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一話 集団テロは突然に…

 ある学校の廊下で、男子生徒2人がしょうもない話を繰り広げていた。2人だけしかいないから、白熱しているわけではないが、周りでそれを聞いた人は間違いなく2度見して去っていくものだった。


「だから! どう考えてもその子の隣の方が可愛いって」


「いいや、どう考えてもあの子の方が可愛いに決まってる」


「わかった。だったら、話しかけてあの子のメアドでも、手に入れて帰ってこれるなら、認めてやる。真也になんて出来るわけないと思うけど」


 廊下で繰り広げられている争いはどうやら、どちらの女の子が可愛いか。というモノのようだ。この話の発端は前方に偶々作られた女子同士の輪を見つけたことだった。

 真也と言われた生徒がそれを、見かけた瞬間に、ボソッとあの子可愛い。なんて言わなければ、今頃教室に安全に着いていただろう。



「それとこれとは別だろ。それにメアドを貰ってくれば信じるんなら、今の段階でも信じれるって事だろ。ならもう可愛いって言えよ」


「やっぱり……、そう言うと思った。結局恐がっていかないんだよな真也はさ。だから毎回せこいんだよ」


「違うだろ。俺の方がどう考えても正論だし。それに、秋隆がナンパ得意だからその話を持ち出すんだから、お前の方がせこいだろ」

 俺こと、多広真也の通う学校の生徒は変と言われるが、全員が全員こんな馬鹿な訳ではない。この2人がとてつもなく馬鹿なだけなのだ。それもこの会話が教室に着くまで続くのだから周りで聞く者は、知らない振りをするのに手一杯な始末。元々広いこの学校は、教室までそれなりに距離がある。その間までこの口論は終わることを知らず続くのだ。



「はぁ。ならこれでいいか、秋隆が言った女子の隣にいた俺の言った女子の向かい側で欠伸していた男子の隣の席にいた女子が可愛いって事でいいのか」


 長い教室までの距離をひたすら語り合った後、ここで俺はそう言ってやった。元々よく話が広がってしまう俺達は必然的に結論がいつもこうなるのだ。良く第三者が聞いていて、お前らはどうなったらそうなるんだ。と言われる事が多々あるほどだった。



「よし、いいだろう。ってか、もしかしたら俺達の好みってほとんど同じなのかもな」


 おい! 最初までの俺達はどこに消えた? 秋隆はニヤニヤとした表情で態度を変えた。

ついでに今更だが、秋隆というのは宙我 秋隆といって今俺の目の前でニヤニヤしているイケメンのことだ。


「ならいつも通りトランプでもするか」

 なんだかんだ言って俺自身もさっきの話は本当にどうでもよかった。



「おう、そうだな。今日こそは絶対に勝ってやるからな」


「まだ、俺の方が2回分も負け数が多いのによくそんな事が言えるな。むしろ、その延びきった鼻をへし折ってやる」


「できるもんならやってみな」


 2人は良くやる挑発の掛け合いからトランプ遊びを始めた。その後はお察しの通り先生が来るまでトランプで遊び尽くし、勝敗に対してまたもや口げんかが始まってしまう。先ほどの二の舞になってしまっていたのは言うまでもなかっただろう。

 口論が終わってくらいだろうか、タイミングを計ったかのように先生が教室へと入ってきた。


「次は生徒総会だから、体育館に集まって下さい。今日は大事な人がくるから、サボらないようにしてくくださいね。この後すぐだから、準備が出来た人からすぐ降りてきて下さい」


 不思議なことに担任教師は入ってすぐであるのに、初めから息があがっていた。

 そして、有無を言わせないようにだろうが担任教師は開口1番にそれだけ言うと教室を早歩きで出てき、残された生徒は走っていった先生の後ろ姿を眺め始める。

 そんな不穏な動きを見せた教師だったが、いつもは反対にゆったりとしていて、気ままな人であった。だからだろうが、今さっきの行動はどこか別人のように思えて仕方なかった。


 その行動にこそ違和感は感じたが、全く気に止めることはせず俺達も、すぐに違和感のあった教師を追って教室を軽い気持ちで追いかけていくのだった。






「なあ、そう言えば今日の集会で何があるか聞いてるか?」


「いいや、そんな話はちっとも先生してなかったと思うけど」

 先週の時に集会があるのは聞いたのだが、内容までは聞いたかどうか覚えていない。だから秋隆に聞いたのだ。

 だがしかし、今思えばこいつ堂々とした面で言ってるけど先週の時、最初から最後まで寝てた気がするのは気のせいだろうか。

 終わったときに、ああよく寝た。と言ったのを覚えている。聞いてなんだが、信用が出来ない。

 その後、俺よりも人脈がある秋隆は良く周りから話しかけられていた。その度に聞かれていたのが、今日って何の話だっけ?と俺と同じ質問だった。当然人選ミスの秋隆は、先生は何も言ってなかったから分からないな。と返す。

 俺は言いたい。質問した人達よ気づいてくれ! こいつは先週寝てて何も聞いていないんだ!!




「あ、もう始まりそうだから戻るわ。また後でな」

 そう言って、秋隆の周りに出来ていた輪の中から、騙しに騙した嘘つきは帰ってきた。その時に秋隆の言ったとおり、本当に体育館の電気が消灯して、ステージのいつものポジションに校長先生が立っていた。

 

 そこで、校長はみなさん。こんにちわ。などと言って話の種を喋りだした。



「もう時間がないので早めに話を進めるけど、君たちは私の大切な生徒でありこの学校に在籍している誇り高い子供達でもある。それを踏まえてある人に今日は来て貰いました。名前は出せませんが、みんなに会いたいと言ってくださった方で、各学校を回っている有名な人です。ここからは静かにしてこの方の話を聞いて下さい」

 校長と言えば話が長いと評判なのだが、今日の校長は何故か話がスムーズに終わった。次ぎに話す人の脇役に徹しているのかもしれない。もしそうなら、その人はそれほどにまで凄い人な可能性がある。


 見れば分かることだが、いつもの来客の時よりも心躍る気持ちになっていた。


「誰が来るんだろうな」

 秋隆も気になっていたんだろう。ステージから目を離すことなく、不意にそう呟いた。


 俺もそれに返答したかったが、それよりも先に紹介された人物がステージ横から颯爽と出てきたことで返事は出来なかった。



 その人物は見慣れない格好をした男性であった。

 そいつ特徴と言えるとこは右手に何か光る怪しい棒状の物を持っているの事くらいだと思う。





「どうも、今先ほど紹介に上がりました者です。色々と事情がありまして、名前をお教えすることは叶わないのですが、聞いていただきたい。

 突然ではありますが、あなた方には他人と違うところがありますか? 私はその答えを知りたい。


 それを知るためならば、私はどんな手段をも使ってみせましょう。それが無関係なあなた方を連れて行かなければならないとなっても、私は手を抜くつもりは当然ありません。それこそが最善であると知っているから。

私の求めるものはすぐそこにあります。

そう。残念ですがこれから……あなた方をつれていがなければなりません。この意識の低い世界を捨て。こことはかけ離れた異世界へ……」

 

 いきなり現れてその男は変な妄想話を始めたと思えば、突然、両手を上げてポーズを極め始めた。


 ふっと思い浮かんでしまった疑問。

 なんで学校は素性の分からない奴を平気で入れたのか。どう考えてもこの人は怪しい。




「ついでに、そのことに対して説明をしなくてはいけないのですが、この学校が最後と言うこともありまして、時間がありません。よって、特別なな能力と防具をランダムに配るので、後は自力で頑張って下さい。それと最後に向こうで死んだ場合。こちらと同じように生から死へ。命は無へ還ることになります。その事を踏まえた上で命の限り頑張って下さい」


 男は意味の分からない事を満足げに話した後、右手に持っていた光る棒を地面に刺した。


「なあ真也。あれって相当やばいよな」


「ああ、多分学校はどっかの宗教に騙されてるんだろうな」


 最初の気になっていたドキドキはどこにいったのか、俺達は呆然とあの怪しい男をみていた。周りも本当に唖然として、こういった時には誰一人として口を開かなかった。




「では、いざ……」

 呆れられているなどつゆ知らず、男は刺していた棒の頭部をカチッと押した。するとあれほど静かだったこの体育館が奇妙な音でうねりをあげた。いきなりの出来事に、黙っていた生徒が驚きあわてて騒ぎだした。この光景を間の渡りにして平然と居られる者など、ここには居なかったのだ。





「異世界へぇぇぇぇ!」

 ニヤリと男は笑うと大きな声でそう叫んだ。馬鹿げた言葉だが、その言葉が現世で聞いた最後の言葉となる事を、消えゆく意識の最中に立たされている真也にも僅かに意識に刷り込まれる。


 そのまま、その男の言葉通りに俺達は神々しく放たれる光に飲み込まれて消えた。

 最後にまた、あの男が俺には笑ったように見えた。



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