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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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066 カールの訪問

「ええ、静粛に。今度わが学園にカール殿下が視察にこられる。失礼のないように」


 とある平日の朝、寮のミーティングで寮長(ハウスマスター)のバート先生が私達に向かって言った。

 とはいえ、学生たちはむしろ戸惑っていた。


「カール……って誰だ?」

「ほら、皇帝陛下の兄だったか弟だったかの三男だか四男だか……」


 ひそひそとした囁きが聞こえる。

 クローヴィスがこの学校に通っている事もあり、皆は皇帝一家についてはそれなりに知識はあるはずだ。

 

 その彼らにしても、カールについて詳しく知っている人間はいないらしい。

 何となく、そんな王子もいたっけ?という感じだった。

 

 皇帝の息子なら皇子だが、カールは帝室の血縁とはいえ現皇帝の息子ではない。

 カールの父がカドレア王の称号を持っており、その子ということで王子と言われているそうだ。 

 

 そしてカールが学園に来る日がやってきた。


「カールだ。よろしく」


 カールの挨拶に対して、どことなくおざなりな拍手がなりひびく。


「セシル・シャンタルさん」

「はい、寮長(ハウスマスター)先生」

「あなたは、カール王子と顔見知りらしいですね。あなたが学校の案内をしなさい」

「え、あの私は授業が……」

「今日は特別に許可します」


 というわけで私がカールのお守りを押し付けられることになった。

 クローヴィスもついてくれるというのがせめてもだ。

 カールは授業や施設、寮の見学をするらしい。

 例の執事のガストンに侍女のディアーヌ、それに護衛らしき人間が何人かいた。


「ここが教室ですが、授業ごとに移動します」

「ここが実習室、こちらが音楽室。こちらが……」


 私はカールを案内しながら説明する。

 といって、私も校内の隅々まで知っているわけではない。

 

 知識があやしいときは、クローヴィスが補足してくれた。

 私にとっては何も物珍しいものはないが、カールは興味深そうにあちこちを見ながら、時折質問をはさむ。


「食事はどこでとるのか?」

「いくつかある食堂で。寮にはありません」

「みんな寮に入らねばならぬのか?」

「いえ、近郊のものは自宅から通学しているものもいるようで」

「見た所貴族らしからぬものもいるが?」

「平民だろうと試験に受かれば入学できます」


 学校という閉鎖的空間とはいえ、カールにとっては初めて見た外の世界なのだろう。

 思いのほか楽しそうだった。


 時折すれ違う生徒や教師たちも一応は礼儀は保っているももの、カールに大して興味をひかれたようでもない。

 現皇帝家にとって、半ばやっかいものの王子など、仲良くする理由はないのだろう。

 そのあたり人間というのは現金なものだ。


「あの竜はどこにいるのか」


 という王子の言葉で、私たちはリュウジがいるところへと向かう。

 リュウジの居場所は廃校舎の近くだ。

 それを見ると去年の出来事を思い出す。


「そういえば、去年にこの学校で事件があったと聞いた」


 私の心を見透かしたわけでもないだろうが、カールのその言葉は私を少しどきりとさせた。


「ええ、まぁ……なんかそういった事もありましたね」

「デギル教徒の襲撃を受けてね。相手は大灰色猿(グレイエイプ)を三体も召喚したのだが、セシルが一人で叩きのめしたよ」


 私の言葉にクローヴィスがさらりと答える。


「ほぉ、そうか。やはりセシル先生は凄いのだな」


 カールが真面目に感心していたのが、かえって恥ずかしい。


「ほら、リュウジ。カール王子だよ」

「クー、クー」


 リュウジはよちよちと歩いてきて、嬉しそうにパタパタと羽を震わせる。


「うむ。元気か、リュウジ?」

「クー」

「セシル、これをやってもいいか?」

「大丈夫、クルミなら好物です」

「うん。喜ぶかと思ってな」


 カールは若干照れ臭そうに言う。

 もちろんリュウジは喜んで食べた。


 そして私たちは寮の食堂で、カール一行とともに昼食をとる。

 正直私だってまだこの学校に来て一年だし、特に口がうまい方でもない。

 そこで私はそこでおそるおそる、カールに感想をきく。


「いや、案外と楽しいぞ」

「あの……何か見たい場所とか」


 といって学校の中にそんなに珍しい施設があるわけもない。


「そうだな。あの南の建物はなんだ?」

「あれは研究棟で……」


 その時ちょうど、エマとアリスが通る。


「こちら、カール殿下。こちらは私の友人のエマとアリスです」

「カールだ。よろしく頼む」


 私の言葉にエマとアリスは礼儀正しく頭を下げる。

 私はカールとクローヴィスに、彼女たちの同席の許可を求める。

 双方とも了承し、エマとアリスも、おっかなびっくり席につく。


「しかしこの学校にも、様々な身分や種族のものがいるのだな。予想外だった」


 カールはなにやら考え込むようにつぶやいた。


「みな帝国の臣民であり、リヤウス神の基に平等だ。だがまだまだ帝国には多くの才能が埋もれている。なかなか彼らの才を見つけて育てるのも難しいさ」


 クローヴィスが言う。

 

「まだまだこの国は、発展する余地があるということだな、クローヴィス」

「そうだ、カール。貧しくても身分が低くても優秀な子供たちはいる。彼らがちゃんとした教育を受けられるように、基金を作るよう、父上にも申し上げているのだが。予算の都合もあれば、私に大した政治的権限はないのもあって、進んでおらんのさ」


 皇子といえども、思い通りにならない事はあるものらしい。

 いや、皇帝ですらそうなのだろう。

 だが……

 

「あの……少しですが……お金なら私も出させてください」


 思わず言ってしまった。


「君が?」

「はい。あの……パンや薬で色々とお金が……」


 今は直接作ってはいないが、権利料が口座に入っていたはずだ。

 だが考えているうちに、そんなもので何とかなるとも思えなくなって、私の語尾はもごもごとしたものになる。


「クローヴィスさん。商人たちに協力を求めるのはどうでしょう?」


 ふいにエマが発言する。


「商人たち?彼らが利益にならない事をするだろうか?」

「寄付ないし基金として拠出した分は、税を免除するのであれば」

「ふむ」

「それに帝室の肝いりとなれば、協力したくなる商人も多いと思います」

「なるほどな」


 エマの父をはじめ、帝室や大貴族とコネをつくりたいという商人は多いのかもしれない。

 彼ら全員の希望をかなえるわけにもいかないだろうが。


 ふと横に目をやると、アリスは目をぱちくりさせて、クローヴィスやカールを見ている。

 時々軽くうなずくと、下を向いてメモをとっている。

 何やら創作意欲がわいているらしい。

 ひょっとすると前に言っていたロマンス小説のアイデアだろうか?


 私は続いて、そっとカールの様子をうかがった。

 彼は何やら物思いにふけるようだった。


 ひょんな事で知り合ったが、この王子はどうなるのだろう?

 帝室の人間に生まれたからには、衣食住で不自由することはない。

 だが明るい未来が広がっているかどうかはわからない。


『生まれ変わっても未来永劫、王などに生まれたくはない』


 昔そう言い残して処刑された、少年王がいたという。


 カールだって、少しでも自分の望む未来が手に入ってもよいはずだ。

 誰だって幸せになる権利はあるのだから。

 私はそう思わずにはいられなかった。

読んでいただき、ありがとうございます。

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