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第53話 感知できない存在

草木を分け入り、時に地面を踏み割り驀進しているところ、

突然人影が進行方向上、知覚範囲のかなり内側で見つかる。大きさは自分の身長より少し低いくらいか。


魔力感知で感知しようとするが、そもそも魔力が感知できない。敵かどうかもわからず、止まろうとするも、速度が乗りすぎで、間に合わない。


仕方ないので踏み込む力を増やして跳躍。飛び越えていく。


着地と同時に足首に亀裂が入るのがわかるが、構わず踏み出して、再び接地するまでの間で修復を済ませる。進化による処理能力の向上がここでも効果を発揮する。


速度が乗りすぎているのを加味しても、魔力感知ができないというのは、何かがおかしい。

具体的に言うなら何らかのスキルなりなんなりを持っているとみて間違いない。


そんなよくわからない生き物と戦いをするほど命知らずでもないので、とっとと逃げることにする。

いくら進化したといっても、スキルが貧弱なので是非もない。

レベルを上げてステータスで殴る、というのはスキルが同等かそれ以下でないと通じないのだ。


身体強化を倍の数かけてそのステータスでもって逃走。魔力感知も切らさず、肉体を必死に制御する。

いつもと全く異なる音の聞こえ具合で、果たして追ってきているのか、それともこちらに興味など示していないのかもわからない。音速を突破しているんだろうか。



しばらく、太陽が沈んでから夜明けになるまで走り続け、ようやく撒いた、と思ったので失速しつつも森の中に飛び込んだ。足元にさらにボロボロになった鎧が落ちる。鎧は進化前から結構留め具も千切れていたのが、全力疾走による体の動きに耐えられなかったのだろう、防護面すらもちぎれてしまったのだ。どんだけ弱いんだか。


そして目の前にはゴブリンさん一匹だけ。はろー、さようなら。

あっ、殺すよりも情報を得るほうがいいか。意思疎通は一方通行だけど。

以前捕まえたゴブリンは、なぜか意識混濁で倒れて、今も生死をさまよっている。ゴブリンの言語など習得する機会がなかった。


アイアンクローでゴブリンの頭部をわしづかみ。持ち上げて、掌底に仕込んである魔術投射装置から意思疎通プログラムとやらを投射。

《やあ、元気してる?》

ふふ、驚いてら。ぎょろりと飛び出した目玉がぐるぐる動いている。

《周りを見渡す必要はない、目の前の私だ。》

目は口ほどにものを言い、とはよく言うが、目的は驚かすことではない。


《イエスなら目を縦に、ノーなら目を横に振れ。わかったな?》

目を縦に振ったことを確認して、

《お前たちに意思疎通手段があるか》

縦。意思疎通なんて単語を知らなくても、このプログラムはニュアンスをごく具体的に伝えてくれる。

《それでは提案だ。お前たちの巣を教えろ、そうすれば生存を引き延ばしてやろう》

横。仲間思いなのかな?


交渉決裂。巣が近いのか、魔力感知に20数体ほど感知、代わりはいる。

頭蓋を握りつぶし、地面に転がった首なし死体から睾丸や前立腺を切除する。医学科で人体解剖とかやってたからね、それぐらいはできる。残りの死体は魔石を抉ってサクッと食べてしまう。


今度の群れは森の中に散らばっているため、叫びを上げさせる間も無く顎を破壊し、各個撃破をしていく。

毎回同じように聞いてみたけど、口を割るものはいないというのは感嘆を禁じ得ない。忠誠心高くないか。


感知に引っかからないということは、なんらかの方法で聴覚的にも、魔力的にも遮断できているということだ。

それほどの相手というのは存在しているのがわからないため難しい。

ちょっと相手に困るので他の人型魔物を探した方が時間効率からも良いのだろう。


そのまえに。蔦を切り、取り出した臓器、器官類を縛り付ける。どれくらい腐りやすいかはわからないけれど、氷属性魔法で氷点下まで冷やし続ければ、しばらくはもつだろう。流石にこの世界の菌も氷点下では活動が弱まるはず…だ、多分。

走りまくったとはいえ、洞穴には分身体がいるので向かう方向は分かっている。帰りに迷う心配はない。


例の魔力感知が通じない人型はできるだけ避けたいので遠回りで行くとしても、まだ時間はある。

魔力感知では圏内にまだいくつかゴブリンの群れがある。もう一つくらい群れを潰して、それから戻っても良いだろう。


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