強さ
地図は軍用車両の中にあった。真新しい紙でできた地図だ。
ディウスさん以外の兵士は、ディウスさんを倒した後に、即効でみねうちをして気絶させた。抵抗という抵抗をしたものは1人もいなかった。
奪った地図によると、〈イーディー〉のアジトはある森の中にあるらしい。暗黒の森だそうだ。
ここからだと約60キロメートルはある。まあ、転移魔法を使えば一瞬だろう。1秒以内につくことができる。
わたしは地図を眺めて、暗黒の森のイメージを作った。ここで雪山などをイメージしたら雪山に飛んでしまう。だから転移魔法を使うときは、果てしない集中力を要することになる。
やがて転移魔法の詠唱が完了した。
解放すると視界がホワイトアウトして、開けたときには目の前に暗い森があった。転移大成功だ。
「さて……」
暗黒の森はその名に恥じぬほど暗い。意を決っして中に入ってみると、それが痛切に実感できた。20メートル歩いただけで外からの光が遮断されてしまう。もちろん太陽の光なんてものは一筋も差していない。
鬱蒼と生い茂る木々の枝や葉っぱが多すぎて、厚い天井のようなものを作っているからだ。
地面には真っ黒い花が生えている。茎からは花びらまで真っ黒。おそらくブラックダスティンの花だろう。光を吸収せずに、陰鬱な闇を吸収し続ける花だ。食べると毒があるとも聞いたことがある。
あんな真っ黒い花、気が狂っても口に運ぶ気はしないが。
そういえば今気づいたのだけれど、暗黒の森は一陣の風さえも吹いていない。どうりで静かすぎると思った。でもどうして風が吹いていないのだろう? 考えてみたが、はっきり言ってよくわからなかった。
その時だ。
「――おい、オマエ、聞いたか?」
前方から男の声が聞こえてきた。その声が近づいてくるにつれて、足の音も段々大きくなってくる。
わたしは急いで木の幹に隠れた。
男達の話し声はまだ続いている。
「え、なんだよ、なにかあったのか?」
「あの副リーダーのぺルディさんが、連合国家の犬である〈ラスリス〉を襲撃したらしいぞ。ああ、軍用車両で移動中のをな」
「マジか、で、その〈ラスリス〉はどうなったんだ?」
話し声はわたしの方へどんどん近づいてくる。
「ウワサを聞いた限りだと、ぺルディさんの銃撃を受けて、エンジンが故障してしまったらしいぞ」
「へぇ~」
わたしは心の内で確信した。
この人達は確実に〈イーディー〉の構成員だろう。だって構成員でもでもなければ、『ぺルディ』さんなどという呼称は使わない。普通の人達なら、反政府組織の幹部の名を呼ぶときは呼び捨てにするだろうから。
わたしは木の幹から顔を覗かせてみた。この〈イーディー〉の構成員の顔面と、見格好を確かめてみようと思ったからだ。
1人は長身痩躯の男だった。アサルトライフを肩から下げていて、茶色のベストを着込んでいる。
もう1人は小柄で軽そうな男だった。腰に2丁の拳銃を吊るしていて、灰色のマントを羽織っている。
この2人に共通することは、両方とも口元をスカーフで覆っていることだろう。
2人は更に更に近づいてくる。
丁度いい機会だ。
わたしはニヤリと笑ってみせた。こいつらをキツイ拷問にかけてやろう。前わたしの部屋を襲撃してきた男みたいに。前の男は痛いことをしても口を割らなかったが、こいつらの場合はすぐに割ってくれるだろう。そんな気がした。
わたしはタイミングを測って、暗殺者のように木の幹から飛び出した。風のような素早さで。男達には反撃の機会を1つも与えない。
長身痩躯の男のほうへわたしは肉薄。ナイフで喉笛を切り裂いた。真っ赤な血が溢れ出る。男は後ろの方へ倒れていった。
もう1人の小柄な男は悲鳴を上げようとしたが、わたしはそれを全力で阻止。開きそうになった口元を手で押さえ、そのまま後ろへ押し倒した。マウントポジションを取る。




