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黒衣黒刀の暇つぶし  作者: 月倉悠
22/24

……

「静かにして」

 わたしは男の顔にナイフを近づけ、悲鳴を上げたら刺し殺すという意を伝えた。

 それでも悲鳴を上げられたらまずいので、念のため周りに結界も張っておく。防音の結界だ。これで外へ音が漏れる心配がなくなる。

「ねぇあなた、〈イーディー〉の構成員よね?

男は涙目になりながら頷いた。

 よし。

 わたしの予想はしっかりと当たっていた。

「じゃあそんなあたなに質問なんだけど、〈イーディー〉のアジトはどこにあるの? ここの森にあることはもう知ってるわ」

「教えたら生かしてくれるのか?」

 小柄な男は、横たわる長身痩躯の男に目をやりながら言う。

「さあ? けど教えてくれなかったら、生きながら地獄を見ると思っていいわ」

「俺を拷問するということか?」

「ご名答」

 バカでもそれぐらいの察しは付くようだ。

「ちっ」と男は恨めしそうに舌打ちをした。「わかったよ。俺も痛いことはされたくねぇから、俺達のアジトがある場所まで案内してやる」

 ――良かった。

 ここで案内を取り付けられていなかったら、闇雲にアジトを探す羽目になるか、また拷問の相手を探す羽目になるところだった。面倒なことだ。今回ばかりは、小柄な男の虚弱な面に感謝したほうがいいのかもしれない。

 もちろん、後で殺す相手に「ありがとう」などという言葉は言わないが。

 わたしは、ナイフを男に突きつけたまま立ち上がった。

「じゃあ案内して」

「わかったよ」

 男も渋々といった様子で立ち上がる。

 その男の喉笛にナイフを付きつけながら、わたしたちはゆっくりと歩き始めた。

「なあ、ちょっと質問いいか?」

 数時間後には死ぬ男が、歩き初めて200メートルぐらいでのところで声を上げた。

「なに?」

「まさかオマエは、1人で俺達のアジトに乗り込もうしているのか?」

「そうだけど?」

「バカかオマエは?」

「なんで?」

 わたしは世界一強いのだから、徒党を組まずにアジトに乗り込むのは当たり前だろう。わざわざ仲間を付ける必要がまったくない。言っては悪いが、並みの仲間を引き連れてきたところで、わたしの足手まといになることは目に見えているから。むろん、その仲間というのが、〈7ノ神〉のメンバーだったりしたら話は大きく変わってくるけれど。

 小柄な男は小ばかにするような表情をした。

「だってな、〈イーディー〉にはぺルディさんもいるし、他の幹部たちも化け物染みた強さを持っているんだし。なにより――」

「なにより?」

 頭上のほうで甲高い鳥の鳴き声がした。

 森は相も変わらず真っ黒い。

「〈イーディー〉のリーダーであるアウルさんの強さが、もはや神の領域に達してしまっている。おまえ、そのアウルさんの武勇伝聞いたことあるか?」

「いいえ」

 というのは嘘で、本当はアウルさんの武勇伝ぐらいは聞いたことがある。ただ断片的にしか聞いたことがないので、わたしは、この男から情報を手に入れようと思ったのだ。構成員と言っても、〈イーディー〉メンバーであることに変わりはないのだから、きっと巷には出回っていない情報だって持っていることだろう。

「ふっ、じゃあ教えてやるよ」と小柄な男は、得意満面の体で言ってのけた。「まず、俺達のリーダーであるアウルさんは、重力を操るという恐ろしい能力を持っている。その能力を巧みに使って、連合の本部を襲撃したのは最近のことだな。連合の高官は、あれは複数人での襲撃だと言っていたが、事実は大きく違っている。総被害額20兆という甚大にもほどがある数は、アウルさん1人でやってのけたんだ。それでも連合が複数での襲撃と言ったのは、自分たちの面子を守るためだろう。たった1人を相手に、本部が総崩れとなっては、国民からの批判もすごいだろうからな」

「へぇ~他には?」

 かなりの自慢になってしまうが、わたしでも連合の本部を落とすぐらいはできそうだ。レシュルギュルデン連合国家自体が、そこまで、軍事力の強い国家でもないし。ちなみに軍事力が1番ある国家だったら、わたし的には、グロンディウス大帝国だろう。さいきん新兵器を開発したとの情報も聞く。

「他にはか」と小柄男は、一瞬だけ悩んだような素振りをみせ、「たった1人である賞金稼ぎの団体を壊滅させたとか、連合の英雄――バルクを完膚なきまでに叩き潰したとかだな。あのときは、俺もモニターで戦いを見てたんだが、その熾烈さと言ったら言葉では表現でないほどすごいぜ」

「たたあなた語彙力がないだけなんじゃないの?」

「ちげぇよ」

 男はぶっきらぼうに言い放った。



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