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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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059 修練

「お役に立てるかはわかりませんが、剣術指南役をつとめさせていただきます」


 私は頭を下げる。


「よろしく頼む。これからはお前が僕の師だ。だからセシル先生と呼ぶことにする」

「いえ、そんな。もったいない」

「こういう事はきちんとせねばならん。お前も僕をカールと呼んでくれ、セシル先生」

「わかりました。カール……様」


 そして剣術授業がはじまる。

 一室を借りて動きやすい服装に着替え、中庭へと移動した。

 リュウジにはその辺にいるように言う。

 後ろには執事のガストンが何やら難しい顔をして控えていた。


 私の剣術は田舎の村で習ったものだ。

 師範たちは元帝国騎士だとか、元冒険者だとかいった人達だった。

 こちらに来てからは、学校の授業で習ったものと、たまにマルスと模擬戦をするくらいである。

 道場に通って少し経つと、本気の私が師範たちに負けることは無かったが、客観的にどのくらいの実力があるのかはよくわからない。


「では、まず剣をふってみてください」


 突き、振り下ろし、袈裟切り、切り上げ。

 さらにステップを見る。


「いいですね。基礎からみっちり教えてくれる、良い教師に学ばれたのでしょう」

「そう言ってもらえるとありがたい」


 カールの後ろで、ガストンが少し得意そうな表情をした。

 私は何を教えようか、少し迷う。


「次に私と軽く模擬戦をしましょう」


 とにかく剣を交えてみなければわからないこともある。

 カールには防具をつけてもらう。


「先生はつけないのですか?」

「大丈夫です。それに私に合う防具がありませんので」


 カールは少しむっとした表情だった。

 そして模擬戦がはじまる。

 当然顔面や急所への攻撃は禁止だ。


 カールは鋭い気合とともに攻撃を繰り出す。

 私はそれをかわしたり、受け流したりする。

 当然私が全力を出せばカールは一撃で吹き飛ぶだろうが、目的はカールの技術を見ることであって勝つことではない。


 しばらく木剣を交えてみて気づく。

 カールの攻撃の初動がわかりやすく、素直である。

 確かに剣の扱いは上手いが、接近してからの蹴りや組打ちへの連携が今一つだった。


 この世界での剣術は、上級の騎士以上になると、通常は魔術との連携で用いる。

 だからあまり接近戦用の技術、剣のフェイント技術等は重視されないのかもしれない。


「ではまずはこれくらいで」


 カールは肩で息をしていた。

 その呼吸が整うのを待って、私は気づいたことを言う。


「そうか。僕もまだまだ、だな」

「いえ、カール様は既に基礎的なことはできておられます。あとはちょっとしたコツのようなもので」


 カールはまだ成長期である。

 人外の身体能力を持つ私を基準にするわけにはいかないが、基礎体力が足りていない気がした

 筋トレ的な事をまだやってよいのかわからない。

 ただスタミナ強化なら問題ないだろう。


「基礎体力の向上に、走り込みをされた方がいいと思います」

「魔術を使えれば、体力は問題なかろう?」

「体力は全ての基礎となります。疲労がたまれば集中力も落ちます。強化魔術であろうと、元の身体能力に依存するので、鍛えておくに越したことはありません」

「そういうものか」

「あとは、一杯食べて良く寝る事ですね、カール様」

「ふむ。わかった」


 それから私は接近してからの組打ちや蹴りのやり方を教える。 

 あまり一度に教えても覚えきれないだろうから、一つずつだ。


「今日はこれくらいにしましょう」

「もうか?まだいけるが」

「訓練のしすぎも良くないのです」

「そんなものか」


 私は汗一つかかなかったが、入浴をすすめられ、お言葉に甘える事にした。

 一通り汗を流して着替えた後、一室に呼ばれて、氷の入った薔薇水を提供される。


「一息つきました。ありがとうございます」

「いや。こちらこそ、これから世話になる。ところで、セシル先生の剣術はどこで習ったのです?」

「田舎の道場で覚えただけで、大したものではありませんよ」


 その時執事のガストンが口をはさむ。


「セシル様の剣術は、帝国騎士団が使うものと、東方のファイサーン王国の流派が混ざり合ったものとお見受けします。失礼ながら思っていた以上でした。さぞ名のある方に習われたのでしょう」

「いえ、とんでもありません……」


 やはり私の師匠たちは優れた技量を持っていたのだろう。

 そういえば、あの道場をすすめてくれたのは母だった。

 師匠たちの経歴を詳しく聞いたことはないが、ひょっとして本当に名のある剣士だったのだろうか。


「セシル先生は他にどのような武器を使えるのです?」

「短剣、槍、斧、棒、弓、一通り使えますね」

「ほう、それは凄い。また色々教えてくれ……いや教えてください」

「わかりました」


 そして話は私自身のことについてになる。

 生い立ちから、武術歴、学んできたこと、故郷での出来事など。


「それで先生は、高等学院で何を目指しているのです?」

「私の母が聖女なのです。私も聖女になりたいんです」


 魔法も使えないのにと言われるかと思ったが、カールは「そうか」と言っただけだった。


「それで……カール様は……」


 そこまで言ってから少し後悔する。


「僕か?あまり話す事はないな。前も言ったが僕は生まれた時からずっとここにいる。宮殿から出た事がないのだ」


 それ以上何かを聞き出すのもはばかられる。

 初めてカール達に会った時のあの警戒ぶりはただ事ではなかった。

 

「今まで何度か危ない目にもあった。だが何とか生きている」


 私の心を見透かしたようにカールはそう言った。


「十月には学園祭もあるんですよ。カール様も来ませんか?」


 私はあえてカールの言葉に触れずに話題を変える。


「ほう、なるほど。そういうのもあるのか。僕は外の世界について何も知らない。また色々教えてくれ」


 それはカールの素直な心情だったのかもしれない。

 去り際の少年らしい笑顔が心に残った。


 ディアーヌとガストンに案内され、私はカールの住居を出る。

 彼らは、一応の礼儀は保って私に接している。


「失礼かもしれませんがカール様は、とても孤独なお方なのですね」


 何の気なしに発した言葉だった。

  

「カール様は本来なら、皇帝になるべきお方なのです」


 ガストンは私の方を振り返って短く言った。

 そして再び正面を向く。


「そうですか」


 私は表情を消して答える。


(やっぱり皇帝家のごたごたには巻き込まれたくはないなぁ)


 そして私はリュウジと迎えの馬車に乗り、学校へと戻った。

読んでいただき、ありがとうございます。

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