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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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067 小さな掌

 クローヴィスの考案した基金の話は、とんとん拍子に進んでいった。

 エマの父親やその知り合いの商人たちも協力してくれることになった。


 もはや私のささやかな小遣いなど大して役に立たないかもしれない。

 と思ったが、例の薬やパンの権利が思わぬお金になりそうだった。


「権利を金貨500枚、いや1000枚で買いたいという商人もおりましてな」


 エマの父の話に私はびっくりしてしまう。

 たかがパンだの外傷薬だの保湿クリームだので、それだけのお金を回収できると思えない。

 エマの父も誰かに独占的に任せるつもりはなく、その話は断ったそうだ。


 登録している権利は私と母との連名であり、あからじめ手紙で了承は得ていた。

 ただ商売を広げていくと、困ったことが起こる。

 パンやお菓子の製造はともかく、薬となるとリヤウス教会の活動とバッティングする可能性がある。


 今までは小規模であるがゆえに、いわば見逃してもらえていた。

 教会や修道院では、医療活動や薬の販売、お酒の製造販売を行っている所もある。

 今後事業を拡大していくと、彼らとの軋轢を生むかもしれない。


 そのあたりはリヤウス教団の聖女である母と、エマの父との話し合いに任せることにした。

 私にはそんな交渉など全くわからない。 

 

 それより商売を広げるなら新商品も投入しなければならないかもしれない。

 それに関しては、今までの商品の他にも、化粧水や石鹸による髪のきしみを緩和するリンスのアイデアもある。


 今まで得たお金の他にも、私の口座に入っているものは、半分は寄付するつもりだ。

 私にはそんなにお金は必要ないし、聖女になれれば、何とでもなるだろう。


 そして私は、クラリッサ孤児院をたずねる。


「こんにちは、ファイーナさん」

「あらあら、いつもすいません」


 ファイーナは私が持ってきた菓子折りを、恐縮した様子で受け取った。

 今日はマルスとエマも一緒だった。


「実は……」


 私は基金の話をする。


「それは素晴らしいと思いますわ」

「ええ。それで私が貰っている、パンやロル草のお金もそこに寄付しようかと。かまいませんか?」

「もちろん。セシルさんが頂いている正当なお金ですから。私がとやかく言う事はありませんわ」

「当然こちらの教会で製造するものについては、今後も変わりなく買い取るという事でした」

「それはありがたいお話しです。お気遣い感謝いたします」


 ファイーナは軽く頭を下げた。


「それでですね」


 私は本題に入る。

 身分や種族にかかわらず、才能のあるものを探し育てたいという、第一皇子の意向があること。

 そのための基金を作るということ。


「おかげさまで、こちらの施設は寄付もいただいて、運営も順調ですけれど……」


 ファイーナは考え込む。


「具体的には、高等学院とか魔術学校などに進学したいけれども、経済的問題で難しい。そういった子供たちを支援したいということです」


「なるほど。今のところ思い当たりませんが、そういう制度があるなら子供たちとも話し合ってみますわ」


 そして子供たちと談笑したり遊んだり、一緒に昼食をとり、午後のお祈りだ。

 建物も綺麗になっており、薬草園も整備され、見違えるほどだった。

 私たちも教会へと移動し、一同は司祭様のありがたいお話を拝聴する。

 

「あの、セシルさん」


 聖堂から出てきたところを声をかけられた。


「あら、こんにちは」


 声をかけてきたのは、獣人族であるガバロの息子夫婦だった。

 見覚えのある少女が目に入る。

 確かキーラと言ったはずだ。


「先日は娘を助けていただいて、まことにありがとうございます。ほれお前も、キーラ」

「ありがとうございます」


 親子そろって私に頭を下げる。


「とんでもないです。何度もお礼を言われて心苦しいです」

「いやいや。私たちは一生セシルさんに感謝を……」


 その時――


「きゃぁぁぁぁ」

「おい!気をつけろ」


 かすかに響く少女の悲鳴と男の怒鳴り声。

 軋む車輪の音と、何かがぶつかる巨大な音が伝わってきた。

 私は急いで表通りに出る。


 血を流して倒れている獣人の少女。

 何やら叫びつつ、周囲の人間と揉めている男と馬車。


「俺は悪くねぇ。そのガキが飛び出して来たんだ。こっちは急いでいるんだよ」


 少女をはねたらしい男は、そのまま馬車に乗って立ち去ろうとする。


「なっ……おい……いけ!……どうして」


 馬は何度か走り出そうとしていたが、そのうち怯えたように立ち止まる。

 馬車が進まないため、男はあちこちを確認し、背後を見る。

 荷台をつかんでいる私と目があった。

 男は悲鳴を上げながら、鞭を振り上げる。


「とりあえず降りようか」

 

 私は荷台から手を離すと、男の腕を素早くつかみ、なるべく穏やかに話しかける。

 私の静かな気迫に気おされ、その男はうなだれながら、御者台から道路へと降りた。


「こりゃひでぇ」

「生きてんの?」


 野次馬たちの視線の先には少女がいた。

 手足は不自然に折れ曲がり、口から血を流している。


「ジル!ジル!」


 母親らしき獣人が駆け寄り、女の子の前にひざまずく。


「どなたか!助けてください!お願いします、お願いします」


 私はそっと女の子の怪我の状態を確認する。

 思った以上にひどい。

 その時、教会からファイーナに続き、マルスやエマ、ガバロの息子一家もやってくる。


「おおこれは。とりあえず教会へ運びましょう」

「お願いします!お代は何としてでも払いますから」


 しかしファイーナは治癒魔術が得意ではなかったはずだ。

 ここまでの怪我となると、並みの治癒魔術師や医師の手には負えないだろう。

 私の持っている薬でも、何ともなりそうもない。


 ふと気配を感じて横を見ると、キーラがいた。

 キーラは前に進み出る。

 目を閉じて怪我をした少女にゆっくりと、小さな掌をかざす。


医の神(クレオス)の叡知にて、癒しの光と風よ集いて、あるべきものをあるべき所へと戻せ」


 キーラが呪文を唱える。

 変化は劇的だった。

 みるみるうちに、土気色の顔に血色が戻り、曲がった手足まで元通りになってしまう。


「これは……」


 私はマルスやエマと顔を見合わせる。

 恐ろしいまでの魔力だ。

 キーラの治癒魔術は、高等学院の生徒、いやその辺の治癒魔術師よりも上かもしれない。

 そういえば以前マルスやエマが、キーラには凄い魔力があると言っていた気がする。


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


 ジルの母親はキーラに頭を下げる。

 キーラは穏やかに微笑んでいた。

読んでいただき、ありがとうございます。

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