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黒衣黒刀の暇つぶし  作者: 月倉悠
12/24

謎の影


「伏せて!」とわたし。

「伏せてください!」とエリアさん。

 2人は同時に身を伏せた。黒い影がエリアさんに向かって、武器のようなものを振り下ろすのを、わたしは幸い目に止めたのだ。エリアさんがわたしに、「伏せてください」と叫んだのも、わたしの後ろにも黒い影が来たからだろう。気配でわかった。

 わたしは拳銃を抜く。

 照準機は覗かずに影の頭に狙いをつけた。1発だけ発砲。銃声が響いた。と思ったら黒い影はすでに倒れている。わたしの銃弾に屠られてしまったようだ。さすがわたし。どんな敵だろうとも、即効でケリをつけてしまう。

 後ろの気配も消えていた。エリアさんが腰のポーチからナイフを取り出して、それを後ろの影に当ててくれていたからだ。風のように速かった。むろん、わたしの抜き撃ちよりは遅かったけれど。

 2体の影は葬った。しかし謎の敵は、もっともっと数がいて、2体ていどでは済まなくて、わたしたちが一定の範囲からでない限り、断続的に攻撃を仕掛けてくるはず。

 わたしは、拳銃をホルスターに仕舞いこんだ。

「やっと謎が解けましたね」

 エリアさんは、床に突き刺さっていたナイフをぬいた。

「やっぱり、さっきの影が黒幕だったんですか?」

「そうだと思いますよ」

 ――やっぱり。

 けどあの黒い影たちは、一体なにものなのだろう。わたしは初めてみた。新種かなにかだろうか? この世界では1日に、20種類以上の新たなモンスターが生まれると聞く。伝説級モンスターなどはなかなか生まれないらしいが、接触危険種などは、割と狩り切れないほど誕生しているそうだ。

 わたしたちが倒した黒い影は、さっきまでそこで倒れていたのに、いつのまにか姿を消していた。

「あの」

 黒い影のことを、エリアさんなら知っているかもしれないので、わたしは質問してみることにした。

「黒い影について、エリアさんはなにか知らないですか?」

「黒い影?」

 エリアさんは戸惑うような表情をした。理由は知らない。またぞろ私をからかっているのだろうか?

 でも、例えそうだとしても、文句を並べるのは面倒だ。わたしは、ただ首を縦に振る。

「はい、黒い影です」

「つまり雪乃さんが見た影は、黒かったということですね?」

「え、エリアさんが見たのは違ったんですか?」

「ええ、わたしが見た影は赤色でした」

 なに。

 わたしは内心おどろいた。でもよくよく考えてみれば、なにもおかしいことはない。むしろわたしが早計すぎたのだ。自分が見た影が黒色だったからといって、エリアさんの見た影までもが、黒色だなんて限らないのだから。極論を言ってしまえば、虹色や金色だったとしても、なんら不思議なことはない。

 わたしたちは村長の家を出た。エリアさんと話し合って、とりあえず、外に出てみようということになったのだ。

 ドアを開けると、村は真っ暗な闇に包まれていた。なんだか不気味。夜空には満天の星が瞬いている。

 わたしの耳には、物音というものはほとんど聞こえてこない。唯一きこえてくるのは、虫の音ぐらいだろうか? なんの虫かはわからないが、澄んだ音を奏でている。民家は死んだように佇んでいた。

「雪乃さん雪乃さん」

 となりに立つエリアさんが、ひそひそと声を掛けてきた。

「どうしました?」

 エリアさんの声を聞きながらも、わたしは常に周囲を伺っている。

「いきなりですけど、ここからは別行動にしませんか?」

「え!? なんですか!?」

 わたしは、身体がビックと震えあがるのを感じた。エリアさんのせいだ。こんな真っ暗闇の中を別行動するなんて、正気の沙汰とは思えない。怖すぎるじゃん……。

 エリアさんは一息はいて、急に真面目な顔つきになった。


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