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12.雨が女を変える時?

 

 召喚以来、雨は降ってもちょびちょびだった。だから心構えも備えも足りなかった。

 今日は朝からびちょびちょだ。


 藍は、テントは防水らしいけど、あまり激しい雨や梅雨のような雨季には耐えられないだろうなー、とぼんやりと外を見ていた。すでにパソコンはジップバッグに二重に入れて上からチョコの空き缶を被せている。ベッド代わりのビーズクッションは布団圧縮袋に入れて防水している。


「ねえ、メイ姉さん、この雨いつ止むのかなあ」

『さあねえ』


「テントの防水が耐えきれなくなって、雨漏りしたら嫌だよね」

『そうだねえ』

「どうしたらいいと思う?」

『さあねえ、上からもうひとつ大きいテントを張ったらどうかねえ』

「ああ、そうか、ターフでもいいよね、少しは耐えられるかなあ」

『そうだねえ』

「今やったらずぶぬれになるよねえ」

『ああ、やめておきな、風邪ひいても医者はいないよ』

「うん……。獣医さんもいないねえ」

『ああ、そうだねえ』


 人間って、何て無力なんだろう……猫も。


『藍、本当に怖いのは雨より風じゃないかい』

「風邪はそりゃ怖いけど?」

『ビュービュー吹く風の方だよ」

「あ、そうか、台風とかだったら、テント全部飛んでいくね」

『ああそうだね、飛んで行っても藍ならまたすぐ買えばいいと思うだろうけどね』

「まあね」

『問題は、飛んでいった先でテントを見つけた人が、これは何だと、どこから来たか探しに来る方だよ』


「あ」

『みつかるねえ、エッシェンフォルゲン少佐に』

「うわーーー」

『変な情報はたぶん軍の情報部とかに把握されちまうんだよ、軍事国家の情報部は怖いよぉ』

「CIAとか、モサドとか、MI6とか?」

『そんなお上品なもので済めばいいけどねえ。表に出る程度のものは大したことないんだよ、常識さ』


 メイ姉さんは、さすが大日本帝国を庶民として生きた人、軍事国家の体質を体感している。

 いや、ここが軍事国家かどうかは未だ不明なんだけどね。


「うわー、うわー、うわー、どうしよう。あのサド目少佐の前に引き出される?」

『責任者みたいだしねえ』

「ねえ、メイ姉さん、帰りたくない?」

『それができないからここにいるんだろ』

「う、うん」


 藍は、帰る努力は特にしていなかったから、ちょっと恥ずかしかった。メイ姉さんはいろいろ考えているんだなあ~。


 そして藍は、再び努力する気になったのだった。

 雨降って努力再開~。いや、三年醸成ヒッキーに多くを望んではいけない。まだ本気出していない、とさえ思ったことはなく、最後に本気出したのが入社面接試験のためのリクルートスーツ選びだった、というほど、努力は底のさらに深みから引っ張り出さなくてはいけないのだから。


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