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チャット相手は異世界の女の子、転移失敗で俺のPCの中へ  作者: 約谷信太
第二章 厄災編

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012 ティオside ドラゴン襲来その4 ~決戦~

 疾風のごとく通路を駆け抜け、その勢いのままに扉を開け放つ。

 大きな音と共に開いたドアの隙間から、私とマリア姉は研究室に転がり込んだ。


 ここまで簡易指令室からジャスト五分。有言実行にして自己ベスト更新の記録だ。普段であれば『廊下を走るな』と、説教待ったなしの事案である。


 研究三昧で運動不足の肺が、悲鳴を上げながら酸素を取り込む。呼吸が苦しすぎて、すぐに声が出ない。

 同じ距離を並走してきたはずなのに、呼吸一つ乱れていないマリア姉は、見かけによらず体力おばけだ。私は死にかけているというのに。


「ゲホッ……ゴホッ……マ、マリア姉……とり……あえず……集めてきてほしい……ものが……ハアハアハア……オエッ」


「任せてください。ティオ様はその間に少しでも呼吸を整えてくださいねぇ」


「そうするよ……。で、集めてもらいたいのは、直径8cm、長さ15cmで螺旋状の円錐でミスリル製。次に直径6cm、長さ60cmで表面に刻印がびっしり刻んである丸い棒、これもミスリル製。それと直径2cm、長さ20cmに加工した円柱状の魔石を二つ。あと――」


 私は素早く、続けざまにパーツの説明をする。

 その一つ一つの指示に頷きを返しながら、マリア姉は淀みない動きで部屋の各所から部品を探し出していく。

 その姿を横目に見ながら魔道具組み立ての工具を準備している私は、会敵予想時刻を計算し、安堵の息を吐いた。


 今回の作戦にあたり、不幸中の幸いだったのは、ソフィーが外へ避難せずに城へ戻ってきたことだ。

 王女を戦場の最前線に引っ張り出すという最大の欠点にさえ目を瞑れば、おかげで試作兵器の使用が可能となった。

 そして付き添いのマリア姉も戻ってきたことで、このガラクタまみれの研究室から必要な部品を素早く集めることができる。

 普段から研究室の片付けをしてくれているマリア姉は、私よりもこの部屋の配置に詳しい。私一人では時間内に全ての部品を探し出すのは無理だったろう。

 最後にツバメさんも戻ってきた。

 彼女は騎士団員の中で、王女付きの護衛に選ばれるほどの随一の腕前だ。ドラゴン相手ではやや心もとないが、それでも彼女がいてくれれば成功率は僅かでも上がる。


「これで言われた部品は全部のはずですけど、他に必要なものはありますかぁ?」


 手を動かしながら、作業台の上に広げられたパーツを頭の中で照合する。


「……うん、これで全部だよ。ありがとうマリア姉、あとは大丈夫」


「では、それが組み上がるまで待機してますねぇ」


「いや、マリア姉は国王陛下と一緒に少しでも安全なところへ。あとは私たちが何とかするから」


 その時、空気が変わった感覚に無意識に顔を上げた。


「それは出来かねます」


 そこには、薄く目を開いたマリア姉の姿があった。バッチリと目が合い、思わず手が止まる。


「……いやいや、だって今からこの城は戦場になるんだよ!? 避難しなけりゃ危ないでしょ!」


「貴方達はその戦場に赴くのでしょう? 今は一人でも戦力が欲しいはず。私も学院時代に戦闘訓練は修めています」


「いやでも――」「それに」「……ぃ?」


「組み上げた試作兵器は少なくとも15kg以上あると思います。貴方はこれを持ったまま屋上まで走れるのですか?」


「うぐぅ!?」


 痛いところを突かれた。

 確かに横方向の移動でさっきの有様だ。重りを持った状態での縦移動は非常に厳しい。

 作戦時間に間に合わないどころか、開始場所へたどり着けない可能性すらある。

 組み立てに意識を取られて『運ぶ』ことが頭から抜けていた。どうやら私もそれなりにテンパっていたようだ。

 そして、マリア姉の体力ならば、きっと苦もなく屋上まで駆けられるだろう。


「それに、妹分たちが命を懸けているのに逃げる姉はいません。先ほどソフィーリア様が仰っていた通りです」


 そう言って、彼女は微笑む。

 どうやらさっきから少し怒っているのは、『自分だけ逃げろ』と言われたからのようだ。


 それにしても、『逃げるな』と言われたならまだしも、『逃げろ』と言われて怒るなんてね、と苦笑いが漏れる。

 確かに私が試作兵器(これ)を抱えて走るのは現実的にきつい。作戦成功のためにはマリア姉の力が必要だ。


「……はあ、分かったよ。じゃあマリア姉、これを屋上まで運んでくれる?」


「ええ、もちろんですぅ。他にはありますかぁ?」


「組み立てはもう一分もかからないし、あとは別に……」


 そこまで言いかけて、ふと机の上にある通信機が目に入った。

 特に意味のないことだったが、何となく第六感ともいうべきものが頭の中で囁いた。


「……マリア姉。通信機を紐か何かで、机から落ちないように固定しておいてくれる?」


「通信機を、ですかぁ? ……わかりました。すぐにやりますぅ」


 一瞬疑問を浮かべたが、マリア姉はすぐに動いてくれた。





 そして――本当にただの勘だったこの行為が、後に私達四人の命を救うことになる。





「よし、完成! マリア姉、そっちは!?」


「こっちも固定し終わりましたぁ。貸してください、すぐに運びますぅ」


 ここまでジャスト五分、想定通りだ。

 マリア姉に試作兵器を預け、私も共に駆け出す。

 

 研究室を飛び出し、通路を駆け抜け、階段に差し掛かったとき、不意にマリア姉が薄目で言った。


「ところでティオ様。自分の研究室なのに、どこに何があるか把握していないのは良くありませんね?」


「本当にごめんなさい!」


 思わず階段で躓き、スッ転んだ。マジで怖い。下手をすればドラゴンよりもだ。きっとソフィーもこのマリア姉を見たら、皆を見捨てて逃げ出すだろう。

 今度からもう少し気を付けようと思った。あくまで『思った』だけだが。


 その謝罪にニッコリと微笑むと、マリア姉は疲労と恐怖で膝をガクガクさせる私をひょいと肩に担ぎ、再び階段を駆け上り始めた。


「えええ!? うっそでしょマリア姉! その体のどこにそんな力があるの!?」


「女性の体は不思議がいっぱいなんですよぉ」


 世の中、不思議なことだらけだ。




――――――――――――――――――――




「来たか、ブルーベルベット!こっちだ!」


 肩に担がれた状態で数分、屋上に辿り着いた時には、すでにグラム室長の姿があった。


「グラム室長!そちらの準備は!?」


「ほぼ終わっている!お前さんたちが最後だ!つうかお前さん、どんな状況だよ!?」


 私はマリア姉に荷物のように担がれ、お尻を向けた無様な格好で返事をする。


「気にしないでください。それで、状況と作戦はどうなっていますか?」


 私たちの状態にグラム室長は目を白黒させ、『気にするなって言っても無理だろ』と呟いていたが、聞こえなかったことにする。


「ちょうどさっき伝令が来た。生き残った砦の兵たちは地下壕への避難を開始。その後、数名の騎兵が囮となってこちらへ誘導し、城壁から音響魔道具でドラゴンの注意を引きつけ、テラスまで誘い込む。最後は騎士団員が壁になり、至近距離からソイツを叩き込んで終わりだ」


「なるほど。成功したら奇跡でラッキー、というレベルの作戦ですね」


「そもそも、百名の戦力でドラゴンを撃退すること自体が奇跡なんだよ」


「第一騎士団は王国最強ですが、少数精鋭な分、他の団より人数が少ないですからね……」


「仕方がない、今いる面子でやるしかないからな。……とりあえずテラスまで移動するぞ!」


 グラム室長と共に、再び私たちは駆け出した。


 東棟の屋上から王城本館のテラスへと続く連絡通路を、マリア姉は左手に試作兵器を抱え、右肩に私を担いで疾走する。私の体重くらい、彼女にとっては苦にならないらしい。

 この通路は直線で百メートルもないが、体力に自信のない私は、作戦前の消耗を抑えるため、そのままマリア姉の厚意(?)に甘えることにした。

 ……決して、楽を覚えたわけではない。


 並走しているグラム室長は、隣でさっきから目を丸くしている。


「いやはや、凄いですな。騎士団の訓練も軽くこなせそうな体力だ。……それで、シルヴァランス殿は避難しなくていいのですか?」


「はい。ソフィーリア様とティオ様を置いて避難はできませんからぁ。それに、私も基礎訓練は受けていますのでぇ」


「立派ですな。ったく、魔導研の連中も見習ってほしいものですよ」


「……?何かあったんですか?」


 グラム室長の苦虫を噛み潰したような表情に、疑問を覚える。


「……実はな、ドラゴンをこの城で迎え撃つと聞いた魔導研の連中の半数が逃げやがった。さっきの第四の奴もだ」


「えっ!?貴重な魔法要員なのに……っていうか、王女自ら戦場に立つって言っているのに!?」


「全くだ。頭でっかちばかり採用した弊害だな。有事の際に当てにならん。あの玉無し共が……。玉がない奴らは逃げないっていうのに……」


「グラム室長、それセクハラです。私以外には言わない方がいいですよ?」


 私の指摘にハッとして苦笑いをする。どうやら無意識に愚痴が漏れていたようだ。


「いや、すまんすまん。ついな。今後は気を付ける……。――おっと、間に合ったか」


 テラスに到着すると、すでに騎士団員が北側に向けて防御陣形を敷いていた。その他にも、本職ではないとはいえ、魔法が使える魔導研の残留組がいる。


 寄せ集め感は否めないが、これが王城を守る最後の戦力だ。


 周囲を見渡していると、太い声が響いた。


「グラム!ブルーベルベット!来たか!準備はどうだ!?」


「はい、おかげさまでこの通り間に合いました。あとは作戦を成功させるだけです」


 近付いてきた司令官に試作兵器を見せると、彼は満足げに頷いた。


「よし。砦からの最終通信から計算すると、襲来まで十分もない。すぐに試作兵器(それ)の最終調整をしてくれ。……それとお前、どうした?怪我でもしたのか?作戦の要なんだぞ」


 マリア姉に担がれたまま受け答えをする私を見て、司令官が不安そうに尋ねる。

 まあ、突っ込むよね。マリア姉がそっと地面に降ろしてくれた。


「問題ありません。体力を温存するために運んでもらっただけです」


「ならばいい。お前とソフィーリア王女は隊列の最後尾で狙撃態勢のまま待機。前面は私とクロディアスで守る。必ず守り切るから、お前たちは当てることだけを考えろ」


「了解しました」


 頷きで答えると、この城で最も聞き慣れた声が響いた。


「ティオ!」


 テラスの出入り口からツバメさんを伴い、ソフィーが駆け寄ってくる。

 服装は、白い長袖とハーフパンツに黒いインナー、急所を覆う軽装鎧の上から黒いローブを羽織っている。学院時代のソフィーそのものの姿だ。

 彼女もここまで走ってきたはずなのに、なぜか息が全く乱れていない。王女のくせに私より体力があるのは少々納得がいかない。


「よかった、間に合ったんですね」


「…………………」【これで全員そろったね( ´∀`)】


「マリア姉のおかげでなんとかね」


 安堵の息を吐くソフィーと、相変わらず視線が賑やかなツバメさんが合流した。


「予想はしていましたが、やはりマリアも来たのですね」


 ポツリとソフィーが零した。

 親しい者を危険な場所に居させてしまうことに、思うところがあるのだろう。


「ソフィーリア様のお供をするのが私の役目ですからぁ」


「こんなところまで付き合う必要はありませんよ?今からでも避難を――」


 その言葉を私が遮る。


「ソフィー、それさっき私も言ったけど、マリア姉を怒らせるだけだからやめときなよ」


「え゛っ?」


『怒らせる』という単語に反応して固まるソフィー。順調に恐怖が刻み込まれているようだ。気持ちはわかる。今、一瞬だけ目が開いたのが見えたし。


「同じことを言った私が言うのもなんだけど、きっとみんな、逃げなかったと思うよ?だから今は『力を貸して』でいいんだよ」


 マリア姉とツバメさんが力強く頷く。

 その言葉に目を丸くしたソフィーは、やがて仕方がないとばかりに微笑んだ。


「……そうですね。なら、私から言うことは二つだけです。この国を守るため、力を貸してください。……そして、絶対に死なないでください」


「「もちろん!」」【もちろん!ヽ(`Д´)ノ】


 皆の心が一つになる。無茶だろうと、必ず成功させる。


「よし、時間がないから準備を始めるよ。マリア姉、それ貸して。ソフィー、ちょっとここを押さえてて」


 筒状の発射装置から、短いランスにも見える弾体を取り出し、安全装置を解除する。

 ソフィーに筒を固定してもらい、慎重に装填し直す。これで魔力に反応する準備が整った。


「これで準備完了。ソフィー、じゃあ説明するよ?」


 ずっしりと重い筒を持ち上げ、後方をソフィーに持ってもらう。

 一人では重いが、二人なら安定して構えられそうだ。


「私が前方、ソフィーに後方の魔法陣を担当してもらう。私の手元に刻んであるのが『引力』の魔法陣で、ソフィーの手元が『斥力』の魔法陣。そこに魔力を流し込めば発動して、弾が射出されるから」


「それなら、ティオでも魔法が発動しますね」


 説明に頷きながらの王女(ソフィー)の余計な一言に、私は顔を顰めた。


「うっさいよ。そもそも私でも魔法が使えるようにって、魔導工学に進んだんだからそりゃそうだよ」


「ふふふふ」


 緊張感がないなこの王女様は。というより、いつも通りのやり取りで緊張を解こうとしてくれているのかもしれない。


「……続けるよ。目一杯に高めた魔力を一気に魔法陣へ流し込む。その時流した魔力量で威力が変わるから、とにかく全力で。私は多少余力があるけど、ソフィーの魔力量でギリの計算だから」


「込めるタイミングは?」


「二人全く同時。僅かにでもズレると威力は激減するから呼吸を合わせて。誤差は0.5秒以内」


「なら大丈夫です。私とティオで合わなければ、誰がやってもきっと合いません」


 お互いに笑い合う。ドラゴンに私たち親友の、阿吽の呼吸を見せてやるとしよう。


「説明は終わったか?ならソフィーリア王女とブルーベルベットは私とクロディアスの後ろへ。いつでも撃てるように準備をお願いします。……あとシルヴァランス、お前も参戦するのだな?ならば――」


「それならコレの手伝いをしてもらっていいですかい?」


 司令官の言葉を遮り、グラム室長が一抱えもある魔道具を運んできた。

 40cm四方の筐体とラッパ状のパーツがコードで繋がっている。見るからに重そうだ。


「グラム室長、もしかしてそれ……」


 見覚えのある魔道具を『ゴトン』と床に下ろし、腰を叩く室長に尋ねると、案の定の答えが返ってきた。


「おうよ。お前さんの考えている通り、城に備え付けてある都市放送用の音響魔道具だ。部下に外して運んでおくよう指示しておいたんだ」


「指示出し用ですか?」


「いや違う。コイツのリミッターを外して、指向性を持たせた音をドラゴンにぶつける。魔法師団も居ない今、遠距離攻撃が大した効果のない弓矢ぐらいなら、コイツの方がまだドラゴンに効果があるだろ」


 説明に一定の納得はできるが、問題もある。


「確かに備え付け用は出力が段違いですけど……これ、すごく重いですよね?」


「軽量化を度外視した造りだからな。60kg以上はあるはずだ」


 以前、数人がかりで取り外した際、あまりの重さに閉口した記憶がある。

 これを戦闘中に持ち運ぶとなった場合、ドラゴンに襲われたら逃げようがないし、下手に持ち上げると腰をやりそうだ。


「本当は騎士の誰かに運んでもらうつもりだったんだが……。シルヴァランス、お前さんなら、もしかしてこれを持てるか?」


 グラム室長が無茶を言い出した。女性にする質問ではない。

 ソフィーもさすがに無理だと思ったようで口を出そうとしたところ、『大丈夫ですよぉ』の声と共に筐体が持ち上がった。


 その光景に、周囲の動きが止まる。 絶句。絶句。絶句。絶句


「このくらいなら、問題ありませんよぉ」


 普段通りの声を出しながら、片手で筐体を持ち上げるマリア姉。

 提案したグラム室長すら固まっている。私を担いでいた姿を見ての質問だったのだろうが、片手は想定外だったらしい。


 ソフィーと目が合う。

 お互いの顔色がみるみる青くなっていくが、何を考えているかは一目瞭然だ。

 次にマリア姉を怒らせたときの想像をしているに違いない。下手をすると精神的どころか物理的にも死にかねない。


 私たちは視線を合わせるとお互い同時に頷いた。


『本当に気を付けよう』


 作戦を前に新たに気持ちが一つになった瞬間だった。



「……っと。いや、その……お前さん凄いな、片手で持ち上げるなんて」


「いえぇ。普段から城内の掃除などで力は使いますからぁ」


「……そういう問題じゃない気がするが。まあ、嬉しい誤算だ。シルヴァランス、お前さんは俺とこいつで牽制を担当してくれ。……構いませんか、司令官殿?」


「え?……あ、ああ、分かった。それで構わん。では、もうすぐ想定時間だ。全員、配置に就け!」


 司令官の号令に、騎士隊が盾を構える。

 直後、外壁の監視員から通信が入った。


『見えました! 北方より飛来する影あり!』


 テラスに緊張が走り、私も筒を握る手に汗が滲む。

 正真正銘、学院の野外実習以外での初めての実戦だ。


「よし!作戦通り、外壁の音響装置を最大音量で起動!――作戦開始!!」


『了解!作戦を開始!……スゥ……こっちだぁ!!トカゲぇ野郎ぉおおおおお!!!』


 息を吸い込む音がした後、通信機から爆音のような声が響いてくる。

 外壁の外側、ドラゴンへ照準を合わせて叫ばれた声は直撃したようで、ドラゴンの意識はこちらへ向き咆哮と共に近付いてくるのが分かった。


 ――グオオオオオオオン――


 風に乗り低い唸り声が耳に届いてきたころ、テラスからもその姿を視認することができた。


「よし!城壁の隊員は撤退、姿を隠せ!グラム!ヤツが城壁を超えたら、今度はその音響装置(それ)でこっちに注意を引き付けろ!」


『了解!』「了解!」


 通信機を挟み声が重なり、コードが伸びたスピーカー片手にグラム室長がタイミングを計る。

 そして、厄災が城壁に到達したとき、最後の作戦が始まった。


『スゥ…そのままぁ!こっちにぃ!きやがれぇぇえええええ!!!!!』


 スピーカーの根元部分に括りつけられたマイクに向かい、渾身の叫び。

 指向性を持たせているとはいえ、至近距離での爆音に鼓膜が震える。

 そしてそれに答えるように、猛烈な咆哮が返ってきた。


 全身を紅蓮の鱗に覆われ、二本の角を生やした15m近い巨体が、翼を唸らせ迫る。

 その爬虫類の瞳孔は、明確にこちらを射抜いていた。



 ――フレイムドラゴン、襲来。

読んでいただきありがとうございます。


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※読み切りでコメディ寄りのラブコメ、【下駄箱を開けたらパンツが入っていた】を投稿しました。


よければそちらも読んでみてください。




~あらすじ~


朝、登校した俺の下駄箱には何故か女物の下着が入っていた。


そしてその日水泳授業中に起こった女子生徒の下着盗難事件。


学校一斉に行われる持ち物検査。


俺のバッグの中には今朝の女物のパンツ。


二つの事件が重なった時、混乱の教室内で告白劇が始まる。

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