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黒衣黒刀の暇つぶし  作者: 月倉悠
11/24

ブラック&ブラック

捜索を開始する。

 早足で歩いて、最初は本棚の中を物色してみた。ゴソゴソと泥棒のようにやる。本棚の物色が終わったら、床を外してみたり、台所にある引き出しを開けてみたり、高級そうな壷を壊すこともやった。他にも色々なことをやった。しかし、芳しい成果はナシ。エリアさんはどうなのだろう?

 わたしは首を向けて、声を張り上げて聞いてみる。

「エリアさん、そちらは何か見つかりました!?」

「いえ、なにも……、雪乃さんはなにか見つかりました?」

「残念ながら、わたしも何も見つけられていません」

「ここにはないのですかね?」

「う~ん、わからないですけど、階段があるので、念のため2階のほうも探してみましょう」

 階段は台所のとなりにあった。木の腐った臭いがしている。踏むと軋むような音がなかったが、上らないと先に進めないので、わたしはおっかなびっくりの体で前へ進んだ。手すりには常に掴んでいた。ややあって階段を上りきると、2階は、寝室だけしかないようであった。

 主な家財道具がベッドしか見当たらない。大きさは2人が悠々と寝れるほど。天井には照明が付いていた。他にあるものといったら、姿見と、古めかしい時計ぐらいのものだろう。

 部屋の広さは、安い宿の一室ぐらいだろうか? 寝るためだけに使うのならば、必要以上に大きい気がする。

 エリアさんはわたしの横にいた。

「ね、ねぇ雪乃さん」

「どうしました?」

「あ、あちらを見てください」

 震え、エリアさんの白い指がある場所を示していた。わたしはそちらへ視線を向ける。さきほど見たベッドがあった。ただ、ベッドの上に乗った毛布が、まるでそこに人がいるように、ふっくらと膨らんでいる。

最初みたときに気付かなかったのは、バタバタと急いでいたからだと思う。それにしても、ベッドが膨らんでいるということは、誰か人が潜んでいるのだろうか。エリアさんは怯えたように震えているのだが、わたしも怖くなってしまうからやめて欲しい。

「み、見ましたか、雪乃さん?」

「ま、まあ、見ました」

 どうしてだろう、わたしの声も心なしか震えていた。

「なにが潜んでいるのだと思います?」とエリアさん。

 わたしは自分へ言い聞かせるように応える。

「常識的に考えるのならば、違う毛布が詰まっているとか、たくさんの枕が詰まってるとかじゃないですか? あ、他には、数え切れないほどのお菓子が積んであるとか」

「けど、人がいるとか、なにかアレなものがいる可能性などもあるのですよね?」

「ま、まあ、そうですけど……」

 なんでこの人は、わたしが場を和まそうとしているのに、わざわざ怖いことを言うのだ。やっぱり頭がおかしいのでは? わたしは恨みがましい視線を、エリアさんに気づかれぬように、こっそりと送っておいた。

「雪乃さん」

「はい?」とわたしは返事をする。

「まことに申し上げづらいのですが、わたしの視界にベッドが写らないように立って、パパッとあの毛布をめくってください」

「い、いやですよ」

 と声を出しながら、わたしは心の中で思っていた。このおかしなエリアさんには、思いやりの心というものがないのか! そして、考えが自己中心的すぎる!

 わたしは、ベッドから目を逸らして言ってやった。

「エリアさんがやってくださいよ。わたしの視界には、このベッドが写っていてもいいんで。あとわたしが後方にいれば、すぐに、サポートをしてあげることだってできます。場合によっては、悲鳴を上げながら逃げますけど……」

 最後の方は声を小さくしたので、「逃げる」という言葉はエリアさんに聞こえていなかったはずだ。

「いやいや、わたしは絶対にやりませんよ!」

 エリアさんは、もはや悲しくなるほどに、明確な拒絶の意を示していた。ただわたしも、毛布をめくりたくないのは同じだ。この戦い、譲るわけにはいかない。とは言うものの、このまま押問答をしていれば、無駄に時間が過ぎていくのもまた事実。ここは1つ手を打つことにしよう。

「わかりました、じゃあしょうがないです」とわたしは言った。「しょうがないので、ここは堂々と、真剣に、ジャンケン勝負でいきましょう。文句はないですよね?」

「は、はぁ……」とエリアさんは不承不承うなづいた。「わかりました。しょうがないですね、ジャンケンと言われれば、断るわけにもいきません。ここは運を天に任せましょう」

 やった、これで、長かった勝負に決着を付けることができる。わたしは心の内でガッツポーズを作り、自分のてのひらを透かし見た。

「それじゃあ、いきますよ、準備はいいですか?」

 わたしの準備はもう万端だ。

「はい、わたしの準備はオッケーです。では、掛け声をお願いします」

「了解です」

とわたしは、いちど深く深呼吸をして、

「最初はグー! ジャンケンポン!」

 ――その瞬間、エリアさんの後方に、黒い影が出現するのをわたしは見た。



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