第18話 暇だ…せや!遊ぼう!
地下で蠢くスライム。ものっそい暇である。というのも、岩盤の中にいるため、周りはすべて岩。暇だからと言って進行方向に立ちふさがる岩を溶かし、退ける手(?)は休めていないが、この単純作業だと飽きてくる。さらに、転生直後の時のゴミだめから脱出するというとりあえずの課題は達成されたため、周囲の警戒とモグラよろしく掘り進めること以外やることはないのだ。
こうなると活躍するのが”一人遊び”である。玩具などでやる、アレである。この場合、その玩具とは自分のスキルと、自分が今まで掘ってきた、穴である。
どう遊ぶか。
1つ、【増殖】でもって増えつつ、蟻の巣穴のように穴を一本道から枝分かれさせていく。別れた穴が交差しないように、かつ崩落しないように。
2つ、魔法を穴にぶっぱなす。MPの限りぶっぱ。
1つ目は持ってきた人骨が通れるギリギリの大きさの穴にして、放射状に分かれていくことで崩落のリスクや地上や来るかもわからぬ追撃者に見つかるリスクを減らせる。
2つ目は単純に魔法スキルのレベルが低いために大したことはない。INTによる威力補正がいかなるものかはわからないが。
思い立ったが吉日、早速始める。
まずは1つ目。自分の肉体含め4つまでの分裂で様子を見て、倍々に数を増やしていく。
ピコン!スキル【分裂思考】を得ました!
このスキルは名称からも察せられるように分身体に個々に思考能力がつくようだ。リソース自分。
複雑な思考を要する作業をしているからかな?
ともかく、本体の自分としては思考のリソースを割かなくて良い分楽になる。
そうなると、例のゴミだめ内で切り離した分身体スライム達が気になってくる。
一応分身体スライム達も「自分」であるという認識がある以上、反乱とか起こらないと思うが…
起こらない、よな?
・・・起こさないためにも定期的に意見聞くようにしよう。
気を取り直して、2つ目。丁度よいので本体ではなく分身体で魔法を発動させる。
理由は、まずそもそも、【溶解液】と同じスキルといえど、魔法が発動できるのか、また、分身体に魔法が発動できるほどの思考能力が備わっているのかを確かめるため。また、成功したらデコイにしようと思っているからだ。主に3つ目が理由だ。デコイの承諾はすでに取ってあるし。
まずは地盤などに影響が少ないと思われる【雷属性魔法】。
発射!
ヒュンッ
...【魔力感知】の索敵範囲外まで穴の中を突き抜けていった。というより、着弾地点が見当たらなかった。
Lv1でまっすぐ突き抜けていくその魔法をほめるべきか、まっすぐ穴を掘ってきた自分の分身体、またそのように魔法を放った分身体の頭脳をほめるべきか。
まあとりあえず、【雷属性魔法】が使えるだけでも良しとしよう。ただし、次は索敵範囲ぎりぎりのところに着弾することができるように命中率をあげるべきだろう。まっすぐ進んでいくこの魔法の有用性は計り知れない。
次。【光属性魔法】は光を感知する視覚を持たないためパスして、【氷属性魔法】である。床面を氷漬けにしたところで、索敵されるリスクは【雷属性魔法】より低く、かつ環境に対する影響も少ないだろう。
発動。
ピキンッ
そこそこ広い範囲が氷漬けとなった。
次。【水属性魔法】水で溶解液を洗い落しながら進むことができるようになればより気を使わずに進むことができるだろう。
発射。
ブシュウーッ!!!
岩を穿つほどではないが、溶解液を押し流すには十分な勢いだ。
水属性の成功に満足したところで、残ってかつ威力が確かめられそうなのは【火属性魔法】である。
威力判定はイメージとかとの関係から、水属性よりもやりやすいと思うが、どうだろう。
発射。
ブシュウッ
着弾点で、岩が溶けた。これは、はねっかえる溶岩の飛沫さえなんとかできれば、削岩にも使えそうだ。
ここまでで、なぜか遊びが研究じみてしまったが、性分なので仕方ない。
こうなると、【火属性】【水属性】が削岩にも使え、【雷属性】が要研究といったところか。
遊んで気を晴らしたところで魔法をぶっぱなそう!