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理系スライムは汚物の海から這い上がる  作者: 愚痴氏
第二章 現地種族との接触
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第68話 テンプレは突然に

【鑑定】が使えるくせに全然出てこない、と思った?

実は、うまいこと文章に織り込めなかった(ry


森やらなんかを抜けた先、開けた土地。石畳の道が伸びる。

大地に突き立った石の塊はまるで城壁、いや、事実城壁だった。

高さも私の身長の、約5倍はあるだろうか。魔力による感知には反応がないので、少なくとも現在、魔力を使った活動はしていないことがうかがえる。


それが半径約1kmの円を描いて内側を守っている。

壁の分厚さは十分のようで、壁の上には上空を守るべく、弓に似たものが備えられていた。

その2ヶ所のみに外界とをつなぐ金属製の門が開かれている。脇には小型の門と、門番その他のための詰め所が併設されていた。


だが、そんな簡素な防御設備で大丈夫なのか。制圧は容易な気がする。

そんな不安をよそに、『風の牙』のパーティは門番のところへと向かっていく。


・・・両手を縛られたままで。


そのあとからついていく。


「なにやってんだよ?!」

「・・・ああ。」

こちらに気づき、持ち場を離れた門番。どうやら馴染らしい。

話を切り出すのがやりにくそうなので、助け舟を出してやる。

「こいつらが襲ってきたのでな、撃退した。」

「はあ?!そんな簡単に撃退されるわけがない!だって・・・」


理由をつらつら並べ立てる門番。

鬱陶しいなあ。


実際問題、『風の牙』に対する罰がどう、というのは激しくどうでもいい。

現在、もはや彼らに対して利用価値を微塵も感じない。

人をさらし者にして何が楽しいのか。


彼らを連れてくることによるメリットは一つ。

社会的な彼らとのコネクションだ。


見た目が襤褸布を身にまとった、明らかに行き倒れ寸前、といった風情の私では単身で街に向かっても追い返される可能性があった。

だが探索者の彼らを「襲ってきた」として捕らえて突き出す名目で引き連れれば、彼らが間接的に身元保証人となってくれるかもしれないと踏んだのだ。


「治外法権」といって、街の中でのみ法律が適用される場合もあるらしいのだが、その時はその時。

身元の不明な人間が襲われる、という例なんて資料には存在しなかった。珍しければ逆に載っていてもおかしくないはずなのに。


逆説的にそのような事例が街まで届かなかったという考えはあながち間違っていないはずだ。


とにかく。


話を遮るべく、あえて低い声音を声帯を弄って作る。

「それはどちらでも構わないだろう。この縄で見せつけにしたあとは責めるつもりはない。」

「や、問題なのは6人の男を一人で倒したことなんだけど。」

「そりゃ、人質とったらすぐ白旗振ったぞ。なあ?」

俯き気味の彼らの顔を下から覗き込むように、しゃがむ。


しばらく目を合わせるようにしていると、やがて顔を逆方向に背けたヴァルテルが口を開く。

「・・・そうだ。洞窟の中で、魔法を使える俺が人質に取られてな。」

ひどく言い出すのがつらそうだ。


「というわけで、『風の牙』のパーティと私、7人通してもらえないか?」

「あ、ああ。分かった。でもちょっと待ってくれ。個人を証明するものはないのか?

なければ30銭を用意してもらわなければならないんだ。」


通貨か。通貨は、ない。

ちらり、とヴァルテルをみる。

「はあ。仕方ない、俺が代わりに出す。」


そうは言うが、荷物がすべて私が持っているため、格好がつかない。

鞄の底近くに入っていた巾着から小銭を数枚取り出し、渡す。

そういえばと、彼らからは通行料はとらないのか、と聞くと

経済の活性化のため身分がしっかりしている者からは通行料を取らないようになったのだそう。

マジックバッグや大荷物を通す場合には料金を取らないのだろうか。そう聞こうとしたときにはもう彼らは門をくぐろうとしていた。心の中の質問リストに追記して、後に続く。



門を抜けると、石畳の道が街の中心部へと延び、それに沿って店やらが軒を連ねているのが見える。

予想以上に活気がある。

生後初めての光景にわずかに硬直するが、一斉にこちらに視線が向いたのを感じて逆に硬直が解ける。


もちろん視線が向かうのは縄で縛られた彼ら、のはずなのだが、


私だった。


なぜだろう。その答えは割合簡単に予想できた。縛った縄の端を持っている、縛られていないのが私一人だけだからだ。

あとは身長。周囲の人間はみな私よりも頭一つ分、女性に至っては二つ分くらいは身長が低いのだ。


それらの要因で目立つ、といったところか。



さて、縛られているにもかかわらず、彼らの歩みは迷いなくくぐってすぐの小さな建物へ。組合(ギルド)が所有する建物だ。まず最初に請け負った仕事はこなしてしまう。これ大事。

両手を縛られているから介助が必要かと思えば、押してそのまま扉を入って行く。

ぞろぞろと大の男が扉をくぐるのはシュールだ。

そう思いつつも遅れないように続く。


中に入ってすぐ横に移動、前方からくる人の集団を避ける。談笑しているため、目の前にあまり意識がいっていない様子だ。


ゆっっくりと、目立たないように、周りを見渡す。

まあ想像はついていたが、人だかりがすごい。


入ってすぐ右側にはなぜか酒場。真昼間から呑んでいる人間が数多くいる。それでいいのか。

バーテンダーらしき人と目が合った。なんも変なことをしていないのに。人間観察的な何かかな?

左手には何やら簡単な砥石やらロープ類、薬の類を売っている店と、上に上がるための階段があった。

正面にはカウンター。看板が吊り下げられている。その看板には「探索者ライセンス申し込み」やら「受付」やら矢印付きで書かれているので初心者にもわかりやすい。


私がオーク肉の入ったマジックバッグを渡すと『風の牙』はそのまま「完了手続き」へと向かった。

その手続きの様子を視界外で観察しながら、ボードに貼り付けられたクエストの内容をざっと読み流して行く。

なにやら肩を手伝ってもらってむき出しにしたら、そこに覗く刺青に機械らしきものを当てる。

そのあとマジックバッグをそのまま引き渡して、完了。

なんて簡単な。中身の確認もされてないとは。


まあそれは手続きが終わってから聞くのでも問題ない。

それよりも、と少しばかりボードを睨みつける。


問題なのはボードに載っている魔物の種類がよくわからないこと、そしてその臓器や魔石などの採取を依頼されている場合ならともかく、討伐を依頼されている場合もその討伐証明部位を持ち帰る必要がある、ということだ。さらにその数も討伐系の中央値1ならともかく、採取系では中央値30強と、その数は比べ物にならないほど多い。


人間の世界で合法的に収入を得ることは難しい。労働するとしても、元々の身分が不確かな状態から得られるであろう、単なる小間使いという仕事では、拘束時間・労働に比して得られる金銭が少なすぎる。

簡単な手法としては感知圏内に点在している人間の集落を髪の毛一本まで残さず食らってしまえばいいだけの話なのだが、もちろん違法(法?)だから。



世知辛い。



ま、どれくらいこちらの時間・労働を支払えば貨幣が得られるかの最低基準がわかったので収穫としよう。


っと、見知らぬ男が3人、左右と後から私を取り囲む。こんな見た目からして何も持ってなさそうな奴に集っても得るものなどないだろうに。


こちらから見て右をふさいでいるやつが話しかけてきた。目の高さは私よりも下で、自然と見下ろす形となる。

「ようお嬢ちゃん。何悪い話じゃねえ。勧誘の話だ。俺たちはEランクパーティの『バレッツ』ってんだ。俺たちのパーティに入らないか?お前さんは見たところレベル3らしいじゃないか。レベルを上げたいだろ?」


・・・【鑑定】スキルか何かでも持っているのだろうか。カマをかけるか。

「誰が【鑑定】スキルを?」

「おう嬢ちゃん、察しのいい女は嫌いじゃねえ。お前さんの左のプブリオが持ってるよ。」

「「勧誘」っていう割には強引じゃないかねえ。」


「こっちとしても焦ってんのさ。つい最近まで組んでたやつがいたんだが、ぽっくりクエスト中に死んじまってな。」

「・・・つかぬことを聞くが、その死んだ人のレベルは?」

「4だ。」

「そうか、で、あなたらは?」

「3人で、9,11,15だな。」

話にならん。

「私なんぞが行っても足手まといにしかならないだろ・・・「ところがどっこい、うまくやれる方法があるんだよなあ。」

信用ならない。話を聞く限り、それをやったうえで失敗したというのに?なぜそこまで自信があるというのか。


だれか動くものはいないのか、と圧力の意味も兼ねて周りを見渡すも、本当に誰もが反応しない。いや、あのバーテンダーの人は注視してきている。

自分でなんとかしろ、という奴か?


周囲を見渡した私を見て、何を勘違いしたのかニヤニヤしている輩にいうことはただ一つだけだ。

「あなたらの話は信用ならない。よってパーティに参加するわけにはいかない。」

「なんだとこのアマッ!」


他のもっとレベルの高いやつを相手どればいいのに。そして沸点が低いな。余裕がないのか。

至近距離で怒鳴られても全くびくついた様子を見せない私に対し業を煮やしたのか、とうとう手を出してきた。

「お前はさっさとおれたちに従っていればいいんだよ!!!」

よし、正当防衛は成立だ。

絵にかいたような右のテレフォンパンチ。しかものろい。

だが受け止める。頬で。


ゴツ、ぱき。ゴウッ!!

硬い音、枯れ木を折ったときのような音。普通の人間のように見せかけているが、実際には100キロなど軽くオーバーする超重量級だ。必然として身体は外力に対して強く、なんの強化を施さずとも岩よりも硬い。

ゆえに、微動だにしない。反力がそのまま跳ね返ってきたために、手首の骨が折れたらしい。


それに対して突き刺さるカウンター(右腕)。顎先をかちあげ、脳を的確に揺らす。

直後、腕を右腕で引き寄せつつ、右膝をみぞおちにめり込ませる。多少弱めて威力を軽減してやる。

膝が腹筋越しに胃を圧迫しているのを感じながら手を離し、嘔吐を始める前に半歩下がる。


「にゃろうやりやがった!!」

反応が遅いな。

殺気立つ背後のEランクパーティ構成メンバーA。

察するに、腰にはいた長剣を抜こうとしているようだ。

左側にいたプブリオも背中に背負った杖を抜く準備が整ったらしい。


だが、全て遅すぎる。

「うわ!!??」

その用意を整える間にプブリオに左手の荷物を投げつけ、地面に沈み込み、Aに足払いをかける。膝裏を狙い力を加えれば重心より低いために自然とその態勢は崩れる。


Aの右腕を取り、浮かせると、その肘を床に叩きつける。

右利きだった彼の感覚をつぶす。

ファニーボーンだ。本来なら前腕を形成する骨が逝くところだが、まだ手加減が効いた。

さらにプブリオの胸骨に足を乗せ、起き上がれない程度に体重をかける。


「で?まだ、やるか?」

吐しゃ物が床に広がり、這いつくばった彼らの服を濡らす。

だが、応えるものはいない。なぜなら吐しゃ物で口の中があふれ、しゃべることができないもの。ファニーボーンで悶絶しているもの。呼吸が難しくなっているもののため、声すら出すことができないからだ。

騒動を聞きつけて周囲が騒がしくなる。


「お前ら、関わり合いにならないように避けてたろ。」

一連の動作を影から見ていた、『風の牙』に向かって言う。

ややして、返答。こちらに近づいてくる。

「武器もないのに戦えるかよ。」

なるほど、道理だ。

軽く笑って、

「ああ、それならしかたないか。」


で、と話を切り替える。

「向こうから攻撃してきたわけだが、まさかこっちが罰せられることはないだろう?」

「いや、罰せられるぞ」

えぇ。

「どんなレベルだ?」

「罰金だな。」

「それを早くいってほしい。」

肉体労働が対価とかなら考えるが、ただの罰金か。

こちらには財布(『風の牙』)がある。

「ただし、結構高額だぞ?」


にっっっっこりと、表情筋を駆使して微笑みを作る。

もちろん、肩代わりしてくれるよな?


周囲の野次馬をかき分けて、迫る人型が一つ。


「なにやっとるんだてめえらぁぁぁぁぁぁ!!!!」



大音声。ものすごくうるさいな。

周囲がその勢いに押される中、当事者にもかかわらず、そんなことを思った。

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