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第58 対オーガ(集団)

オーガを引きずり回し、ようやく見つけたオーガの根城。


とりあえずまだうごめいている用済みのオーガの第一頚椎と第二頚椎の間の歯突起を折って動きを抑える。それでもまだ再生しようとするのだから、それはもはやホラーだ。

因みにだが、人型の魔物も、基本的な骨格などはその骨と骨との比率をある程度無視すれば、人と同じである。例えば、動物でいうと、キリンのように首が長かったとしても頚椎の数が7個と人間と変わらないということである。

一応無事に残しておいた眼球も回収しておこう。今となってはかなり高い精度で細胞を選り分けることも可能だし、多分、これを用いて新たな視界(物理)が開けるかもしれない。


まずは根城の様子を探る。

根城としている物は、巨大な建造物。

と言っても城などのように縦にもサイズがあるのではなく、ただ横に広い。


つまり上からなど、侵入自体は容易。魔力反応でみれば、その反応の数、150前後。減弱なものも多いのでその分戦力としては下方修正してもよいだろう。

そこからどうするか。

まず前提条件として、こちらとしてはオーククラスの人型魔物を捕まえたい。それはもちろんオークでも、魔力反応からするにオークよりも優れているであろう、オーガであってもいい。


氷属性魔法を持っているため、ある程度以下ならばどれだけ狩っても腐らせないままに持ち運び可能なので、オーガがより多くのオークの居場所、もしくはその他人型魔物の居場所を吐くならばよし。吐かない、もしくはその数が少ないのならオーガを切り刻んでいただくことにでもしようか。


まあそのためにはこちらが圧倒的に優位にあることを示すのが手っ取り早い。

あちらの知能は言語を理解できる程度には高いようだから、同じく魔力を感知する技能にも長け、戦力差を手っ取り早く理解してもらえると嬉しいのだけれど。多分、それはかなわぬ夢。


首の折れた死体を見ながら思う。


この種族は少なくとも、全員が魔力感知に長けているとは限らない。もし長けていたとしても、視覚を使わない感知能力は低いか、動揺したときの探知能力は低い。

どちらにしても、いつでもその能力を使えないのは未熟というよりほかない。自らも未熟だと思うがそれ以上にひどい。


そしてコレは曲がりなりにも種族の中で偵察役、もしくは狩りに関わるものであろう。

そんな未熟なものを外に放り出したりするのだろうか?

もしそうなら、放任主義もあったものだ。




とりあえずは分かりやすい戦力差。

そう、「物量」による飽和攻撃といこうか。


やるからには一匹たりとて残さぬ。

上空100メートルほどに魔素で構成される魔法陣を展開。魔素自体は無色であり、魔素を感知できるもののみがその、高い魔力を持つ魔素を感知できる。魔素自体は空気中に含まれているから、見えないのも当然の適応の結果なのだが。

後は魔素が空気中へと自然に拡散していくことをトリガーとして、魔法陣が起動、高エネルギーの光線をばらまく仕様だ。その着弾地点はプロット済み。きちんと適度に着弾する位置もずらして頭部以外を狙う。


5カウント程度で発動するだろう。


それでは、火属性魔法を行使直前の状態で待機させて、行動開始。

1.オーガの死体を砦の正面にスロウ。


2.その着弾を待たずにオークの死体に追随。門扉に死体が衝突すると同時、全速力でもって死体の上から扉に体当たりする。


3.扉をオーガの死体ごと吹っ飛ばしつつ、突入。ついでに視界に捉えたオーガ17体の四肢や胴を火属性魔法の初歩、火球278個ででもいで、取れた手足の断面、表面を焼き焦がす。傷口を焼くことで出血を抑えつつも炭化した傷口によりわずかながら再生を抑えることができるだろう。


4,突入した勢いで砦の中心にまで転がり込んだので、魔法を3876個、新たに発動待機、ターゲッティング。


5、同様に一斉に放ち、抵抗力を一気に、完膚なきまでに叩き落とす。


着弾と同時に魔法陣が起動。光軸が伸び、オーガたちに追撃を叩き込んでいく。


死ににくい、というのは扱う者にとっては扱い方が多少荒かろうと死ぬことはないという点で極めて有用である。これでも多分、死んでない。






さて、なぜここまで大量の魔法を同時行使できているのかというと、それはひとえにこの人体を構成しているスライムの数が2万を軽く超えている、ということによる。身体強化も同様にして、重ねがけを1000回以上行うことで本来のステータスの脆弱さをカバーしている。単純計算で、【身体強化】一回につき1、STRが上昇すると考えても、1000回使えば1000上がるのだ。


どこまで効果が累積するのか、またその累積によるステータスの上昇度合いが何かの累乗なのか、それとも和なのかというのはまだデータを取れておらず、またその効果がステータスの表示に反映されない以上、現状で判断しづらい。

同じ個体でありつつも、別に存在しているにもかかわらず、なぜ【身体強化】の効果は他の、同じ個体にも同様にかかっているか、また魔力の源泉は体内の熱魔力変換装置と摂取した栄養によるものであるが、どういう構造からそれが、血管などの伝達経路もなしに全てのスライムに受け渡されているのか、など未知数なところが多い。まあそれはそれとして。


まだ各構成スライムの動きを完全に統合することができず、2万も一回で魔法行使ができないのがもったいないところだが、つい最近まで2000体であったことを考えるとこれは褒められてもいい気もする。




(『《「[ぎゃあああ!!]」》』)「痛いよお・・・痛いよお・・・」[眼が…眼がああ!!!]


周りから上がる苦鳴の大合唱に意識を現実に引き戻す。どうやら少し考えに没入してしまっていた。

このような悲鳴をあげられようが全く心が痛まない自分に少し驚くも、それも当然かと思いなおす。

そもそも他種族、それも無脊椎の、生き方だって大きく異なるような生物になったのだ。少しばかり精神が変容したくらいは当然起こっておかしくない。むしろ、起こってしかるべき(・・・・・・・・・)こと。この調子だと他にも大きく変わっているだろうが、それに対する恐怖もわかない。



死屍累々の様相を呈しているオーガ達を無視し、状態のより良い、きちんと肺や頭部に傷のないオーガを探し、尋問を開始。トドメは刺さない。というより、下手に刺そうとしてもなかなか死なず、苦戦している間に他の者達が復活してしまう可能性がある。


「この群れのトップはどいつだ?」

「お、お前がみんなを…」


どごん。

顔のすぐ脇に掌底を打ち込み、地面を陥没させる。

「あなたの事情なんざ関係ない。この群れのトップはどれなのか聞いている。

おわかり?」

このあまりにも直接的な脅しには命が惜しければ誰でも口を割るだろう、と考えていたのだが…


「教えることはできない」

どういうことだろうか?

「位置は知らない。おで達にもわからない」

…ということは、なんらかの移動手段を持っている、もしくは秘密の部屋的なものがあると考えて良い。


「ありがとう」

一言お礼を言って、脳漿を撒き散らすべく振り上げられたその拳は。


{好きに暴れてくれたな}

しかしその振り上げた頂点の位置で背後から止められることとなった。






ピコン!スキル【火属性魔法】のレベルが上がりました!

おかしい。なぜ敵の方が正義の味方っぽいんだ…

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