第78話 移動式狩
興味本位でスキル上げに勤しみ始めたら、模擬人体側の自己強化系スキルを使うこともろくにできないほど、MPを消耗してしまった。
まあ、魔術回路に副側路を形成した過程で骨ではなくスライムでできた肉の部分の強度も上げることができた。ある程度の衝撃なら金属製の骨に頼ることなく耐えることができるようになって、それによる再構成の過程を無視できるようになり、MP消費を抑えていつもと同等の速度を出せるようになったのだから、トントンか。
狩ってきた肉塊にかぶりつきながら、さらなる獲物を探しつつ、一路街を目指す。
『風の牙』が支払いをしていた際に使っていたのは、この銅貨か。3枚支払って、お釣りももらっていなかったことからすると、これ1枚で「10銭」であると考えていいだろう。
・・・もしかすると御釣りをもらわない主義だった、とか、ここらはそういうお釣りを払わない風習がある、門番がくすねるのが公然と行われていて止めることもしない、などあるかもしれないが、考えたらきりがない。
ちょうど袋に6枚あったので、まだ何とかなりそうだ。2回出入りできる計算でよいだろう。
ステータスが大幅に上がった模擬人体の試運転がてら、強度の高い、無駄の多い殺し方でわざと魔物を殺戮していく。その血しぶきの上がり方、肉片の飛び散り方からどこまでなら返り血を浴びにくいのか、どこまでなら手加減してよいのか、できるのか調べるためだ。
素のステータスで器用さのDEXが数十倍、腕力・膂力のSTRが3倍近くにまで至ったのだから、同じ敵を殺すにしても、より効率よく、より少ない【身体強化】の重ね掛けでできるようになっているはずだからだ。
少しずつ攻撃の精度を上げていき、側頭部を打ち抜いたり、頚椎の間に指をねじ込んで離断させたりなど、我ながら非効率にすぎるような手法で魔物を殺す。
当然のことながら、大動脈や総頸動脈などの上位血管や、心臓を傷つけることで死ぬことは確定するのだが、最期の足掻きを残すことがあるので神経を千切る方が抵抗は少ない。返り血を防ぐ目的もある。
なるべく一挙動で殺す、もしくは初撃で行動に制限をかけて2撃目で確実に殺す。
レベルアップ前から心がけていることだが、ようやくそのコツがつかめてきたところだ。
一撃で殺したものは、正中線に沿って皮を剥いだ後、その血を毛皮に染み込ませることで臭いを撒き散らす。
ああ、素晴らしきかな野生の本能。
勝手に獲物が寄ってくるとはすばらしい限りだ。
しかし、
毛細管現象によって毛皮は血の臭いを撒き散らすことができているのだが、
血は当然ながら固体を含んでいるため、乾くにつれ毛皮の表面が乾いた血液に覆われ、匂いは撒き散らされにくくなる。
当然それでは意味がないため、即座に捨てて、別の毛皮を利用するのだ。
完全天然素材でできたモノは、かなり早く土にかえるだろう。
無為に捨てられた毛皮が哀愁を漂わせている気がするが、技術も何もない身。有効活用はできない。




