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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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064 竜の実

「まだやりますか?」


 私は地面に倒れ伏した黒竜の顔の前に移動し、おだやかに話しかける。


「……いや。まいった。我の負けだ」


 黒竜はうなだれつつこたえる。


「セシル、怪我はないか!」


 その時クローヴィスたちが、倒れた木々や地面に空いた穴をよけつつ駆け寄ってきた。


「ご心配なく。それより……」


 私はリュウジをそっと抱きかかえる。


「黒竜さん。約束です。リュウジを助ける方法を教えてください」

「必ず助かるとは約束しておらんはずだが……まぁ待っておれ」


 黒竜は飛び立つと、やがて赤い実のなった枝を咥えて戻ってきた。

 そして私の前にその枝を置く。


「それをその竜に与えてみるがいい。竜の実といってな。竜族の治癒力を高める効果がある」


 私はスイカほどもあるその実をナイフで切り分ける。

 そして果汁をリュウジの口にたらす。

 効果は劇的だった。


 肌に赤みがさし、身体がぴくぴくと動き、体温を取り戻す。

 私は果汁を含ませた布をリュウジの口に押し当てる。

 リュウジは喉をならして口を動かした。

 やがて目をあける。


「クー、クー、クー?」

「リュウジ!リュウジ!助かったんだね……よかった……本当によかった」


 私はリュウジを抱きしめる。


「クー、クー……」


 リュウジは流れる私の涙にそっと口をつけ、不思議そうな顔をした。


「なぁ、リュウジ。私はリュウジが大好きだよ。ずっとリュウジと一緒にいたいんだ」

「クー」


 私はもう一度リュウジを抱きしめる。

 リュウジのお腹がギュルギュルと鳴った。


「おおそうか。お腹すいてるだろ。でもゆっくり少しずつだぞ」


 私は涙をぬぐいながら竜の実を細かく切り分け、リュウジに少しずつ与える。

 リュウジはむさぼるように食べる。


「ほう、なかなか良い食いっぷりだ」


 黒竜が重々しく言う。


「こんなに食べてお腹こわしませんか、黒竜さん?」

「いや、なに。問題なかろう。それより……その竜は少し変わっておるな」

「そうなんですか?」


「火竜でも飛竜でも氷竜でも魔竜でもなし……我の記憶にもない。それに魔力もあまり感じぬな。どうやって出会ったと言ったかな」

「光の遺跡で眠っていたリュウジと偶然出会って……」


 私は事情を話した。


「ふむ、なるほど。古代の竜……そういえば竜族に伝わる言い伝えがあってな」

「どのような?」


 私は思わず身を乗り出す。


「まぁ大した事ではない。はるか昔、我ら竜族は今と違う姿であった。我らは全て神の竜より生まれ、力を受け継いだ存在であった。だが我らは徐々に本来の力を失い、今や神の竜の足元にも及ばぬものにすぎぬとな」


 一同は無言で黒竜の話に聞き入っていた。


「我らは滅びゆく種族。次第に寿命も短くなり、めったに子も産まれず、飛竜(ワイバーン)のように大した知能を持たぬものも増えた。このままではじきに我らは獣と変わらぬ存在となろう。だがかつての我らは違ったのだ」


 黒竜はゆっくりとまばたきをして、何かに思いをはせているようだった。

 私は黙ってうなづくしかできなかった。

 

 その時リュウジがちょこちょこと近寄り、黒竜の脚に触れる。

 くんくんと匂いを嗅ぎ、不思議そうに黒竜を見上げた。


「クー?」


 そして私の脚の間に入り、じっと黒竜を見つめる。


「とにかくこの度はありがとうございました。リュウジもお礼を言うのよ」


 私が頭を下げるのをまねて、リュウジもぴょこりとお辞儀をする。


「我は強きものに従う。だから我はお前に……いやあなたに従いますぞ、セシル殿」


 黒竜は手をかざす。

 すると目の前に小さなオカリナのようなものが降ってくる。


「これは?」

「その笛を吹けば、いつでも我を召喚できる。人間たちの言葉で古代遺物(アーティファクト)と言われるものだ」


 私は紐のついたその笛を首にかける。


「重ね重ねありがとうございます」


 黒竜を召喚するような用事があるとも思えないが、私は礼を言う。


「いや。もしその竜が伝説の神の竜であるなら、もしかすると我らを救ってくれるやもしれぬしな」


 今まで黙って私たちのやりとりを聞いていたクローヴィスがそこで言葉をはさむ。

 

「それでは黒竜様。私どもに、力をお貸しいただけるのですか?」


 クローヴィスの言葉に、黒竜は興味なさげに視線を向ける。


「ルディアの事など知らぬ。我が従うのはあくまでセシル殿のみ。頼み事があるなら、セシル殿に言うのだな。ではさらばだ」


 黒竜はうっそりと頭を下げると、飛び立っていった。


「クローヴィス様もありがとうございます。おかげで助かりました」


 礼をする私をちらりと見て、リュウジも同じく頭を下げた。


「いや、むしろこちらこそ助かった。黒竜の協力を得るのに成功するとはな」


 そこで部下の一人が興味深げに私に話しかけた。


「初めて拝見しましたが、セシル様の力は凄いものですな。あの黒竜を赤子扱いとは。あれは一体どういう魔術なのです?」

「いや、まぁそれは……」


 私は曖昧に言葉を濁す。

 さらに言い募ろうとするその男を、クローヴィスが無言で制する。


 何だか奇妙な事に、いや凄い事になってしまったのかもしれない。

 私は胸元の笛にそっと触れる。

 人間にはもてないが、竜にはもてるというのは、喜ぶべきか悲しむべきか。


 そして私達は、元来た道を戻り、転移装置で帝都へと帰還する。

 

「お帰りなさいませ」


 丁重に出迎えを受け、クローヴィスとともに一室に通される。

 そこで襲撃事件に関する様々な報告を受けた。

 

 だが暗殺者たちはおそらくデギル教徒であるという事しかわからないらしい。

 逃走した者はつかまらず、私が倒した者たちは全員自害したという。

 

「ふむ。仕方ない。だが奴らは烏合の衆ではない。相当な人員や設備……それに本拠地があるはずだ。全力を挙げて調査しろ。奴らが残していった古代遺物(アーティファクト)もな」

「了解いたしました」


 私はリュウジの手をそっと握りしめる。

 去年の襲撃事件といい、今回の事といい、私はデギル教徒の標的になってしまったかもしれない。


 彼らは不思議な古代遺物(アーティファクト)を使っていた。

 古代の竜の生き残りであるリュウジも、今後狙われるのだろうか?


 果たして私は、自分自身や私の大事なものを守れるのだろうか?

 だがやらなければならない。

 生きるために。

読んでいただき、ありがとうございます。

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