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理系スライムは汚物の海から這い上がる  作者: 愚痴氏
第二章 現地種族との接触
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第67話 道中

男達の根城にこの、奴隷商人スタイルで向かう。

そう告げると、男達は揃って嫌な顔をした。草原を歩く足も少し遅れる。


「なあ、せめてこの縄だけでも外してもらえないか?」

そう言って両手を挙げる。

その両手首はロープで縛られていた。


「ダメに決まってるだろう。」

両手首を縛るロープか、それをつなぐロープか。

どちらであっても受け入れられない。

男たちが持っていた荷物は全て自分が持っているが、今度はそれが狙われないとも限らない。

身体能力的には完全に上回っているので外してやっても構わないが、わざわざそれをしてあちらの自由度を上げるメリットがない。


「そもそも、お前たちが襲ってきた罰なんだから、おとなしくしてろ。」

身動きが取れないお前たちを守ってやろう。これ以上何を望むのか。


そう一方的に言うと、やはり反抗の声が上がる。

「お前を信用できるか!!」と。


だが

「聞くが、こちらがお前たちを信用できると思えることがあったのか?」

そう聞いてみると、仲間内で話し合ったあとはとうとう黙りこくってしまった。


多少意地が悪かったか。

それでも黙ってもらうことは必要だった。


「それで、お前たちはどういった集団なんだ?」

大人しくなったところで、急かしつつ今度はこちらから聞いてみる。

大量のオーク肉。これをわざわざ狩りにくるということは、何らかの職能集団であると考える方が自然だ。


「はあ?探索者に決まってるだろ?そんなことも知らないのかよ?」


・・・

「田舎ものだからな。」

程度の低い煽りは受け取らないのが吉だ。


根気よく会話のキャッチボール(煽り付き)をこなしていくと、

以下のことが分かった。


・探索者組合、という組織が存在する。通称ギルド。

・そこに登録した者を探索者と呼び、街の清掃からゴブリン討伐、オーク放牧の手伝いなど、クエストと呼ばれる種々の仕事(多くは日雇いで、その日暮らしの不安定な生活になるようだ)をうけることができるようになる。

・ゴブリンはやはりというべきか、いくら狩ってもいい。

・登録には料金が多少だが、かかる。


・クエストにはランクが設定されていて、それらを受けるためには組合で提示される探索者としてのランク(クエストにも探索者としてのランクは同じ単語で表現されていて、大変ややこしい)も相応に必要になる。

・探索者としてのランクはRPGのように最低ランクから全員始まるわけではない。ランクアップにも必ずしもそのクエストのこなした数と難易度が関連するわけではない。


・彼らの探索者ランクはC。勇者(!)とかいう存在がS,A,B,C,D,E,Fまでのランクを設定した。

・Cという探索者ランクはあまりよくみられるものではなく、一人前であるDよりも格上である。


勇者とか言う存在は10年ほど前に魔王(!)を倒し、世界に平和をもたらした。

勇者は魔王を倒す際に勇者パーティを作り、倒した。現在は解散している。構成メンバーは勇者と、聖女と、賢者の3人のみ。

魔王討伐後には新型の魔道具、冷蔵庫や洗濯機などを作って大儲けしている。



これくらいを歩きながらまとめられた。

誇張や聞き間違いも多少ありそうなのでそこは恐ろしいが、直接生死に関わる情報でもないため、そのリスクは無視していいだろう。恥は掻き捨てとはいったものだ。

「そういえば、あんたの名前は?」

連続で喋らせていたために問いかけもしやすくなったのだろう。


そういえば、名前なんぞ考えたことすらなかった。

置かれた身の上を考えれば当然の帰結だが。

そうだな、

「アリス、とでも呼べばいい。」


名前の由来はあるにはあるが、たいしたものでもない。

「そういえばこちらも聞いていなかったな。お前たちは?」


「俺たちは『風の牙』ってパーティを組んでる。俺はリーダーのヴァルテル。」

人質だったゆったりとした服装の男、ヴァルテルが話し始める。


「それで、俺は斥候役をしてる、ライムンドだ。」

洞窟での制圧時に飛び越えた男が間髪を容れず続ける。


「俺はロニー。剣士をやらせてもらってる。」

「・・・サムエル。剣士。」

「ヨニーだ。剣士。よろしく。」

「クレーメンス、ってもんだ。薬師やらせてもらってる。よろしくな。」

ライムンドに促されるようにして、残った彼らも自己紹介していく。正直言って覚えられる気がしない。


それにしても、薬師か。

考えを巡らせようとしたところ、ライムンドに遮られる。

「それで、どうしてあんなところにいたんだよ?」


・・・まあ言っても悪いようにはならんだろう。思考を続行しながら平行で別に考える。

「最初は食糧に困ってやったんだ。」

「・・・どういうことだ?」ヴァルテルが訊く。

「治療技術持ってるサキュバスどもに人間の女性を治療してもらえるようお願いしたんだが、

そうすると食事が欲しい、と言われたので手頃な人型の生き物を生け捕りにして、そいつの餌としてオークを狩ってる。」


こうして言葉に表してみると、かなり複雑な状況だな。

だがヴァルテルは、相槌もなく、考えている。いや、悩んでいる。

「変なことでもしたか?」

「・・・その女性は足首とか切られてなかったか?』

「ああ。オークが切ったんだろうが、よく考えられている。」


だが、彼はかぶりを振った。

「違う。それは、死刑囚だ。」


死刑囚?・・・ああ、納得だ。

「死刑囚の女性は、逃げられないように足首を切られた後に、オークの巣に放置された、ということか。

オークが少しでも増えるように。」


なるほどなるほど。

よく考えられてる、と思う。

それを公表することで犯罪へ加担するのを食い止める、という効果もあるかもしれない。もちろん性の倫理観がこちらと同じならば、という前提付きだが。



だが、死刑囚としてモノを有効活用しようという考え、好悪で言えば、間違いなく、嫌いだ。

気に入らない。



「そうか、ならお前たちの国では死んだ扱いとなっているから、街に連れて行くのはなんの解決にもならない、ということか。」

では他の国ではどうだ?その女性を全くの違う人間として定住させることはできないのか?


その嫌悪感を表に出さないように注意しつつ、尋ねる。

「他の国の法律も、法の抜け穴も知らない。」

だが返ってきたのはにべもない返事。


それもそうか。探索者というのは話から想像する限り、その日暮らしの人間も多い。

生活に余裕が出て初めて、法律などというめんどくさいものに手を出す気にもなるものだ。


では、中間案だ。

「じゃあ、サキュバスはどうなんだ?」

実際問題として、サキュバスの数が多すぎるのだ。


相手は仕事柄、オークに接する機会が多いと考えてよい。

当然サキュバスを放置するなりしても何ら問題はないはず、というかむしろ推奨されるのではないだろうか。


「だが、許可なしの移動は・・・」

そうヴァルテルが言いかけるが、ライムンドを中心として他のメンツが後ろから抑え込み、耳元で何事かささやく。


「おい、サキュバスを初めて味わうチャンスだぞ?」だとかなんとか。

もちろん全部聞こえている。


会話(説得)がひと段落したところで声をかける。どうやら引き取ってくれる方向で進んでくれそうだ。最後はオークのところに置いてくるらしい。

「そろそろいいか?」


「ああ、結局サキュバス6体くらいなら一度に移動させることができるだろう。」

「では、とりあえず街に出た後でそちらに向かう、という方針でいいな。」


同意が得られたところで、行軍を再開する。

彼らの食糧が持つといいのだが。

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