第61話 化け物の戦い その3
はい、更新遅くなりました。
マイペースにやっていきたいと思いますです、はい。
ブクマありがとうございます!
ビアッジョは焦っていた。人間ではないことは分かっていたが、これほどまでの再生能力を持つとは想像だにしなかった。だが同時に安堵する。背後を簡単に取れたことから、圧倒的な強者ではないことはすぐにわかったからだ。時間稼ぎしきれずに殪されるというルートはなくなった。
今の爆発で通信の魔道具は壊されただろうから、少なくとも状況確認のために戦力をよこすはずだ。
ついさっきの爆発はこの人間もどきによるものだと考えてだいたい間違いない。
つまり、その一度で同時にキングのいない、戦力の低下した群れを壊滅させることが十分可能であるのだから、あちらこちらに点在させてあるオーガの根城からオーガを引き連れたところでまるまる人的資源の損失となるだけであるということは予知系のスキルをスキルのキャパシティ、能力的にとることができなかった私にもわかる。
この根城自体は無くなったところで再建可能であるし、オーガ自体もそこらで普通に繁殖しているためわざわざ助ける必要がない。ただ、オーガキングは文字通りの傀儡と化しているもののまだオーガの小規模の群れあたりなら従えることができるため、利用価値があるといえる。そのぶん見つけにくいのだが。
オーガキングは建てた砦における宿舎の真下、そこに存在する地下空間に収容してある。
これは地上に出る手段が真上に出てくるというたった一つに限られており、魔王城のように数多もの脱出経路を備えてはいない。
そしてその宿舎。これは先ほどの爆発で消し飛び、周囲にあったはずの大小の建造物も消しとばされた。
さらにはその爆発で空いた空間に人間もどきが居座っている。
要はオーガキングの巨体を気付かれずに運ぶのは至難。
特化した転移能力も、私個人に限られるため、最低限運ばねばならない私とヘルッコ、オーガキングなどどんな無理をしても不可能だ。
私が魔王に重用されていたのはひとえにこの転移能力による。
この能力は【雲散霧消】、【風属性魔法】と【自己再生】、3つのスキルにより構成される。
魔力と物質、そして魂で構成される私という個体。これを分解し、転移させたのちに魂に残っている情報をもとに再構成するという点で他の転移系の能力と大きく異なる。この転移は構造上自分個人しか転移できない。
わざと分解するという工程をはさむことで転移の失敗というリスクを分散させることができる。また、スキルのように使用に対して直接的に補助を受けることのできない方法での転移のため、転移自体の確度が本人に依存する。
具体的に言うなら、転移系スキルは転移する場所を決め、イメージするだけで転移することができるのに対し、こちらはイチから場所を決め、また自分の現在の速度や位置などからてその場所に到達するためのルート形成をしなければいけない。例えるなら、スキルによる転移は馬車で地元の御者付きなのに対して、こちらの転移は知らない道、馬車で知らない馬を、自力で御さなければいけないということ。
そのディスアドバンテージは約200年、長年の慣れや簡略化により縮めてきた。
いやむしろアドバンテージとなる。何せ自由度が段違いだ。
見たことのない場所、例えば地図上の位置への転移すらも、距離の制限はあるが、可能となる。
本来スキルレベルに関わらず、固定されているはずの、スキル使用と発動のタイムラグも自由自在。当然連続使用すらもこちらの集中力が続く限りは可能なのである。
しかしそれをもってしてもコイツには届かない。他の攻撃系スキル群を持たない私には、レイピアの形の魔剣ティルビスしか攻撃手段がないのだ。
魔剣ティルビスに付与された効果は1つだけ。
『召喚』。
『召喚』は少し特異で、本体と|全く同じ剣を魔力量に応じた数だけ召喚する《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》というもの。
消費魔力を少なく抑えたいため、炎やらの攻撃系の魔剣などいらない。
そんなマイナー魔剣ということで探し当てるのにかなりの苦労を要した。
その苦労が足止めとして役に立つとは全く想像だにしなかった。何せこちらの全く前兆を見せない転移にある程度対応してきている。こちらは戦闘自体についてはプロとは言えないから、これでも善戦してる方だとは思う。
転移とティルビスによる一撃離脱戦法に対応されきているが、他に攻撃手段を持たない現状、いもしない神に祈る以外何もできようがない。吸血鬼が本来持つ再生能力も、一応持ってはいるが、肝心の魔力が足りなければおしまいだ。
転移直後に斬りかかったらそのまま受け止められ、回し蹴りを食らった。
転移の性質を生かしてクリーンヒットは避けられているが、このような長期的集中力が要求されることなど初めてで。
そろそろスタミナ切れを起こしそうだ、という考えが浮かんだその時。
目の前が急に明るくなった。
なんだこれは。
そう思う時間ももったいなくて、飛んできた水を避けて転移。
魔法か。
魔法ならばさっきも見た。あれは確か氷属性。だが今回その数が常軌を逸する。視界の3分の2以上を占める。
転移。転移。転移転移転移転移転移ッ。
魔力感知のキャパシティを振り切ったこの猛攻を6回の転移で連続で避けることが出来たのは運が良かったとしか言いようがない。
だがそこまで。炎弾を土手っ腹に喰らい、態勢を崩したところにさらに弾を食らう。雷属性魔法も含まれていたらしく、手足の末端もひりつく。
この転移能力にはいくつか欠点がある。
その転移先の安全を保証できないこと。その転移者のキャパシティが全てであること。そして、転移を開始した時点での速度・座標が正確にわからないと、使えないということ。
ただの風ならまだしも、魔法による攻撃はその不安定な態勢の身体を揺らすには十分のようだ。
だが、この猛攻も時間が経ってMPが底をつくことで止むだろう。
低位の魔法など、上位の吸血鬼たる私の体力を削りきるにはまだ遠い。
そう評価を下す。
あとは待つのみといったところ。
当たりだしてから心なしか魔法の7密度が増した気がする。
体を丸め、できるだけ魔法に接触する箇所を減らす。
さて、どこまで持つのやら。
待つ、待つ、ひたすらに待つ。
感覚が鋭敏になっている関係上、数秒が1分にも思える中待つ。
しかし来ない。2分以上は待ってるはずなのに。
それだけの攻撃が累積しているわけでまだHPには余裕があるものが、少し精神的につらい。
そうしていると、再び変化が起きた。低位の魔法ではあるのだが、そこに込められた魔力が桁違いだ。脅威と判断、避けようと体をよじる。
7つ目まではまだ避けることができた。だが至近距離で形成された弾丸を避けることはできず
胴体を焼き、貫通していく。
支えを失った人形のごとく、倒れこむが、その上からさらに魔法が刺さっていく。
皮膚が失われた状態で攻撃を受け続けているので、かなり痛み、またHPが一気に削られたせいか体を動かす余裕すらない。
ああ、このまま終わるのか。
まるで他人事のように、それに対して抵抗しようという気はさらさら起きない。
最期に見た光景は、魔法の嵐の中こちらに向かって歩いてくる、目に愉悦の色をたたえた長身の女であった。
ビアッジョが妙に達観しているのは、吸血鬼の再生能力やその他人間にはありえない能力を持っているために、逆に痛みなどには鈍感になっているからです。




