ラスリスの者
わたしは、水穴を探し終わったあとも、右半分の捜索を健気に続けた。民家の中を物色したり、生えている木を叩いてみたり。畑に生えている植物を、何分か観察してみたり。自分でも頑張ったと思う。しかし、運命の女神はわたしの味方をしてくれず、なぜスカティッシュの村の人が消えたのか、という謎が解けるような手がかりは見つからなかった。ひどい話だ。時間も1時間50分ほどは経っているだろう。
約束の時間にはもうすぐなので、わたしは村長の家へ足を向けた。
村長の家に着くと、しかしそこには誰もいなかった。エリアさんの姿がない。とっくに2時間は経っていると思うのだけれど。まだエリアさんは、左半分を探索中なのだろうか? 時間に遅れてしまうのは構わないのだけれど、なにかあったのではないだろうか、とわたしは心配になってしまう。身体がゾワゾワする。エリアさんは強いから、謎の影に襲われて負けちゃったとかはないと思うのだけれど……。案外ひょっこりと帰ってきそうのだけれど……。実はいましたーみたいな感じで、後ろから現れそうなのだけれど……。
万が一ということもありうる。
エリアさんが将軍ぐらいに強かったとしても、負ける確立は0ではないのだ。
わたしは、いまから15分以内にエリアさんが戻ってこなかったら、エリアさんを探そうと思った。見つけだしたら笑ってやる。「エリアさん、自分で別行動にしましょうと言ったくせに、その自分がヘマをするなんて、とんだお笑いぐさですね、あはは! やっぱりエリアさんは、わたしと一緒に行動するべきです!」みたいな感じに。どっかの悪役みたいなセリフだが、そんなことは気にしなくて良いだろう。
星が散り月の浮かぶ空は、まだ暗黒のように黒かった。
わたしはそんな空を見つめている。
15分の時が経った。
しかしエリアさんは、わたしの後ろから現れるわけでも、ひょっこりとやっけてくるわけでもなかった。空から降ってくるわけでもない。
いよいよ、考えたくもない事態になってしまった。
「エリアさん……」
わたしの呟きは闇に消える。
そのときだ。
前方の闇が照らされて、黒かった民家や木々が浮かび上がり、光がわたしを照らし出す。エンジンの音も聞こえてきた。
やがてそのエンジンの音はどんどん大きくなり、わたしの前に、2台の軍用車両が停車した。大型トラックを半分にしたような大きさ。銃座にはチェーンガンが付いている。使われている装甲は対物理装甲。
なぜこんなところに来たのかは謎だったが、いまは、そんなことを気にしている場合ではなかった。命の危機にあるエリアさんを助けなくては。
わたしはこの軍用車両を無視。
急ぎ足で、右半分の捜索に乗り出そうと思ったのだが――
「そこのもの、今すぐ止まれ」
野太い声が耳をついた。わたしに制止を呼びかけているらしい。止まろうかとも思った。けど、やっぱりわたしは止まらずに、口を閉じてだんまりを決めみ、足を前へ前へと動かした。
しかし、
「待てと言っているだろうが!」
わたしの前に大男が現れて、通せん坊をするように道を塞いだ。右手には電熱ソード。わたしの前に瞬時に出てきたのは、時空魔法を使ったのか、体術か、それとも能力を駆使したのか。どれにせよ、只者では使えない。男から放たれているオーラも異常。
わたしは様々なことを打算し、前へ行こうとする足を止めた。ここでこの男と戦うのは、得策じゃないと思ったのだ。軍用車両からも、ぞろぞろと兵士たちが降りて来ているし。
わたしはぴしゃりと言った。
「あなたたちは一体、わたしに何のようですか? あと、何者なのか、名乗ってくれませんか?」
軍用車両に乗ってきて、軍服を着ているから、どこかの組織の者だと思うけれど。
大男の双眸はするどい。背中には、無骨なライフル銃を差している。
「俺達は特殊部隊、〈ラスリス〉の者だ。おまえにはここで何があったのか話してもらいたい」
スカティッシュの村があり、エルムの町があり、わたしの今いる国は、レシュルギュルデン連合国家という。〈ラスリス〉はその国に所属する、荒事専門の特殊部隊だ。その業績は数しれない。
「話せば自由の身にしてくれますか?」とわたしは、エリアさんを助けに行きたい、という気持ちを抑えながら問うた。




