新たな家族と謎の感触
祇梨清和と祇梨紗奈が応接室からなかなか出てこない。かれこれ祇梨蓮斗が外に出て10分はたった頃、暇を持て余すあまり掌の上に魔法を用いて絵を描く等の手遊びを始めた。だが、そんな時背後から突然話しかけられる。
望月「あの、今少しいいですか...?」
後ろを振り向くとそこには先程助けた望月凛が立っていた。なにか話がしたいのか祇梨蓮斗の隣に申し訳なさげにそっと座った。
蓮斗「どうかしたんですか?望月さん。」
望月「いえ、特に何も無いんですけど、、、改めてお礼を言いたいなって。」
蓮斗「お礼、ですか?」
望月「はい...えっと、さっきは危ないところで助けて貰って、ありがとうございます。もしあの時祇梨さんが助けてくれなかったら今頃どうなっていたか、、、考えるだけでも恐ろしいです。」
そう言う望月凛の体は小さく震えていた。無理もない、ついさっき知らない大人に連れ去られそうになったのだ。見た所望月凛はまだ中学生くらい。怖がるのは当たり前だ。
蓮斗「(こういう時ってどうやったら安心させられるのかな...)」
どうしようかと祇梨蓮斗が考えをめぐらせていると転生する前の記憶を思い出した。
蓮斗「あっ、、、」
気が付くと祇梨蓮斗は望月凛の頭を撫でていた。それに驚いたのか望月凛が此方に目を向けた。
望月「あの、どうして頭を撫でるんですか...?私、鬼人族なんですよ...?」
彼女が口にしたのは昔あった亜人種に対する差別から来るものだろう。だが、祇梨蓮斗はそんなくだらない事には興味が無い。逆にこの世界に来て様々な存在と触れ合えて嬉しいまである。
蓮斗「昔、こうやると泣いてた子供が泣き止んだ事があるんですよ。今の望月さんは不安でいっぱいでどうしたらいいか分からなくて私の所に来たのでしょう?」
祇梨蓮斗がそう言いながら優しく頭を撫でていると望月凛はポロポロと涙を流し始めた。とても小さく押し殺す様な泣き声が聞こえる。少しの間望月凛は泣き続けた。3分ほどして望月凛が自身の過去について語り始めた。
望月「私、前いた学校で虐められてたんです。その学校には私みたいな亜人種は居なくて...毎日この角を気持ち悪いって言われて、誰も助けてくれなかったんです。」
望月凛はとても辛そうに、途切れ途切れで話した。
望月「親はずっと前に死んじゃって私はずっと一人ぼっちでした。施設でも虐められて、もう嫌になって施設を飛び出したんです。行く宛てもなく飛び出しちゃって...どうしようって考えてたらあの人達に襲われて、もう終わっちゃうんだって思った時、貴方が助けてくれたんです。」
蓮斗「そう、だったんだね。」
正直望月凛の過去を聞いてとてもじゃ無いが祇梨蓮斗一人ではどうしようもないと感じる。でも、こんな少女がそんな理不尽な目に遭うのはあんまりだ。そう考えた祇梨蓮斗は必死に思考を巡らせ何か、何か方法は無いものかと長考した。その時話し合いを終えた祇梨清和と祇梨紗奈が応接室から出てきた。そこには東雲隼人と新島杏、荒山厳十郎も一緒に居た。その時祇梨蓮斗の中でひとつの方法が浮かんだ。
蓮斗「望月さん。貴女、私の家に来ませんか?」
望月「えっ?」
蓮斗「貴女の話を聞く限り、恐らくですが貴女はまた施設に戻ることになります。もしそれが嫌なら、もっと別な環境に行きたいと思うなら私の家に来ませんか?幸い私の家は幾つか部屋が空いてますし、亜人種に対して一切差別しないのが私の両親です。」
望月「で、でも、私なんかが祇梨さんのお家に行ったら祇梨さんに迷惑が、、、」
祇梨蓮斗にはこんな方法しか思い浮かばなかった。現代になり亜人種に対しての差別は少なくなったとはいえまだ風当たりが強いのも事実。だったら、そんな差別をしない場所に連れていけばいい。そう思った祇梨蓮斗は望月凛の頭から手を離し祇梨清和達の元へ彼女を連れて向かった。
蓮斗「新島さん。少しよろしいでしょうか?」
新島「え、はい大丈夫ですよ。」
蓮斗「望月さんってこれからどうなるんですか?今話を聞いたら両親が居ないとの事ですが」
新島「そうですね、一般的な流れで行けば望月さんはこれから施設に入ることになりますね。」
「施設に入る」その言葉で祇梨蓮斗の服の裾を掴んでいた望月凛の手に力が篭もり、僅かではあるが震えが強まる。やはり、見逃せない。そう思った。
蓮斗「我儘を承知でお願いします。望月さんを私の家に迎えたいんです。」
5人「えっ!?」
全員が声を揃えて驚いた。当たり前だ。いきなり子供がそんなことを言い出したのだ。正常な大人なら驚くのは必然だ。
新島「ちょっと待って、蓮斗君。いきなりどうしたの?どうして望月さんを蓮斗君の家に迎え入れたいって思ったの?」
清和「そーだぞ蓮斗。いつものお前らしくもない。どうしたんだ?」
新島杏と祇梨清和が訳を聞いてくる。祇梨蓮斗は望月凛悪辣な環境から助けてあげたい、そう思った。だから訳を隠す事無く話した。
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清和「なるほど、そういう事ね。」
紗奈「蓮斗、あなたは本気でその子を助けたいと思っているの?」
全員が納得する形になる様祇梨蓮斗はさっき知った事を全て話した。それは望月凛を悲しませてしまうかもしれない。だが、祇梨蓮斗は転生する前は1人の親だった。だからこそ子供がたった一人で不幸に呑まれるのは見たくない。無責任と罵られて仕方ないと祇梨蓮斗自身思う。だからこそ祇梨蓮斗はその場に深々と頭を下げた。
蓮斗「もし望月さんの事でお金がかかるというなら私が働いてお金を稼ぎます。何かあれば私が責任を取ります。ですから、どうか.....!!!!」
紗奈「良いわよ。」
蓮斗「へっ?」
祇梨蓮斗は祇梨紗奈の返答に聞き素っ頓狂な声が出る。だがそれもお構い無しと言わんばかりに祇梨紗奈は毅然とした表情を浮かべていた。
蓮斗「母さん、良いんですか...?自分で言うのもあれですが、私すごい無責任な事言ってたんですよ?反対されるとばかり、、、」
紗奈「反対なんてしないわよ。蓮斗がわざわざ頭下げたんですもの。それ以上の理由入らないわ。」
清和「そーだな。それに女の子が一人増えたところで俺が養ってやれる。父さん舐めるな〜。」
そう言い祇梨清和も笑った。それを見ていた望月凛が祇梨蓮斗の両親に疑問を問い掛けた。
望月「あの、お二人は、私の事が気持ち悪くないんですか...?私は皆さんと違って角が生えてるんですよ...?」
その質問は望月凛が今までどのような事を言われ続けたのかを表していた。だが、祇梨清和と祇梨紗奈はその質問をされた後目線を合わせ小さく笑った。
紗奈「ねぇ凛ちゃん。この世界には色んな存在がいるんだよ。霊に妖怪に神様。私はそんな存在達に沢山あった事があるの。姿は色々だし、人型じゃない者だって居た。でも全員生きてるの。だからね、角が生えてても生えてなくても何にも変わらないの。その角はあなたの個性。何も恥じることは無いわ。」
そう言い祇梨紗奈は望月凛を優しく抱きしめ、微笑みながら頭を撫でた。望月凛は今まで一人で生きてきて、抱き締められたのが初めてだったのか声を上げて泣いた。それは今まで得られなかったモノを初めて貰い溢れた感情。そんな彼女を見ていると祇梨清和が2人に近づきこう言った。
清和「我が家へようこそ。望月凛ちゃん」
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望月「ありがとうございます。蓮斗さん。」
蓮斗「いやいや。私は何もしてないよ。でも、これからよろしくね、凛ちゃん。」
望月「はいっ!」
望月凛はそう、とても明るい笑顔で言った。
蓮斗「ようやく全て終わったなー。少し疲れた。」
そう言いながら前髪が目にかかっていたので手で髪を後ろにかき上げた。
蓮斗「...?」
その時手に何かが当たった感触があった、ような気がした。




