どぅおわわぁぁ!
わたしは助手席に乗り込んだ。ガディウスさんがそこに座れと言ったからだ。そのガディウスさんは、ヨイショと言いながら運転席に腰を降ろす。ハンドルを握る。後ろの黒い座席には、他の兵士たちが6人ほど座っていた。
一同わたしを眺めまわしてきてウザイ。
ガディウスさんは軍用車両を発進させた。一瞬だけ揺れる。エンジンのブオンというような音も聞こえた。
車内はとても無機質だ。
色調は無愛想な黒。ぬいぐるみなどの飾りははなく、実用的なものしか置かれていない。無線機やら、最新式のRPGやらと。
室内の窓は、当然の如く全て防弾ガラスだった。厚くて、20mmの弾丸なら受付なそうだ。
わたしはイスに座りなおす。
「ではガディウスさん、ここにいた謎の影について、細部まで教えてください」
「ああ、約束だもんな」とガディウスさんは言った。「恐らく、おまえの言っている影というのは、NO008のことだろう」
「NO008?」
なんかコードネームのような名前だ。
「ああ、NO008、俺達は奴らをそう呼んでいる。で、その奴らは、反政府組織〈イーディー〉が開発した新兵器だ。人間を何の痕跡もなく呑みこむことができ、倒された場合は、数秒後に自然消滅してしまうらしい。原理はわかっていない。幸いそこまで戦闘力はないそうだが、近づかれたとしても、ほとんど気配を感じることができないらしいぞ。一体、どうやってそんな兵器を作ったことやら」
「お、おそろしいですね……」
正直な気持ちだ。
わたしはディウスさんの説明を聞いて、謎の影の認識を改めた気がする。初めはただの雑魚かと思っていた。しかし量産されたらどうなるか? 都市部が壊滅的な攻撃を受ける、いや、下手をすれば、国家を丸ごと転覆させられてしまうかもしれない。
わたしは、てのひらに冷やせ汗が滲むのを感じた。
ディウスさんは、「だろ?」と運転をしながら応えた。
車は快調に進んでいる。
「で、話はまだ終わりじゃないぞ」
「え、まだ終わってなかったんですか?」
「当たり前だろうが。おまえは、なぜスカティッシュの村の人達が消えたのか、ということを知りたくないのか?」
「え、〈イーディー〉という組織が、スカティッシュの村にNO008を放ち、それで、村の人達が殺されてしまったんじゃないですか?」
口に出し、改めて思ったのだが、〈イーディー〉のやったことは、許しがたい蛮行だ。何の罪もない、村の人達を殺し尽くしてしまうなんて。そして、わたしの友達であるエリアさんも捕まえている。
もしアジトのようなものを発見したら、徹底的にぶっ壊し、構成員も幹部も皆殺しにしてやる。
「ちょ、まった」
とディウスさんは、なぜか、意表を突かれたような、情けなさ過ぎる声をだした。
「どうしました?」
わたしは首を傾げる。
「なんでおまえ、スカティッシュの村が消えた理由を知ってるのだ?」
は? この人は一体なにを言っているのだろうか。
わたしは心配になった。
ディウスさんの頭の中身と、こんな人を特殊部隊に起用してしまった、軍のお偉いさん方の頭の中身を。
わたしは言った。
「そんなの、わたしもバカではないんですから、話の流れからしてわかりますよ」
「そ、そっかぁ……」
ディウスさんは、目に見えて落胆していた。
そんなディウスさんを見て、わたしがはぁと溜息をついたときだ。
「どぅおわわぁぁ!」




