を付けつつ、受付の列に並び、少しして自分の番になる。

私の顔を見るや、奥に引っ込んでいってしまった受付の女性。

代わりに扉を開け出てきたのは見覚えのある禿頭の男性。たしか組合長といったか。



「すまねえな、こちらの方では金属の買取はしてないんだわ」

あら、残念。

「では、金属の仲買人はこの街にはいないのか?」

「いねえっての」


「あー、わかった。じゃあ次に両替してもらえるか?」

「するかよ、両替商にでも頼め」

こ れ は ひ ど い。


「それはすまない」


とりあえずそう言って離れることにする。

何が彼の気分を害したのか知らないが、まあ大体想像はつく。

大方組合建物内で起きた暴力沙汰だろう。・・・自衛なのだが。


次にやるべきは身分証明症の取得だ。狩った獲物で金銭を得るためだ。

「探索者ライセンス申し込み」の矢印が示すカウンターへ。そのカウンターには人がいない。受付側にも、並んでいるほうにも。代わりにカウンターに置かれているのは呼び鈴。



移動すると、受付側にも動きがあった。

おっさん(ギルドマスター)が受付から移動してきたのだ、


チリーン。


「目の前にいるだろうが」

「それなら接客業についてもうちょっと学んでくれ」

「ぐっ・・・ともあれライセンスの申し込みだな。ここで、この用紙に記入していってくれ。文字は、書けるか?」

その間に違和感を感じたが、それよりもライセンスだ。こくり、と首肯し、ペンとその用紙を受け取る。


さてさて、何を書き込めばいいのか。

あったのは名前と性別、種族、そしてレベルとMP、所持しているスキルなどを記入する欄だ。

レベルとMP,スキルを記入するということに驚いて、さっと顔を上げ、前にいるおじさんにが口を開く前に問いかける。

「全部記入しなければならないのか?」

問いかけられることを想定してなかったらしく、少し間が開く。


「名前、レベルの記入は必須だ。性別や種族、MP、スキルはパーティを紹介する際に参考とさせてもらう。もちろんパーティを組まない場合は関係ないが、うちの組合ではそれを推奨している。」

なるほど。じゃあ当分ソロで行かせてもらう私には関係ないな。


レベルは15、種族名は伏せさせてもらおう。何かあったときに事だ。

名前は、アリスとでもしておくか。あの人間たちにもそう言ったし。

スキルは、【身体強化】と火属性魔法、水属性魔法、体術くらいでいいか。


この探索者というのをこなすにあたり、ひとまず毒精製スキルや自己再生など特異的すぎるスキルは伏せる予定だ。

レベル15の凡人が身に付けるには、余りにも多すぎるし、特異的で高すぎる。


「これで、よろしく。」

用紙を渡す。

内容を確認した後に、

「では10分ほど待ってろ」

そうして扉の奥へと消えていった。

ここでも分とかの時間の単位が使われていたことにびっくりする。


さて、と。

目線をこちらに投げかけ続ける、前回のいざこざの時にもいたバーテンダーに目を向ける。

何の用があるのか。

10分ほどと言っていたし、少し離れていても問題はなかろう。

そう判断し、昼間から酒を飲んでいる連中の間をすり抜け、バーテンダーのおじさんのもとへと向かう。

「ずっとこちらを観察しているけど」


「さてな」

「そう」言わないのなら仕方ない。

それだけ返して踵を返したその瞬間。

バーカウンターをはさんだ状態でありながらバーテンダーが拳を突き出す。本来手が届くはずもない距離だ。

しかし同時に魔力感知に感あり。


すかさず前方に身を投げ出し、うずくまるのに近い状態で着地すると同時。


ちょうど上腹部があった位置を魔法らしきものが通過していくのを感じた。


その高い魔力が込められた魔法らしきものはそのまま直進し、霧散する。

「何をする」

立ち上がり態勢を整えなおしながら聞く。

「ふん、上出来じゃわい。ただ大きくよけすぎるのが難点かの」

勝手に腕試しをされたようだ。


断りもなくやってきた当たりちょっと癇に障るが、手を上げるほどでもない。

魔物相手でない戦闘で、まともな打ち合いが望めそうな、初めての相手に高揚しているのを感じながら、踏み込むために必要となる足の態勢をジリジリと整えていく。


それを察してか、ガタリ、と背後のテーブルや椅子が一斉に音を立て、背後を囲まれる。

「当たったらどうするんだ」

「お前だったら当たるほどのへまはしないじゃろ?」

確かに。しかし、

「よっぽど自分の観察力に自信があると見える」

「もちろんだとも。なんたってワシは―――」


「またせたな」

その緊迫した空気を打ち破ったのはおじさんだった。

「誰がおじさんか」

正直どっちでもいい。というか異論があるならなんと呼べばいいのか教えて欲しい。


「ともかく、コイツ攻撃してきたんだけど、どうしたらいい?」

おじさんが嘆息する。

「どうもこうも、自己責任だよ。組合ギルド自体には罰金ぐらいしか権力も強制力もない」

存外質素なものらしい。

「では、コイツの頭蓋を今撃ち抜こうとも構わない、と?」

「いや、屋内はやめろ。汚れる。あと、ここも国内ということで、刑法もそれに準ずるから、殺人はNG

だ」

なかなかひどいセリフだ。まるで国外などで人を殺しても構わないかのような。

いや実際にそれを罪に問うことはできないだろう。どう頑張っても立証できなければ説得力はない。


「で、コイツは傷害未遂の罪に問うことは?」

「・・・やめてくれ。コイツを闇討ちするのはいいが、それは無かったことにしてくれ」

揉み消すつもりか。まあいいけど。

「・・・・・・本人を目の前にして言うことかよ」

「わしのセリフ・・・」

存外肝っ玉が太いなこのおじさんは。


ということは、と考えると、このバーテンダーの立ち位置がある程度見えてきそうだ。

組合長から疎まれている人物であり、なおかつ組合関係者であることは間違いない。

トップなのだから処分すればよいものを、規約その他に縛られてできない、もしくは実権を握っているから迂闊な手出しができない、といったところか。それとも血縁か。


事情通ではないからそれ以上の憶測はやめにしておく。


閑話休題(それはともかくとして)


ここでただ矛を収めるのも癪だ。


瞬時に間合いを詰め、バーカウンター越しにバーテンダーの首元に狙いすまし、ちょうど胸鎖乳突筋の内側で首を掴む。


1・・・2・・・3・・・。


「な…おいっなにやってる!!」

約3秒頸動脈を圧迫され、意識を失ったバーテンダーを服の首元でつかみなおして、赤子にやるようにして抱き上げる。

「心配するな、死んでない。なあ、知ってるか?スキルなんて使わずともヒトの意識なんて奪えるんだよ」

「は?」

しれっと無視をし、出入り口の方へと向かう。


「って衛兵のとこにつれていくのかよ?!」

え、なんでだおじさん。

「そんなことするとまた評判下がるだろうが!」

えー。

「どうだろうねえ、まだ私は一般人だし。」

「え?!…あ…」

ようやっと気づいたか。

「とりあえずコイツら突き出してくるから。」


そう、まだライセンスを受け取っておらず、説明を全く受けていない状態なので、“組合に所属するもの”ではないのだ。そして、そんな一般人が公的な権力を持たない組合に従う義理もない。渡してこなかったのは完全に偶然だけど。

「おい、ちょっと待て、ライセンス受け取れよ!」

え、嫌だ、受け取った瞬間から身内でもみ消し始める。

「あとでなー。詳しく、かつ要領を得た説明を考えといてくれ」

組合の扉を肩で開きながら言う。首根っこでつかんでいたが、それも頸動脈を締め上げていることに気が付いて、腰のベルトで抱えなおした。背が高いとこういうところから便利だ。


ささっと扉を抜けて、衛兵さんのところへ。

早足で歩いたのと、その異様もあって、周囲の注目を集めまくっている。早く解放されたい。


こちらを見てギョッとした顔の年若い衛兵殿に声をかける。

「衛兵さん衛兵さん、これ傷害働こうとしたから受け取ってよ。」

「あ、ああ…。また組合か?」

「そうそう。私は属してないからね。」

やっぱりまた(・・)というからには度々起こってるらしい。


半ば持ち上げるようにしてバーテンダーの両手首を手早く縛っていきながらボヤく。

「結構しょっちゅうあそこから騒ぎ声が聞こえてきていたんだが…またか。」

「そこまでたくさん起こってるのか?」

「ああ、1日1回くらいは起こってるな。」

相当じゃないか。


「どうしよう、やめようか…」

「おや、探索者になろうとしてたのか?」

「うん、まだライセンスは受け取ってないからまだ一般人なんだ。」

彼はニヤリと口角を上げた。

「やるねえ。」


頰を緩めて、答える。

「そりゃ、まあ何の説明も受けてないからね。」

「え、何の説明も受けてないのにライセンスの申請書書き込んだの?!」

マジか、という目で見てくる。

ああ、そういうことか。


「だって全く同じことを他の大勢多数がやってるんだぞ?クエストの仲介料ぼったくられることはあるかもだけど、入った時点で騙されたり、金銭を多量に要求されるってのはないはずだと思ったんだ。」

「そう…考えがあってのことならいいんだけど。注意しろよ?」

ええ人や。初対面なのに気を回してくれるなんて。


「そういえば、私を疑わないんだね。」

「ああ、そりゃ暴力犯罪で女性と男性どちらを疑うかって話だよ。」

なるほど、統計的にこちらでも証明されているらしい。

それに、と彼は続ける。

判定(ジャッジ)があるから嘘もわかるさ。お前さんの身元も抑えることは容易だし。」

結局こっちも疑っているのか。台無しだよ、何かが。


これ以上仕事の邪魔をするのは申し訳ない。

さらに2、3言葉を交わした後にお暇させてもらうことにする。


「おう、気をつけろよ」

「はっはっは、最悪人類の勢力圏外までトンズラするさ」

なかなか冗談ではなさそうな口調だな、とかなんとかボヤきながら仕事に戻る彼を尻目に、組合の建物に戻る。



建物の扉をくぐるや否や、

「ほらよ」

声とともにフリスビーのごとく定期券ほどのサイズの板が飛んでくる。

つまむように挟んで受け止める。

ちらと目をやる。


「それはギルドカード。Fからだな。」カウンターの方から声。

なるほど。

「そういえば聞いてなかった。ランクアップの条件、それと探索者という職業について回る制約についてなんだけど」

「あれ、言ってなかったか。」

おい、説明のせの字もなかったぞ。

「GからDまではその性格も含めた能力、例えば探知系スキル、魔撃などの攻撃スキルなんかとその当人のレベル、人柄によって評価されるんだ。CからSは国などの後押しがないとなれないな。

探索者は基本的には自由だが、有事の際には組合の指示に従ってもらうことになる。」

やはり戦力として期待されているのか。


「その評価の基準というのは組合によって異なるのか?」

国によって組合がそれぞれ異なる。いわば別の会社だ。

「お前、知らないのか?組合は4年前に統合されたんだ。基準も統合されて、ランクアップしたやつ、ランクダウンしたやつ、色々いるよ。」


「その基準とは?スキルをそこまで取れない場合で教えて欲しい。」

「そうだなあ、スキルの有無にかかわらず、レベル10まではランクGだ。基礎ステータスがそもそも低すぎるからな。スキルなしの場合においてはレベル10〜20はランクF、レベル20〜40あたりがランクE、レベル40〜70あたりがランクDに相当するな。」

なるほど、ランクが上がるほどその幅も広くなるということか?

人間でいうレベル40の気持ちなど、なったことがないのでわからない。


現状全く特異なスキルを使うつもりもない以上、ランクCなどなれるとは到底思えない。

となると、目指すはランクDが限界。レベル15でありかつ、レベルが上がりにくい現状、それすらも現実的ではない。

ランクが上がることが全てではない。ぼちぼちやっていこう。


「で、どうする?常設クエストしか受けられないが、受けていくかい?」

もちろん受けるとも。

頸動脈を絞めておとす遊びがありますが、やってはいけません(戒め)。


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