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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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065 再び

「お帰りセシル」

「おかえりなさい、セシル先輩」


「ただいま」

「クー!」


 結局学校を休んだのは数日だけだった。

 その間の授業に関しては、レポートを提出することで、出席扱いになるということで決着した。


「元気になって良かったね、リュウジ君」

「でも、やっぱり、この竜はただものではないっすよ」


 放課後、リュウジの家に、エマとアリスは、パンやオレンジや木の実を持ってきていた。

 助けてもらったお礼だという。


「そんなに気をつかわなくていいのに」 

「リュウジ君のおかげで、みんな助かったみたいなもんだしさ」


 リュウジはキョロキョロと食べ物と皆の顔を交互に見ていた。


「エマとアリスがくれるってさ、リュウジ。たくさんお食べ」

「クー」


 リュウジは嬉しそうに食事をはじめた。


「やぁ、セシルさん。リュウジが治って良かったですね」


 後方で声がしたが、それはもちろんマルスだった。


「ありがと」

「僕もこれを」

「そんなに気をつかわなくていいのに、マルス。でもありがとね」

「クー、クー」


 リュウジが頭を下げる。

 お礼を言っているつもりらしい。

 マルスは笑ってリュウジにリンゴを与えた。


「他の人もリュウジに会いに来たいらしいけど、どうも遠慮してるみたいでね」


 マルスが言う。

 そういえば、ちらちらとリュウジの居場所の方を見ている生徒もいた。

 彼らもリュウジが助けてくれたという事はわかっているのだろう。

 だが見慣れない(ドラゴン)という生き物を警戒しているようにも思える。


「なるべく私以外の人間にも慣れた方がいいと思うんだけどな」

「それはそうですね、セシルさん」


 リュウジもあの黒竜のようにとてつもなく大きくなるのだろうか。

 リュウジが学校から追い出されるということになれば、私も寮を出てリュウジと一緒に暮らす事も考えた。

 だがあまりにも巨大になりすぎれば、住む家もない。

 その時はあの黒竜に頼んでみるしかないのかもしれない。


 その時ふと、気配に気づく。

 やってきたのはリーリアだった。

 どことなくうつむき加減で、近づいて来る。


「これを、そちらの竜にさしあげて」


 杏やイチジクらしきものが入った籠を差し出す。


「これは……ありがとう」


 私は素直に言った。

 リュウジが果物が好きというのは、誰かから聞いたのだろうか。


「一応は助けてもらったからね。礼をするのは貴族として当然よ」


 そっぽを向いて言う。

 相変わらずどこかとげとげしい態度だった。


「ほれ、リュウジ。リーリアにお礼を言いなさい」

「クー」


 リュウジは頭をさげて、よちよちと近づく。

 だがリーリアは後ずさる。


「ちょ、ちょっと。近づかないでもらえます?」

「……クー……」


 リュウジは少し悲しそうに鳴く。


「誤解なさらないで。私ちょっと……その……毛むくじゃらの生き物が苦手ですの。犬とか猫とか……ごめんなさいね。それじゃ」


 それだけ言うと、リーリアは駆け去っていった。


「相変わらず変わった子だよね」

「でもセシルさん。リーリアはエマに聞いてたんですよ。あの竜の好きなものは何って」

「へぇ、意外とかわいいとこあるんだね」


 それから私はリュウジに向かって言う。

 

「今日のごちそうはリュウジが元気になったお祝いで、特別だからね」

「クー、クー」


 とりあえずは一段落だ。

 とはいえ、これで一件落着とはいかない。

 

 暗黒教団がどんな陰謀をめぐらしているか、その全貌は見えない。

 しかしあまり考えすぎても仕方ない。

 帝国首脳部だかリヤウス教団幹部だかに任せるしかないだろう。


 

 数日後、私はカールの授業のために、宮殿へと出かける。

 カールは何か事件があったらしいという事は聞いていたようだ。

 練習後の雑談でその話が出る。


「ほう、それは」


 カールは興味深そうだった。


「思わぬ戦いでしたが、何とか勝てて、リュウジも回復しました」

「その竜は今は学校にいるのか?」

「はい」

「そうか。学校ではどんな授業があるのだ」


 私はカールに説明する。

 授業、建物、寮生活、同級生たち。

 自分でも意識していなかったが、私は意外とこの帝国高等学院が好きなのかもしれない。


 前世はひたすら親の言われた通りに勉強し、親の言う通りの学部へ行き、親の言う所へ就職した。

 学校でも友達と呼べる人もほとんどおらず、学生生活は灰色で大した思い出もなかった。


 今世は身体能力にも頭脳にも恵まれ、友達もいて、学校の成績もまずまずで最優秀性として表彰もされた。

 もし聖女科へ進学できたら、ロマンス小説クラブを作りたいという思いもある。

 そうなると学校生活は前世より楽しいに決まっている。

 幸運や環境に恵まれた事を、この世界へ転生させた神様がもしいたら、感謝したいくらいである。


 庶民の出だとか、魔法が使えないということで、無視されたり冷たくあしらわれることもある。

 だがそれくらいはどの世界でも同じようなものだろう。


「カール様も一度いらしてみたらいいのに」


 それは何の気なしに発した言葉だった。

 だがカールは真剣に考え込む。


「そうだな。確かに面白いかもしれない」


 私は視界の端で執事のガストンの眉が微妙に上下するのをとらえていた。


「殿下。そのような場所においでになるのは感心しませんな」

「なぜだ、ガストン?」

「そのような所では私どもも殿下をお守りできるかどうか」

「僕はこの国をもっと見てみたいのだ。それに誰かが僕を始末するつもりだとしても、わざわざ人目のつく所でやる理由が無い」


 カールはガストンやディアーヌの目をみながらはっきりと告げる。

 そこまで言われれば、反対はできなかったのだろう。

 彼らは無言で頭を下げた。


「私からクローヴィス様に言ってみます」

「悪いな、頼む」


 そしてカールの住居から寮へと戻る前に、クローヴィスに取次を頼んだ。

 クローヴィスはすぐ会ってくれた。


「カールが学校へ来たいって?自分から何かしたいと言うなんて珍しいな」

「そうなのですか?」


 あのような場所で大人たちに囲まれて、同年齢の友人もいない。

 学校にも行っていない。

 子供なりに自分の境遇はわきまえている、ということだろうか。


「そのくらいは皇帝の許可もいらない。学長や寮長(ハウスマスター)には話しておく。それに父上……陛下のお考えと私の考えは違うさ」

「わかりました」


 ということで、カールは帝国高等学院へ見学に来ることになった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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