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11.夢に訪れるエッシェンフォルゲン少佐

 

 相変わらず軍人さん(かな?)の怒鳴り声で目を覚ましていたが、まあ、目覚まし時計の代用だと思えば、思えないことも……思えるわけないけど、止められないので仕方がなかった。


 朝見る夢は少しずつ違い、藍とメイ姉さんは毎朝、さっき見た夢について話をした。


「エッシェンフォルゲン少佐、って呼びかけられてたよね」

『ああ』

「少佐って? エライ?」

『さあ、どうだろう、パソに聞いてみたらどうだね?』

「あ、そうか、同じとは限らないけど、じゃ、ま」


「えーっと、少佐って、士官って階級らしいよ。

 えーっと、兵が二等兵、一等兵、上等兵で、その上が下士官で、伍長、軍曹、曹長ね。そうかケロちゃんってただの兵士じゃなかったんだね、軍曹って下士官だったのか~」

『あたしの父親も軍曹だったらしいよ、死んだとき』

「そうだったのね、新兵訓練とか曹長の補助とか、分隊を率いて戦うとかそういう役目みたいだね」

『そうか、父はがんばってたんだねえ』


「士官は下士官の上で、準士官、尉官、佐官、将官で、少佐ってのは、佐官だね。上からえーっと、大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐で、えーっと、6番目?

 これって、エライ?」

『ムチャクチャ偉いよ! ほとんどだれも逆らえないよ!』

「ふーん」


『貴族制がある世界なら、少なくとも親は伯爵以上じゃないかね。

 たしか、指揮権限が大尉と少佐じゃ大違いだったんじゃないかねえ。大隊や指揮艦の副官になる地位じゃなかったかと思うよ。戦時下の常識程度で詳しいわけじゃないけどね。

 言い方は悪いかもしれないけど、親戚のオジさんが少将とか大佐とかで隊の指揮官をやってるところに、甥のボンボンを呼んで副官にした。ああ、デカくなったな、おまえ、仕事しろ。将来はこの隊の指揮を任せる、そもそも俺が死んだらおまえが指揮を執るんだ、って感じじゃないのかい。気易くて使いやすい副官だよ』

「ふーん。そうか、第二次世界大戦の時には日本にもまだあったんだよね、貴族制。さすがメイ姉さん、経験値が高いね!

 そうか、貴族の息子か~、それであんなに威張ってんのか~」

『威張ってるっていうより、焦ってるような感じだねぇ』

「ああ、そうかも」


 夢で怒鳴っている人は、エッシェンフォルゲン少佐で、貴族か貴族の息子?



 目覚まし時計の代わりにだいたい朝の定時に怒鳴っていた少佐が、何故か夢に現れなくなって十日、藍は朝寝坊するようになっていた。日中はグダグダとデッキチェアで寝そべっていたり、蔓植物を見回ったり。

 変な考えに引きずられて落ちるところまで落ち込まないようにことさら熱中していたネットゲームにはインしなくなっていた。命綱のパソに負担を掛けて故障されては困るというのもあった。また、ゲーム内チャットでうっかりハイになって“今異世界に来てまーす”とかやってしまったら、二度と立ち上がれない気がしたからでもある。


 相変わらずネット小説は楽しんでいるのだが、やはりパソの故障が怖いうえに、異世界で冒険している人たちがうらやましいような気もした。猫と一緒に召喚されて、お迎えは誰もいない。おまけに軍人に怒鳴られて、出頭せよとか言われるのに、どこに出頭するかも教えてくれない。

 いや、教えられても行かないけど。自分からわざわざ怒鳴られに行くほどおめでたくはないのだった。


 召喚されて二カ月は経っていないが、一カ月よりは長いと思われるその日、朝から雨になった。


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