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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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076 覚醒

 一同はしばらくあっけにとられていた。

 だが空から降りてきた物の姿を見て、私は何が起こったか瞬時にさとる。

 

「いかがですか、セシル殿。俺は役に立つでしょう?」


 地面に降り立った竜は胸をそらして私を見る。

 もちろんそれはあの黒竜だった。


「ありがとね黒竜さん。さすがだよ」

「いやぁ、お役に立てて何よりです」


 だが敵はまだいた。

 鷲獅子(グリフォン)たちの一団が左側から回り込み、城壁内部へと侵入しようとする。

 しかし今度は白い巨大な光が魔物(モンスター)の軍団を一瞬で焼きつくす。


「ぼっとしすぎですよ、あなた」


 その巨大な白銀の竜は大地へ降り立つと、黒竜を叱責した後、軽く私に頭を下げる。


「セシル様でございますね。話はうかがっております。私もセシル様に従います。今後ともよしなに」

「あなたは?」

「白竜とでもお呼び下さい」

「あの……もしかして……黒竜さんの奥さんですか?」

「はい。不肖の夫ともども、よろしくお願いしますわ」


 その時、エマ、アリス、リュウジが近づいてきた。


「クー、クー、クー」

「リュウジ!それにエマにアリスも。ここは危ないよ。逃げた方がいい」

「実家には心配ないって、手紙をことづけたよ。あとなるべく遠くに逃げた方がいいって」

「わたしたち、そもそもどこに逃げたらいいんすか?あんなのに襲われたら助からないっす。セシル先輩のそばが一番生き残れる可能性が高いと思うっす」


 それは確かにアリスの言う通りかもしれなかった。

 リュウジはちょこちょこと、竜たちのもとへと近づく。

 そして不思議そうに見上げたり、匂いを嗅いでみたりしていた。


「おおこれは……」

「不思議な竜であろう?」

「あなたの顔の真ん中についてるのは何ですか?この方は……」


 白竜が何かいいかかけた時、再び空から声が響く。


「無駄なあがきを!だがこれを見ろ」


 映し出された巨大な映像は、光の遺跡だった。

 だが石造りの遺跡は、突然崩壊し崩れ落ちる

 そして地を揺るがす爆発音が響く。

 振り返ると炎の柱が天へと昇るのが見えた。


「あれは……光の遺跡の方角?」

「遺跡が……でもどうやって」


 周囲から驚きと戸惑いの声があがる。

 その時、アッシャの槍を手にして目を閉じていたリーリアが口を開いた。


「地下深くに魔力反応がある。彼らは何らかの方法で、地下から遺跡を破壊し、力を吸い取っているわ」


 デギル教徒が遺跡の宝珠(オーブ)を狙っているというので、光の遺跡にも騎士や魔術師達が配置され、障壁(バリア)も張り巡らされているはずだ。

 だがその障壁(バリア)も地下深くまでは到達していないだろう。

 いくら遺跡の防御に人を配置していたところで意味はない。

 これが私たちが知らない、古代の技術なのだろうか。


「もう一度言う。大人しく首都を明け渡せ。その前に一つ見せてやろう」


 鋼鉄の城の前面が開く。

 中から次々と現れたのは、一つ目の巨人(サイクロプス)だった。

 生い茂る木々より頭一つ高い。

 数十メートルはあるだろう。


 そして要塞から巨大な砲台が出現する。

 その先から、突然光の束が発射され、帝都の城壁に命中する。

 一瞬で城壁の一部が破壊され、崩れ落ちた。


「魔術?古代遺物(アーティファクト)?」

「あんなものをどうしたら」


 人々のうめきは絶望に近かった。

 

「要塞の周囲にも、強力な障壁(バリア)を感じるわ。あそまで行けたとしても……」


 リーリアが唇をかんだ。


「光の宝珠(オーブ)の力は吸い取らせてもらうぞ。何をしようと無駄よ。古代の民の力、そしてデギル神の与えてくださる力の前には、お前たちの魔術など赤子のようなものだ」

 

 暗黒司祭(ダークプリースト)の声が響く。

 どういう技術を使っているのか、次に空中の映像は光の遺跡内部、宝珠(オーブ)が安置されている場所に切り替わった。


 次の瞬間、画面に映った宝珠(オーブ)は粉々に砕け散る。

 皆の口から一斉に悲鳴がもれた。


「光の宝珠(オーブ)は砕けた。ザイターン様が地上に降臨なさる準備は整ったぞ」


 勝ち誇った声で男が言う。

 私は傍らのリュウジを抱き上げ、ぎゅっと抱きしめる。

 

 その時だった。

 私の腕の中のリュウジの体が、突如光を帯びる。

 見る間に体が膨れ上がり私の腕の中から飛び出した。

 そして十メートル以上の黄金の竜の姿へと変化し、空へと高く舞い上がる。


「リュウジ、お前……」

 

 そして私の脳内にあの声が響く。


『……との接続(アクセス)成功。緊急覚醒条件を満たしました。機能ロック解除……神竜と同期《シンクロ》します。銀の体(シルバーボディ)を解放します』


 私の脳内に景色が広がる。

 地上から空を見下ろしている映像。

 正面にはあの要塞が見える。

 おそらくこれはリュウジが見ている光景だった。


「キュルルルイーーーーーーーーーーーーーン」


 大気を震わせるリュウジの咆哮があたりに響く。

 その瞬間、世界が止まる。

 要塞の光が消え、巨人たちは動きを停止する。

 一瞬の混乱の後、皆は戸惑ったように顔を見合わせる。


「あれは、聖なる咆哮(ディバインボイス)!伝説の神竜様が使われたという、全ての魔術と魔物(モンスター)たちの攻撃を無効化する(ブレス)ですわ!」


 白竜が叫んだ。


「わかったっす。あの光の遺跡の本当の秘宝は、光の宝珠(オーブ)じゃないっす。その竜だったんっすよ!」


 アリスも私に向けて、興奮したように早口でまくし立てる。


「いや凄いものだな。しかしこれでは我も飛び立つことができんぞ」

「あら、確かに」


 黒竜と白竜が声をそろえる。


 敵の戦力をある程度は無効化できたらしい。

 リュウジの聖なる咆哮(ディバインボイス)は、敵味方全ての魔力効果を無効にしてしまうようだった。


「キュー、キュー」


 リュウジが私を見、次に要塞を見て鳴く。

 どうやら急げと言っているらしい。

 この技も、おそらくは効果時間があるのだろう。


 絶好のチャンスだが、とれる手段は限られている。

 要塞は道なき森の中にあり、しかも障壁(バリア)で覆われている。

 通常の手段では、到達するのに時間がかかりすぎるし、侵入する事もできない。


 だがやる事は一つだ。

 あの要塞を破壊し、カールを取り戻さなければならない。

 

「光の遺跡から魔力を吸い上げている。あの障壁(バリア)を突破するのも難しい。何らかの方法で内部に侵入して破壊するしかないが、われらにはその手段がない」


  クローヴィスの言葉の前に、私は既に決断していた。

 

「リュウジ、あそこまで行けるな?私を運んでくれ。頼むぞ」

「キュイー」


 クローヴィスも何かを決意したように私に向かって言う。


「他に方法は無いか……セシルとリュウジの力を頼るしかないな。役に立たないかもしれんが、これを持っていけ」


 私はクローヴィスが渡してくれた槍斧(ハルバード)を持ち、剣を腰に吊るす。


「ありがとう、クローヴィス」

「好きに暴れろ、セシル。そして危なくなったらいつでも離脱するんだ。もし何かあってもカールの事は気にするな。責任は私がとる」

「わかりました」


 私はリュウジに飛び乗る。

 リュウジは私を乗せ、空高く舞い上がる。

 黒竜と戦った時は、私の神力無効(アンチザディバイン)のせいで、黒竜は飛び立つことができなかった。

 だがリュウジにとっては、何の苦もないようだった。


「黒竜さん、白竜さん。あの魔物(モンスター)や巨人たちは頼みます!」

「わかり申した」

「ご武運を。動けるようになり次第、私たちも向かいます」


 私とリュウジはそのまま一直線に要塞を目指す。


「あそこか!」


 再び私の頭の中に声が響く。


『神竜と同期(シンクロ)中。神力無効(アンチザディバイン)により、要塞の障壁(バリア)は無効化されます』


 どうやらこの障壁(バリア)は強力な魔術によるものらしい。

 このまま突っ込んで、カールを救出し、できれば首謀者をとらえるか倒す。

 要塞の動力源を破壊し、無力化できればなお良しだ。

 そしてリュウジは砲台の上に着地した。


「リュウジ!これ壊せるか?」

「グー!」

 

 リュウジはその強力な爪と尻尾で、まるで紙細工を引き裂くように砲台を次々と破壊していく。 

 するとその場所に空間が出現した。

 どうやら広間らしき所につながっていたらしい。

 私は砲台があった場所から、一気に下へ飛び降り叫んだ。

 

「こら、私の弟子をかえせ!」

読んでいただき、ありがとうございます。

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