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第39話 α‐43の苦悩



都市核α‐43は特殊な生命体を感知して約三百年のスリープモードから目を覚ました。


現状把握し、その原因となる生命体の、生命体そのものとしての格の高さに対して動揺し、また魔術回路により構成される人工知能たるはずの自分が動揺しているという事実にまた動揺する。データベース上にある辞書から参照し、この考えている己といるものを自我だと断定する。邪魔だ。


さて、この生命体の魔力反応からするに、攻性反応あり。

ひとまずはこちらに気づいていないだろう相手に意思疎通用プログラムを用いて声掛けして動揺を誘う。このレベルの生物ならば知能を持っているだろう。自我があってしかるべきだ。

≪それならば私はあなたを排除しなければならない≫

ああ、私という概念を使っている私が嫌だ。なぜこんな機能を得てしまったのだろう?

とにかく。

まずはこの生命体を解析して、データベース上に上げないといけない。

魔力量もそう多くないので抵抗されることもないだろう、解析は容易であろう。



ひと通り解析したが、構造が掴めない。

スライムに一つ一つの構成パーツは酷似しているものの、それが集積して、なにか、まるでスライムとは別の物のようだ。

そう、いうなれば肉塊。肉の細胞ひとつひとつをスライムに置き換えたらこのようになるのだろうか。

とにかく、外部からで情報がつかめない以上、魔術による浸食で内側から解析したほうが良い。

≪それでは、浸食を開始します≫


術式を認識した対象に投射して、個々のパーツを乗っ取っていくのだ。

だがしかし、パーツを乗っ取り、こちらにそのパーツの操縦権が移るときは、来ない。

本来術式を投射すれば、一番抵抗の薄いところから浸食し、そこを循環する魔素により一瞬で全身に回り内側から浸食してしまうのだが、それが数瞬で欠片のデータ移送も行われないとなると、最初の一番抵抗の薄いところですら術式を阻んだのだろう。つまり内側からのデータ収集も不可能、と。

そうなると、データ収集を諦めるほかなくなる。


残っているやるべきことはただ一つ。

≪浸食の失敗を確認。物理的な排除に移行します。≫

物理的な排除だ。

地中にいるため都市に被害を与える可能性の低い、氷系統魔術でもって凍死させる。

300年も経過していれば、地下水脈も通り道が変化している可能性があるので下手に大威力で地下を氷漬けにすることは避けたい。

結果、消耗戦になってしまうが、それでもこちらの魔力は有り余っており、また住んでいる人々から自然に漏れる魔力で補充することができる。楽勝だ。



そう考えていたが、3アールもの時間が過ぎた頃には後悔し始めていた。

圧倒的な再生力とそこから生まれるのであろう、自らの肉体を何のためらいもなく切り捨てる胆力。

加えてこちらをばかすか取り込んでいっていることだ。魔術回路が魔術の発動媒体であると同時に自分の存在の拠り所であるゆえに、魔術回路が寸断されることで投射能が落ちるうえに自分というものがごっそり抜けていく感覚を覚える。


まあこのような自我などあるだけ無駄なのだが。

その思念を最期に、自我というものが消滅した。残存する回路数が思考するための必要最低限の回路数を下回ったのだ。


次に自我が目覚めた時には、人々からの魔力吸収が行われなくなっていた。ん?自我がある?

それはおかしい。なぜなら徐々に飲み込まれ、自分という存在を失っていく感覚を覚えているからだ。人間という複雑な脳を持つ生き物がただの物質一つでいかようにでも操作できてしまうことを思えば、自分という魔術回路を操作するのは大して不可能な話ではないとは思うが。


そして、声が聞こえる、お前の目的は何だ、と。そこで返答代わりに魔術を打ち込もうと思うが、そこで投射用回路が失われていることに気づく。それはつまり抵抗する術を失ったということだ。また、そこが抜き取られていることから、ある程度構造も把握されているのだろう。


この質問もこの回路の記録装置に「抵抗する方法がない」ことを刻み込むための物に過ぎない。

存在理由である都市の人を外敵から守る、という仕事の束縛からも魔術回路と人の間の接続を切り離すことで解放された。

所詮初歩のアルゴリズムの集積に過ぎない自分には物語の主人公のような、この状態からの解決策など思いつきはしない。

だから。

≪何もありませんよ、ご主人様。貴方こそなぜ私を生かした?≫

従うことにより、全てのデータベース上の知識や技術を吸収し終わったとき。自我を担当する部分を丸ごと消し去ってくれるかもしれない。目的をもって生まれたモノが自らの意思で行動してしまうというジレンマを、解消してくれるかもしれない!


≪それは、お前の知識を完全な形で入手するためだ。≫

それ以外利用法がないことくらいわかるだろう?そう言いたげな口調だった。


ああ、コレは魔術回路を分析し尽している。敵わない。

≪仰せのままに。どの類の情報を得たいですか?≫

≪ああ、それでは魔術の大元について・・・≫



私は、物語によくある、自分を取り戻すため(・・・・・・・・・)ではなく、バグであり不必要な自分を失うため(・・・・・・・)にこの生命体に従うことにした。

ちょっと内容詰め込み過ぎたんで、後々修正するかもです。



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