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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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056 悩み

 幾人かの生徒が青い顔をしていた。

 あたりが暗くなり、空に多数の魔法陣と、赤い扉のようなものがいくつも出現する。


「す、すいません……ここまでやるつもりもなかったんです」


 生徒の一人が複雑な形状の筒状の物体を手にしていた。


古代遺物(アーティファクト)か!どこで手に入れた?」

「それが、あの……その……」


 生徒の答えは要領をえない。

 クローヴィスはそれを手にして、何やら操作しようとした。


「あれは!」


 私は、いつのまにか近くにいたエマが指さす先を見る。


「ぼっとしないで、みんな!障壁(バリア)を」 


 私は叫ぶと、側にいたエマとリーリアを小脇にかかえ、数メートルの距離を飛び退る。

 次の瞬間、私たちがいた場所に稲妻が落ちる。


「異界の門……?」


 黒い霧が吹き出し、何かが出現しようとしていた。

 あれは異界から魔物を呼ぶ召喚魔術……いや、古代遺物(アーティファクト)による力だろうか。


 ここは逃げるべきか、撃退するべきか。

 私が次の行動を迷ったその時だった。


「キュイィイイイイイイーーーーー」


 つんざくような声が響いた。

 

 その声とともに、異空間への扉が閉じ、数多くの魔法陣も徐々に消滅していく。

 一同はすぐには何がおこったのかわからず、全員呆然とその場に立ちつくしている。

 

「クー、クー、クー」


 鳴き声をあげながら、パタパタと羽をはばたかせてやってきたのは、リュウジだった。

 リュウジは私のところに飛んでくると着地し、心配そうに私を見上げる。


「リュウジ、大丈夫だよ」


 私はリュウジを抱き上げる。

 リュウジは私に怪我がないか確認するように、私の顔を小さな手でぺたぺたとなでる。

 そのリュウジを安心させるように、私はそっと抱きしめた。


「クー、クー、キュルルルル……」

「助けてくれたんだな。ありがとう。でも大丈夫なんだよ。私は」


 もちろん私はなにもしていない。

 リュウジの不思議な声があの魔術を中断させたのだ。


「おいなんだあの竜は」

「魔術が中断……?」

「魔法陣が消滅したぞ」


 生徒たちの間にざわめきが広がる。

 ミラベルたちの一団が教官に呼ばれてなにやら厳しく問い詰められていた。


 クローヴィスが、いつの間にか集まって来ていた数人の騎士や魔術師たちと話しているのが目に入った。

 去年の事件の後、学校での警備も強化された。

 クローヴィスにも、目立たないように専用の護衛がついている。


 皆が私とリュウジに向ける視線には、興味や驚きだけでなく、そこはかとない恐怖の感情も感じる。

 面倒なことになったかもしれない。

 私はひとつため息をついた。



 夕食後、私はエマやアリスと一緒にリュウジの住家へと行く。


「リュウジ、ありがとうね今日は。ほら」


 私はリュウジのために、パンと果物を用意していた。

 私の夕食の一部や、購買部で購入したもの、いつもリュウジの食料をわけてくれる部署に頼んだものである。


「クー……?」


 リュウジは目の前に並べられた、大量の食べ物に少し戸惑っている様子だった。


「今日はご褒美だよ。いっぱい食べていいんだ」


 私はにっこり笑うとパンを切り分け、半分を私が食べ、半分をリュウジに与える。

 リュウジは嬉しそうにパンを口にし、他にもリンゴ、人参、オレンジ等を次々と食べる。

 ふと私は前世での出来事を思い出していた。


『あなたはこっちね。お姉ちゃんだから』


 私の目の前に置かれたのは、黄身の潰れた目玉焼きだった。

 私に渡されるのはいつもパンの端切れに、欠けた卵焼き。


『何か不満があるの?世の中にはご飯が食べられない子だっているのに』

『……ううん。おいしいよ』


 どこかもやもやした気持ち。

 あの悔しさとさびしさと割り切れない思い、両親による無自覚な差別は忘れられない。

 あれは単なる私の我儘だったのだろうか?


 けれどもし私に子供ができたら、絶対あんな事はしないと心に決めた事は覚えている。

 今のところは全く予定はないけれど。


「うー、本物の竜っすねぇ。何でも本物はいいっすねぇ」

「金色の毛がふわふわしてかわいいねぇ」


 アリスとエマは、食事を終えたリュウジをおそるおそるなでたり触ったりしている。

 

「クー、クー」


 リュウジは嬉しそうに喉をならす。

 私以外にも穏やかでフレンドリーに接するリュウジを見て、私は少しほっとする。


「リュウジはね、いいこなんだよ。みんなにも知ってもらいたいんだ」


 リュウジにはここ以外の居場所はない。

 今はいいとしても将来はどうだろう?

 この場所にいられないくらい大きくなったら?

 

「竜は何十メートルにもなる種族いるらしいしねぇ」


 エマの言葉に考え込んでしまう。


「竜は今ではめったに見ないっすからねぇ。キンメリアの東方に竜人がいるとも言われてたと思うっす」


 私は聞いてみる。


「アリスは(ドラゴン)に詳しいの?」

「いや、私も本で読んだだけっす。でも、魔術だか古代遺物(アーティファクト)だかを強制的に中断させるなんて、よほどの力がないとできないっすよ。ただものではないっす」


 リュウジは悪くない。

 私を守ろうとしてくれたのだろう。

 だが生徒たちのリュウジに対する恐れや警戒は増してしまったかもしれない。


 リュウジはやはりただの竜ではない。

 古代の遺跡で眠っていた竜なのだから当然なのだろうけど。


「やっぱり私以外の人間にも慣れさせた方がいいのかな?」


 どんな竜になるにせよ、人と友好的である方がいいだろう。


「そうねぇ」


 エマはどう答えようか少し迷っている様子だった。


 クローヴィスからはまた宮殿の魔術研究所に来てくれと依頼された。

 あんな事があったから当然だ。


 結局あの古代遺物(アーティファクト)は何だったのだろう?

 また例のデギル教徒がらみだろうか。


 古代遺物(アーティファクト)をこっそりつかった生徒たちは、取り調べを受けている。

 私をこらしめてやろうと、密かに持ち込んでいたらしい。

 だがどこでそんなものを手に入れたのだろう?


 私はどこか重苦しい気分だった。

 去年の学校での事件。

 あれはまだ完全には解決していないのかもしれない。

 私の意志や望みにかかわらず、大きな逆らえない流れに巻き込まれていくのだろうか。


「クー?」


 リュウジが私を不安そうに見ていた。


「なんでもないよ、リュウジ。美味しかった?」

「クー、クー!」


 リュウジは羽を動かして喜びを表現する。


「たまには気晴らしもどう?今度の日曜日に、二人ともうちに来ない?ロマンス小説もあるし」


 エマが何かを振り払うように、明るく言う。


「いいね。ありがと」

「ロマンス……小説。わたしもいっていいんすか?」


 アリスがごくりと唾をのむ。


「もちろん。それにお父さんなら竜について何か知ってるかもしれないし」


 たまには気分転換もいいだろう。

 私とアリスはエマの家へ遊びに行く事にした。

読んでいただき、ありがとうございます。

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