第55話 女性の脳って性欲と食欲を司る部位が近接してるらしいよね
洞穴に入り、最奥に向かう。
覗いてみると、その部屋では元々いたサキュバスのほか、他の部屋にいた女性の面々も集められ、止血から魔法による消毒など行なっているようである。配置しておいたスライムの感知から知ってたけど。
とりあえず、ズカズカ入っていき、警戒した様子の彼女たちを無視してドサドサと冷凍した例のブツを下ろす。
もってきたぞ。「食え」
サキュバスの面々に対し告げる。魚の白子や馬の精巣なんかは好んで食べる人もいるけど、さすがに人型の精巣や前立腺やその他の腺をサキュバスではない、通常と思われる人間に与えるのははばかられる。
そうして作業を止め、横座りのままブツを見つめるサキュバスたち。心なしかぎらついた眼をしているように見える。
次の瞬間。
サキュバスたちは一直線にブツへと駆け寄り、抱きしめだした。余裕がないのか、立ち上がったほうが速いのに、いわゆる「ハイハイ」の姿勢で駆け寄り、ブツに頬ずりすらしている者も見られる。そこまで餓えていたのかこいつら。
まあ、それはいいとして。
自分で作ったけれども、流石にあんまりな目の前の酷い光景から逃避するように、ゴロゴロ転がっている人間?の女性を眺める。折れた剣や槍を使った支えを元に足首など、骨折部位を固定されている。局部などは清潔にされたようだ。あとはその子供を宿してしまっている人だが、産婦人科医でもないのでうまいことやれるとは到底思わない。
最大の問題は精神面だろうか。
目が虚。全く自力で体を動かす様子もない。ただ目を開け、呼吸するだけ。まだ狂乱状態にないだけマシか。
この人間たちに対するカウンセリング技術なんて持ってないし、そもそも女性器持ったことないからそれをされた気持ちもわからない。それに対する下手な同情は寧ろ悪手だろう。
またサキュバスどもはそれを餌とする以上、全く助けになどならない。
肉体をとりあえず生かし続けることに注力する。となると問題は自殺企図があるか、と食糧や身の回りの世話をする存在。
いきなり我に帰ったように自殺を図る者が現れないとも限らない。
食糧庫にはろくに食べ物は残されていない。
まだその自殺を止めたり世話をするのはサキュバスどもに任せるとしても、今度は動けないサキュバス含め彼女らの分、食糧を調達する役割が必要になってくる。
消去法的に考えても一つしかありえないではないか。
食べたりそのブツでイロイロするだけにはとどまらず、凄惨な行為が終わるまで待って、ようやく意識をそちらに向ける。イロイロが何かって?うん、口にするのも悍ましい。
「終わったか?」
目を向けたそこには、イロイロ液体が散乱していたり、肉片が転がっていたり、猟奇的な光景だったが、
敢えてそこには触れない。そうでなくても大体魔力感知でナニしてたか手に取るようにわかってしまっているので。
「おまたせ。それにしても遅かったわね。飢える気持ちがよくわかったわ」
「難航したンだよ。で、どうだった?」
「「「足りない」」」
間髪を容れずに、全員に答えられる。
うん、それはすまない。
ゴブリンやオークが周辺にいなくなったから数を揃えられなくなった。
「やはり生きたまマのほうがいいのか?」
「それはもちろん。そもそもね、選んだ種族が酷すぎる。味がすごく悪いのよ。そんで中の液体とか分離してたし。あれじゃまともな食事にはなりゃしない。」
さよか。こちらが今のところ無償であげている以上、文句を言うな、とも思うが、これからその分働いてもらえればいい。
「じゃあどんな種族のものなら?」
「そうねえ、少なくともオーククラスの魔物でないと満足できないわね。」
…あれと同格ということか。
ちょっと冗談でしょう…
それを見透かしたのか、続ける。
「ああ、別にあのオークキングレベルでなくてもいいのよ。それを全員分合わせて…そうね、生きた個体4体でいいわ。死んでいたら、あるだけ。」
お、おう。無理難題言ってきた。
いいだろう、それなりの働きをしてくれるのなら。
「なら、死んだオークを運んでくるかラ、代わりにその間こノ人間たちの世話を頼むな。舌噛むかモしれないけど。」
「舌噛んで、どうするのよ?」
そこからか。
「人間は舌を噛みきると筋肉が収縮して呼吸ができなクなり、窒息で死ぬんだよ。」
「え、なんでそんな危ないことを?」
…マジか。真面目に言っていると思われる、見たところ。
「お前らと一緒にしてやるな。生殖行為は人間の場合生きるのに必須ではないから。とにかく、食事とか排泄物とかに加えて自殺防止は任せた。」蔦をいくつか見繕っておいたものを手渡す。
「ちゃんと報酬は弾むのよね?」
「働き次第、とだけ言っておこう。」
ここでやることは済ませた。
後は狩りの時間というわけだけだな。同じことの繰り返しだからまあまあだるいけれど、
なに、テレフォンパンチをせずに殴るとか、やってみるべきことはいくつもあるんだ。
魔力感知を使わない、視覚から聴覚、触覚でモノを感知することも出液るのだから、それを魔力感知並みの精度に跳ね上げよう。
それから約一週間後、油断により人と意図せず遭遇してしまう。
次回こそは普通の人間です。




