第43話 分身体2
やっぱりあいつは思考や作業を押し付けすぎだと思う。分身体達の意識の集合体という存在としては
一遍【増殖】を解除して、苦労を実体験として味あわせてやりたいものだ。
栄養課題はある程度軽減され、【サイズ縮小】による省エネ化などが功を奏して食糧事情には余裕が出てきている。しかしまだ、足りない。というのもなにかもう少し栄養素が必要なのだ。それが何なのかはわからない。ただ欠乏しているというのが分かる。長旅でビタミンCが欠乏した船乗りってこんな感覚なんだろうか。
いちおう生存に関係するかもしれないので対策を練らねばなるまい。
とはいえ漠然とした感覚によるものなので大きなこともできない。ただやることと言えば魔物、それも生まれてから時間のたったものを食べることぐらいだ。
生まれてから時間のたっていない魔物は飽きるほど食べているので、それでは足りない、魔物に必要な成分を摂取するには生まれてから時間のたった魔物を食べて比較するのがはやい。
とはいえ時間のたって生きていられる魔物はステータスの存在から考えて必ず強くなっているハズなので、本体と共同してやらなければならないが。ひとまずわかる範囲でタグ付けをしておけばよいだろう。
それはそうとして。
体外の状況はどうなっているのかというと。幾つも肉体があるので整理しなければならないほどには情報量もある。
まず一つ目。
例のマシーンと戦う羽目になったあの街だが、データベース以外にあの街にある資料について、あの街に長年い続けたあのマシーンの意識に聞いてみると、「300年程眠っていたのでわからない」という返答が返ってきた。やっぱりデータベースしか使えないようだった。
仕方ないので大規模術式を用いて街の全ての生物を昏睡させて、眠っている間に調べさせてもらいましたとも。きっと内乱鎮圧用である術式も都市に備え付けられているだけあってその威力は折り紙付き。かといって急激に落とすのではなく、睡魔により意識に徐々にもやがかかるようにして眠りに落としてやった。最早異なる種族であり、人間に対しての帰属意識はとうに失せているが、さすがにいきなり昏睡させて、その結果人死にが出ました、というのは寝覚めが悪い。いや、寝ないけど。
結果、図書館と思しき建物に侵入し、書類を漁る。基本は魔法の実用書、童話、漫画、小説、国語辞典から古語辞典や外国語の辞書、魔砲の実用書、法例集など多様な本があった。
漫画や小説などが棚を丸ごと一つ占拠した状態だったのは驚きだった。そこまでエンタメ系が発達してるのか。魔物がいるのでこの世界はデッドオアアライブな、血で血を洗うような戦いの連続かと思っていたが、これらを発達させられる程度には人間側にも余裕があるようだ。
術式により生殺与奪を握っていると言っても過言ではない以上、やりたいことを躊躇う理由も全くない。毎晩思う存分、十分時間をかけて読み込み、また日中には人の様子を観察、話し方から街に正統なやり方での入り方というものを学んでいく。
2つ目。
地下捜索によりオークの群れを発見。放置してある。
というのも、生まれてこのかた一体のみで近接戦闘というものをまともにこなしたことがないために、何らかの対策を練る必要があるからだ。擬似人体の動きをチェックする目的も兼ねている。やはり粗が目立ってしまう動きをブラッシュアップしたい。
また今度本体に伝えよう。
3つ目。
【圧力魔法】レベルが上がってはいるものの、まだゴミだめ内のオリハルコン製の壁を破るにはまだ至っていない。どんだけ硬いんだ。【圧力魔法】レベルが上限まで達してもうまくいくか不安になってきたぞ。一応レベルアップによるステータス向上も分身体に反映されているハズなのだが・・・
わからん。そもそも、データベース上にもなかったし、性質がわからないためにどうしょうもない。保留。
4つ目。
罠の種類の増加だが、手順のめんどくささから考えて、【毒精製】で抽出した毒をミンチ肉に忍ばせることしかやってない。群がってる魔物に【催眠誘導】かけまくるのなんてコスパ悪すぎるもの。
それでも毒を混ぜるのはそこそこ難しい。科学知識を用いてやってはいるが、例えばヒ素みたいな単体の毒があるが、これなどは言うまでもなく致死量というものが存在する。餌に一定の比率で混ぜたら作るのは当然楽だが、言うまでもなく魔物というのはひとくくりにされているだけで実はたくさん種類があるわけで。その致死量も当然変わっていき、下手をすれば、巣に持ち帰らせて殺すのが目的なのに食べた瞬間死ぬことすらあるわけだ。
生き物に必要不可欠な水も、水中毒というものがあることからわかるように、摂りすぎると人に害を及ぼし得る。
要するに配分滅茶苦茶むずいんだよ。誰だよ毒団子作ろうって言いだしたの。自分だったわ。保留。
ところで、罠にかかっている魔物たち。
ちょっとわらしべ長者を期待して死体をそのまま放置しておいたのだが、死体が動き出した。核は破壊したので間違いなく死んでいるのに、だ。もちろん怖いから叩き潰しましたとも。原因追及?それより目先の未知の恐怖だ。制御できない可能性の高い物事は芽の出る前に潰しておくに限る。
動かないまま餌となった死体に集まった魔物たちを即殺して、オークなどの大して強くもない魔物を狩っていくが、【精力増強】とか【腕力増強】とかしか手に入らなかった。私、無性生物なので使えないスキル手に入れても意味がないのですがそれは。
ピコン!スキル【毒精製】のレベルが上がりました!
ピコン!スキル【連携】のレベルが上がりました!
ピコン!スキル【精力増強】を得ました!
ピコン!スキル【腕力増強】を得ました!
ピコン!スキル【魔力操作】のレベルが上がりました!




