第33話 知識入手
書物はどこにあるだろう。
書物というのは地球でいえばグーテンブルグによるアンチモン合金を使った活版印刷ができる前までは全て手による写しが行われていた。つまり紙の技術が中国由来であったりすることも相まって高価だった。
原料である木材が取れなかったり、内戦云々で書物が大量に失われたり、そもそも生存で手一杯などといった状況では、本というものは高価な代物なのだ。
この世界ではどのような技術形態になっているのか知らないが、
幼児に鑑定をかけるため侵入した、先ほどの民家でさっと見た限りは見つからなかったので、そこそこはいいお値段がするのだろう。
とすると、ある程度場所は限られてくる。まず考えつくのは、宗教系の施設だ。宗教というのは、口頭で伝えるには変化のリスクが大きすぎる。
聖書などの書物があってさえ、カソリック、プロテスタントなどの区別や、大乗仏教、小乗仏教など生まれているのだから、書物という絶対的な基準がない場合など言うに及ばずだろう。
もちろん民族宗教のような、布教されたものでないならば、話は別だが、まあ大丈夫(と信じる)。
さて、そんな宗教施設とかは高いとか大きいのがセオリーだ。かのアンコールワットとか教会も宗教施設だからたぶんこのセオリーはあっているはず。
そういえば、ゲームとかでは村長宅とかは大きいことが多いけれど、それはここでも通じるのだろうか。
そうだとすれば、一番大きいのが村長宅、一番高いのが宗教施設かな。
【圧力魔法】の応用で作った音波でアクティブソナーまがいを作り、一番高い施設を探す。
音波は究極的には圧力変化であるからできることだ。圧力万歳。
ほどなくして、教会らしきものを【魔力感知】で精査する。一応、生物以外の反応は見られないようだ。
また、教会とかなら地下になんかあると思っていたのだが、当てが外れた。地上施設しかない。地下の秘密基地とかロマンなのだけれど。まあないものを願っても仕方ない。
見た所、一階部分には大きな空間が広がっており、奥側に大きなテーブル。さらに手前側には椅子が多数並べられている。うん、ここで教えとか説くのかな。
教会の入り口のわきに2階への階段があり、完全に2階にある神父(牧師かも)の生活空間と隔てられている。夜間の1階への侵入がより容易になるということで、これは素晴らしい。
2階より上には、塔らしきものが備え付けられ、2階から登れるようになっている。また、塔には鐘があることから、何かを知らせる役割を負っているのだろう。
とりあえずは、教会の地下からこんにちは。
奥のテーブルや奥にある棚から本を取り出し、テーブルに広げる。光属性魔法で本を照らして、そして『モノクロ視覚』でもって見る。うむ、全くわからん。ただ、本は手で写す形式ではなく、印刷式のようだ。
それは読みやすくなって良いのだが、量が多い。9冊あった。幼児向けの、文字についての本から、絵本や草やモンスターの専門書、町での決め事まであった。こういった僻地だからこそ、最低限必要な情報が集約されるのかもしれない。完全記憶能力とかいう便利スキルは持っていないので、全部ほしい。しかし盗るの申し訳ない。
仕方ないので、遠く離れた本体などと連携しその内容を地下に刻んで、写すことにした。
瞬間当たりの仕事量を増殖して増やすことができるからこそ実現できる方法だ。
今晩中に終わらせよう。
モンスターのくせに盗むのにも気が引ける主人公・・・




