表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/59

4話 与えられた武器は雑魚?




「質問は無かったようなので、先に進めますね。今あなた方が持っているカードは通称パスと呼びます。パスはあなた方が異世界で生き続けて、現世の記憶を忘れてしまわないためにプロフィールを備えています。ですが、本来の使い方は、手に入れたアイテムを保存しておいたり、自分のステータスを見たり、通信をするためにあります。このパスは他の人が触れられない様に加工されていますが、開示するには可能です」

 説明しながら男は自分のポケットからパスを取り出し、ボタンを押した。そこからは、俺がこの映像を出すのと同じように、それからも立体的な画面が現れた。

 映像で映像を見るのも変な話だな。と、ふっとそんなしょうもない事を考えてしまった。



「このように、相手のステータス画面をみせることが出来ます。その中で右下に場所が書かれているでしょう。そこに本来なら現在地が書かれています。無論、この世界は層が高くなるにつれてレベルが上るようになっております」


? LV?

HPゲージ ?/?

POW ?

DEF ?

LUK ?

SPD ?


<スキル>

メール(0) 現在地:?



 俺のと比較したかったのだがメール以外はハテナで、比べようがなかった。見せ終わるともう一度ボタンを押すことで、画面は消えた。



「この機能については半分以上がスタートと同時に気づいていたことだったので、説明は省いても良かったのですが。まあいいでしょう」


 その半分以下に俺は確実に入ってるんだろうな。


「もう消してしまいましたが、スキルという名目が在ったと思います。それはこの世界で生き残るために与えた能力と考えて下さい。スキルにはランクが存在し、上から、S、A、B、C、と言う順にランクが別れています。ランクは下位でも弱いわけではありません。ですが当然下から上になるにつれて、秀でた部分が増えていきます。まあ、使い方次第ということもありますがね。」


 よく考えると俺はCではないのか。この状況を整理すると、いきなりボス部屋で、スキルも最低、POWも多分平均より低い。もはや崖っぷちすぎるのではないか。それも男の説明では、秀でたところがほとんどない能力ってことだ。終わったな。




「後は帰り方とレベルの説明だけですね。まずレベルですが、この世界では生き物を倒すことでそのモンスターの経験値を得る事ができる。言ってみればゲームのようなものです。人間からも例外ではありません。そして経験値を定められた値まで得るとレベルが上がります。それに伴ってステータスに記されている表示も変動します。ただし、倒すモンスターによって上がり方は変わるのです。ずば抜けてPOWのある敵を倒せばPOWが上がりますし、SPDのある敵を倒すとSPDがあがります。その代わりにレベルの高いモンスターでないと上がり方は微弱であり、判断が難しくもなります。そんなレベルの高いモンスターを見抜くには、その敵の上部に浮いているレベルの表示を確認すれば万事解決です。全ての敵にレベルは記されていますので安心して下さい。ボスになるとはるかにレベルは上がりますので注意が必要ですけどね」


 なるほど、ボスはレベルが高いのか。謎めいた数値に足が勝手に動き、大きく一歩出した様な形になってしまった。。数秒すると殻が消えてボスらしきモンスターが剥き出しになる。


「……68レベ」



「まあそんなに早くボス部屋にいるような馬鹿な人はいないと思いますが、ボス部屋は一度入ると倒すか倒されるかしない限り出ることは出来ませんので、注意して下さい。まあレベル1では辿りつけないとも思いますがね」


 いるんですけど…それも、ボスのレベル差が67もあるところにいるんですけど。でもなんだかんだ言って、全部この男のせいなんだ。まずこんな所に落としたのが間違いなんだ。それによく見たら、一層に連れてきたとか言ってるけど、余裕で51層にいるし。もはや、どこだよシャドウコロシアムって!!


「そして最後に帰り方なのですが、先ほどから出てきているボスというワード。そのボスの頂点を倒すことで帰る糸口を見いだすことが出来ます。倒すことが出来ればですけどね。まあ在り来たりなんですが、その最終ボスは当然100層の最上部にいます。力を合わせればなんとかなると私は思いますので頑張って下さい。なにか質問があっても、もうめんどくさいので無しでお願いします」

 最初のテンションとは天と地にまで落ちた男の雰囲気。力無く腕を振って質問は受け付けない異を唱えた。




「では、ここからはあなた方学生の知恵でなんとか乗り越えていって下さい。あ、最後にゲーム感を出したくなったのでパスに、掲示板機能を追加しました。まあ名前は表示できませんが、語り合って下さい

。それでは、送還のために自分の命をこき使い、頑張って100層までこぎ着いて下さい。そして、私の目の前に立ち、答えを教えて下さい。私の求める答えを……ね。では、またお会いしましょう」

 

 男は最後にそれだけ言うと、微笑みながら手を振った。そこでプツリと半立体的な映像は消える。側面から出ていたレーザーらしき光りも消えて、暗闇にステータス画面だけが残る状況となった。


「なんか、パッとしないなあの話じゃあ。それでもあんな化け物のいる場所にいれば、信じざる負えないけど……、って、うわっ!?びっくりしたぁ…」


 説明が終わり悲観的になっていた時、ブーブーとまたもやパスが振動を起こした。今回は手の上と言うこともあり、なんとかトカゲ野郎が目覚めることはなかった。緊張感だけはやばかったけどな。

 

 

 俺は安堵して振動したパスを見ると、裏面に同じように光るボタンがあるのを発見した。

 迷うことなくまた押してみる。それと同時に表側にあったステータス画面が消えて、裏の中央にあったレンズからまたレーザらしきモノが飛び出した。収束を繰り返し同じ様な画面を作り出す。



「アイテム覧みたいだな」

 新たに出てきた画面には合計20の枠があり、上にはアイテムポケットとでかく書かれていた。その中で4つが埋まっている。

 1つは初期ポーションA。もう1つは初期ポーションB。残り二つは、武器のようだ。簡易的に描かれた絵ではあるが、武器とアイテムの違いはわかりやすい。なぜなら武器なら武器と書かれているからだ。至って単純な仕様である。




「これもタッチすれば出て来るみたいだな」

 ポーションはおいておくことにして、武器の2つある内の一つに着眼点をおいた。その武器にタッチすると、画面の隣に新たな画面が現れた。



「初心者装備一式」

 画面の上部にはそう書いてあった。残りのスペースにはステータスのように、頭、腕、胴、足、などの各部位に分けられて装備の説明がされていた。防具はあれど残念なことに装備は無いようだ。それでもないよりはマシであるから、装備というボタンを探して装備することにした。

 一式装備できるボタンが在ることに気づいたのは、一つずつ装備した後だった。

 

 

 最初は重さで後ろに倒れそうになったが、ボス部屋だったことに気づき、急いで体勢を立て直した。

松明に一瞬火が点いたように見えたが、瞬く間に消えたところを見るとセーフだったようだ。


 この装備は青を基調としているように見える。見た目からして初期装備な感じはするが、弱そうには感じられない。ある程度頑丈にもなっているし、期待できそうな気がする。その代わりに、俺の服が消えたことは諦めるしかないようだけど。


「お、そうだ。もう一個武器があったはずだ。そっちはちゃんとした武器であって欲しいところだな」

 気になる気持ちが先走りして、もう一つの武器の枠を感情の赴くままに押した。補足だが装備すると画面も消えるようだ。よって新たに画面が現れる。


『BCグローブ』名前の覧にはそう明記されていた。

 謎の男のお手製武器。ランダムに配れた12個の中でもご自愛専一に造られた一品。パワーは計り知れない。ただ、HPを削らなくては発動しない曰く付きの品でもある。蓄えたHP×?倍攻撃力を持つとBCグローブの説明はあった。追記、この武器は譲渡不可能。


「うわぁ。頼みの綱までもがはずれか。こいつも俺と同じでガラクタだって事だな」

 武器のステータス画面を閉じて、俺は荒いため息を吐く他なかった。だが、一応装備だけはする事にした。気持ちの問題である。

 残る救いの品は初期ポーションだけとなってしまった。大方の予想はついているが、画面にタッチする事でステータス画面が現れた。そこに表された初期ポーションAの説明にははこう記されていた。

 

 

 HPをMAXにまで回復することが出来る。状態異常には効果がない。またレベル20を越えると、使用が不可能になる。と、まあこれだけだ。

 その後、初期ポーションBの説明も見てみたが、初期ポーションAとは真逆で、回復は出来ないがどんな状態異常でも治すことが出来る。レベル20を越えると、これまた使用不可になる。この内容から察するに、どちらも万能では無いのが伺えた。

 イラストの右上に100とあることから、双方のポーションを俺は100個ほど所持しているのだろう。


「よし。後は掲示板だけか」

 アイテムに対しての感情が失せてしまったのか--掲示板を探した。それから1分と経つことなくそれは簡単に見つかった。表(おもて)のボタンを押すと、掲示板機能が追加されました。と表示されると同時に脳内にアラーム音が流れ、新たに掲示板へのボタンがパスに搭載されたことを知った。その勢いでボタンを押すことにして、画面を作り上げた。

 

 

 そこには他生徒らの動けない自分の不甲斐なさ、或いは100層を制覇して帰還するために情報を求める者。そんな喜怒哀楽な感情が文字へと化けることで、第3者の目へと運ばれていた。見ていて切なくなるような言葉。早くもレベルが上がり、この世界をゲームと思いこんでしまっている愚鈍な奴らの喜びの言葉。



 俺の今の状況を知ればこの掲示板はどうなるのだろう。早くも分野ごとに分けられた会話のページが火を噴くのではないだろうか。いや、そうに違いない。自分より酷い人がいて初めて喜ぶ者も少なからず居るのは分かりきっている。


 この掲示板内の恐怖を占める割合はこの世界で死がついてまわることが大きいようだ。だが、別に現世の時には無かったのかと聞かれればあったと答えるのもまた一環であろう。何一つ命の価値については変わらないのだから。だからこそ、早くも危機的状況に陥ってしまった俺には、この世界に落とされた恐怖なんてものは感じられなかった。




「はぁ……、コメント入れたいな。でも一層じゃないから、意味ないだろうなぁ」

 どこまで深く見ても一層の情報求む。のような内容ばかりで俺は浮いている気がしてならなかった。58層のボス情報なんて流すだけ無駄だ。ゲームをそれほどやらない真也には、情報の必要性が分からなかった。





「お! 良いの発見」

 

 一人で面倒くさい風を装い、上の列から順に良さそうな内容を探していた時、流すように見ていた俺に、目に止まった一題を見つけだした。流れるように書かれた題名の数々の中から、反射的に目に止まったのがこの一題である。




NONAME

:支給された武器が手元に届いたんですが、これは数に制限がある物なのですか? 説明文を読んだところ、12個と書かれていたので結構レアな物なのでしょうか?


 この題を載せた人物は手元にある武器が自分だけなのかが知りたいのか。はたまた、レアな装備が自分の手元にあることを自慢したいのか。これを載せた人の心情を読みとることは不可能だ。それでも、俺には何か違和感があった。


 元々、俺はあの武器の説明を読んだときから一種類につき一つずつなのだと、考えていた。でないと、12個なんて意図的でない限り普通は書かないだろう。複数個同じ物があるなら、12種類と明記するはずである。俺ならそうするからだ。だが、これは間違っても見解であり私情的感情の導き出したものであることを、一応理解しておいて欲しい。意図的でない可能性を否めないからである。


 この題名に目が止まるのは俺だけでは無かったようだ。他のところも覗いていたが、この題材での返答は掲示板が出来て直ぐとは思えないほどの量だった。


NoName

:俺のとこにはきてない。

NoName

:私も。アイテム覧探してみたけどなかった。

NoName

:いや、俺なんて10秒おきにチェックしてるけど全然来る気配ないぞ

NoName

:すいません。恐縮ながら僕のところにはきました。なんか『無断絶の刃』って名前みたいです。

NoName

:はあ!まじでか。効果は? 効果は絶対あるだろ。

NoName

:うわぁいいなぁ。なんか名前からして強そうだよな。

NoName

:私も効果気になる。

NoName

:『無断絶の刃』の持ち主です。この武器の効果ですが、装備時にSPDとPOWがレベル×2プラスされる。倒す敵から得るSPDとPOWにボーナスがつく。この刀は分解する事が可能であり、2㎜までなら欠片にする事が出来る(装備者の意思にのみ反応)。分解された刃の欠片は、その状態でも操ることが出来る。でした。

NoName

:やばっ。凄すぎだろその装備。

NoName

:そうなの? 全然凄そうに見えないんだけど

NoName

:いや、ゲームだったらマジでレアもんだぞ。流石にその効果は。うわぁぁいいなぁぁ



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ