数多の銃火器
「ん? なんだ」
ディウスさんの車が急に止まった。後ろの車も止まる。ディウスさんは余裕のある止め方をしたので、後ろの車も急ブレーキにはならなかったと思う。出発前と出発後で隊列が変わっているのは、ぶつかりそうになったディウスさんが、わがままに、これからは俺が先に行くと言い出したからだ。
止まった車の先には、中肉中背の男の人の姿があった。黒色のコートを着ている。顔は仮面に覆われていてよく見えない。パッとみた感じだと武器の類は見つからないから、危険人物のようには見えないけれど。
ちょっと不気味な感じがする。
「お~い、そこをどいてくれねぇか?」
ディウスさんは窓から顔を出して言った。が、仮面男の反応は一切ない。ディウスさんの声が聞こえなかったかのように、ただ下を向いてるだけ。
「おい、どいてくれと言っているだろ!」
ディウスさんは、今度は強く怒鳴るように言っていた。わたしはディウスさんの隣にいるから、耳を塞ぎたくなる感じでうるさい。
仮面の男は緩慢な動作で顔をあげた。
「え? 今なにか言いましたぁ? ――そこのジジイ」
「…………」
わたしは仮面男のセリフを聞いて、開いた口が塞がらないような状態になってしまった。まず、ディウスさんは天をも割るような声量で話していたのに、それが聞こえないというのが驚きだ。
そしてなにより、初対面の人をジジイ呼ばわりって。
失礼ですけど笑えます。
そのディウスさんの方を見てみると、ディウスさんは、顔を炎のように赤く染めていた。すぐにでも噴火してしまいそうだ。
「じ、ジジイだと……」とディウスさん。現在の声はつぶやくように小さいが、
「てめぇ、今すぐジジイと言ったことを俺に侘びろ! そしてジジイじゃなくてイケメンに訂正しろ!」
子供みたいに喚きだした。
「なに言ってるのですかあなた?」と仮面の男の人。「ジジイと呼ばわりでそんなに切れてしまって、ぷぷぷぅ、みっともない。あと自分でもわかっているとお思いですか、あなたの顔、ブスを通り越して顔面凶器になってますよぉ?」
「なっ……」
隣からだとよくわかる。ディームスさんはとてつもない怒りを覚えているようで、両腕がプルプルと震えてしまっている。
仮面の男は笑っている気がした。
そんな仮面の男を見て、ディウスさんはバンッと車体を殴打する。
「というかおまえ! 一体どこの何者だよ! 名を名乗りやがれ! ちなみに俺は、〈ラスリス〉の副隊長ディウスだ! 覚えてやがれ!」
「はい、元から知ってますよ」とここで、仮面の男は一歩足を前に出して、「ちなみにぃ、僕の名前は、〈イーディー〉所属のぺルディナです!」
「え!?」
わたしは反射的に驚きの声をあげたが、この声はある音によってかき消されてしまう。
――銃声だ。
いつのまにか男の手にはガトリング銃。しかも2丁。真っ黒い銃身が光っていて、銃口からは眩いばかりのマズルフラッシュ。
けたましい音が耳をつく。
火薬の匂いが鼻をつく。
瞬時に前の防弾ガラスは吹き飛んで、車には途轍もない反動が来ていた。
ただ悲鳴というものは上がらない。
わたしももちろん上げなかったが、コンマすうびょう唖然としてしまい、反撃を実行することができなかった。
悔しい。
車から座席を蹴って飛び出したのだが、すでに奴の姿はどこにもなかった。気配すら感じ取れない。
いつものわたしなら、例え相手が1キロ離れていようとも、即座に気配を感じ取れるというのに。
仮面男の気配遮断技術。虚空から前触れなくガトリングガンも取り出す技術。もしかしなくとも、あの男は強敵となりうるかもしれない。
透明なガラスが服についている。
わたしはそのガラスを払い落としながら、あの強さなら、〈7ノ神〉にだって入れるかもしれないなぁ、などと、どうでもいいことを思ったりしていた。




