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カオスフィア戦記 〜 クリストフ先生の魔導物理学講座 〜  作者: 麺樽豆腐


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11/11

事故調査報告書

xxxx/xx/xx

事調丙第xxxx号


宛:界務省次元管理局長 殿

参:治安維持庁警備局長 殿


発:次元間事故調査委員長  


  箱庭崩壊事故に(かか)る調査報告について(終報)


 見出しの件について、以下のとおり報告する。


           記


1 事案概要

 民間委託した多重世界動座観測ネットワーク(管理番号xxxxxx。以下「ニワトコ動座」という。)において、原生世界観測中の箱庭(ノード)が、突如光化崩壊を起こしたもの。


2 被害状況

 (1) 当該箱庭は次元外殻を残して光化消滅した。

  鑑識解析(フォレンジック)の為に復旧を試みるも、極一部の記録情報(ログデータ)を読み取ることが出来たのみ。


 (2) 箱庭管理者の写し身(アバター)は内部の意識体情報を含め消失。

  予備複製体にて復活した当人には事故当時の情報は、消失時の恐怖を除き、一切復元されていなかった。


 (3) 動座視聴していた分霊達の数は不明。

  当時動座していた可能性の高い該当箱庭の常連に聴取した所、おなじく事故当時の情報は保有していなかった。


 (4) 事故発生時から32秒の間、次元間動座が不可能となるレベルの時空乱流が発生。

  その後もしばらくの間、不可解な重力波が断続的に発生した。


3 調査状況

 (1) 破壊規模

   唯一残存している次元外殻を精査したところ、該当箱庭の崩壊につながるエネルギーは第三類危険指定級(超新星爆発以上準ビッグバン未満)と推定された。

   特筆すべき点として、概念領域が光・無・虹の順で念入りに塗りつぶされており、復元は困難を極める。


 (2) 犯行声明

   事案発生から48時間以内に『共産趣味者倶楽部』『昂進教祖のつどい』『アナーキスト同盟』の3団体から犯行声明が発信された。

   ただし、いずれの団体もテロ等危険行為の実績はなく、便乗愉快犯と推定される。


 (3) 犯行準備等の痕跡

   ニワトコ動座事務局より任意提出を受けた箱庭間物流ログを調査するも、説明できないような物資の移動、劇物等犯行につながる痕跡は発見できず。

   したがって、テロ等事件の可能性はごく低いものと思料。


 (4) 動力源暴走の可能性

   当該箱庭の存在動力源はウィザーズカーペン社製花園式生命転換炉構築キットを管理者自身が組み立てたものを使用していた。

   組立状況は動座配信されており、これを精査したところ、メーカー推奨組立手順を逸脱することはなく不適正稼働等からくる暴走の可能性は低い。

   また、管理者および常連視聴者からは他に動力炉は存在しないと証言を得ている。


 (5) 観測先世界の比定

   粘り強く鑑識解析(フォレンジック)を進めたところ、事案発生当時に観測していた世界の接続コードの一部が判明した。

   欠損があるため時空間位置はおおまかにしか判明しなかったが、その範囲で文明レベル・技術レベル・魔導レベルを計測すると、原生世界保護法における保護対象世界と判明。


 (6) 目撃者の可能性

   さらに調査を進めた結果、事案発生時点で原生世界側の何物かと接触していたことが判明した。

   当委員会はこの対象を調査する必要があると判断、調査対象(ターゲット)Xと仮称することとした。

   Xが原生世界に潜伏している高次存在共同体(コミュニティ)からの追放者であった場合はXによる犯行を否定できない。

   またXが原生人類であった場合は啓示、交神等原始的なアクセスを行っていたと推測され、いずれにせよX側に何らかの情報が残っている可能性が指摘された。


4 原生世界保護団体

 当委員会が公表した中間報告書をうけ、複数の原生世界保護団体から安全性の担保や保護管理体制についての抗議が多数寄せられた。

 その内、一部過激団体が当該箱庭跡地に強行突入し抗議デモを実施した。

 結果として、保全していた調査環境を乱され調査継続を困難なものとした。


5 調査打ち切り

 調査の進展に伴い、当事案が当委員会の職分を超えている可能性が浮上。

 同時期に原生世界環境保護委員会ならびに治安維持庁追放者管理局より調査巻き取りの申し入れがあった。

 別途社会的反響の大きい事案(無許可方舟操業による転覆事案)があることから申し入れを受け、現時点で考えられる原因を併記することとした。


6 原因と再発防止策

 原因となる可能性があるものおよびその対策案を列挙する。


 (1) 観測地点多重化に伴う接続先誤り

   該当箱庭の動座記録を確認する範囲では、管理者は単一視点での配信を主として行っているものである。

   しかし、稀に多重化視点での配信を行うことがあり、この際慣れない接続に苦慮しているさまが窺える。

   ここで、視点を追加する際の座標指定を誤り、超新星爆発現場の至近に視点追加したことで、星の消滅エネルギーが反響し当事案が発生した可能性がある。


   再発防止策としては、ニワトコ動座配信者に多重視点接続講習を受講させることとする。


 (2) 分霊による危険物持ち込み

   動座視聴のために送り込む分霊に関しては、精神体であることもあり特段の制限はかけていない。

   しかし、分霊の権能によっては危険物の具現化は不可能ではない。

   遊び気分で複数の分霊が生成した劇物が混合して当事案が発生した可能性がある。


   再発防止案としては分霊の権能持ち込み制限を検討する。


 (3) 追放者による破壊行為

   調査対象(ターゲット)Xが追放者の中でも重犯罪者であり、接触してしまった管理者から存在が発覚するのをおそれ、箱庭ごと破壊することで隠滅を図った可能性がある。


   この場合の管轄は治安維持庁追放者管理局となる。


 (4) 原生世界環境保護委員会の誤爆

   巡回監視中の原生世界次元パトロール艦隊が当該箱庭を認知した際、密漁等を目的とした不適正接続者と誤認し攻撃した可能性がある。


   この場合の管轄は原生世界環境保護委員会となる。


7 所見

 当事案の発生したエネルギー(超新星爆発以上)に比して、被害が箱庭ひとつという局所に収まったのは、ニワトコ動座による箱庭管理規定がしっかりと機能した表れであり、危機対応としては特に問題ないと思料する。

 管理者についても、正確な原因は不明ながらも想定されるどの状況においてもそこまで重度の過失は認められず、管理世界接続免許停止措置(講習にて期間短縮)が妥当と考える。


 しかしながら、別添資料のとおり、深入りするにはリスクが大きいことを予見させるものがあることから、この事案には単なる過失事故では終わらない可能性があり、追放者管理局・原生世界環境保護委員会ならびに周囲の思惑が入り混じった高度な政治的事案の可能性を捨てきることはできない。

 

 同時期に発生した方舟転覆により、希少な原生生物を数多く喪ったという言語道断な事案に手を取られたとはいえ、精密な調査を行えなかったのは痛恨の極みである。



担当:界域航行第二課 動座事故担当補佐 XxxX XxxxX



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