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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第一章 帝国高等学院入学編

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014 剣術実習

「はい、ではこれから模擬戦をします」


 生徒たちからどっと歓声がわく。

 みんな基本練習にはあきあきしていたようだ。

 

 剣術実習は人気なので、数クラスに分かれていた。

 ほとんど全員が経験者らしい。


 貴族もたしなみとして幼少の頃から武術を習うし、騎士志望ならなおさらだ。

 もっともこの学校は、戦闘員というより指揮官養成の側面が強いようだが。


 ルール説明があり、番号札を渡され、組み合わせ抽選が行われる。

 もちろん木剣と軽い防具を装着し、顔面や急所への攻撃は禁止だ。


 ふとその時、あのマルスという金髪の少年がいることに気付いた。

 彼もこちらを認識したのか、軽く会釈する。

 私も会釈をかえす。


「では17番と82番の方。試合場へ進んでください」


 82番の私の番が来た。

 四角い線で囲まれた試合場の中へと進む。

 

 胴体の部分に剣が触れるか、相手の剣を叩き落としたら勝ちである。

 現在は剣を単体で使う事より、魔法と併用する事の方が多いらしい。

 だが今回は、純粋に剣の技量を試すため、魔法は禁止だった。

 

 試合場の周囲には、木の台の上に魔力球が置かれている。

 結界(フィールド)によって、念のため魔法を使えなくするものだと説明されていた。

 もっとも基本的に魔術は術者を倒せば効果を失う。

 そんな事をする人間はいないだろうが。

  

「構え!……はじめ!」


 男女の別はなく、相手は私よりも小柄な黒髪の少年である。

 というより、同級生で私より背の高い生徒はほとんどいないだろう。


「やめ!82番の勝ち」


 勝負はあっという間についた。

 いさんで突いてきたところを流して叩き落す。

 反射的にやってしまったが、私は少し反省する。

 ちょっと目立ちすぎたかもしれない。


 私は故郷の道場生や師範、野生の動物相手以外と戦った事はほとんどない。

 剣術といっても、剣の種類によって使い方も異なり、様々な流派もある。

 本来は魔法をつかったり、接近戦となったら組打ちに移行したりするわけだ。

 

 できたら色々な技を見てみたい。

 だがしょせんは、いくら修練を積んでいようと、相手は十四歳の未熟な新入生だ。

 私の技術がどこまで通用するか知りたいが、それを試す場ではないだろう。

 そう思いなおす。


 私は順調に勝ち進んだ。

 私のパワーやスピードに対抗できる人間は、おそらくいないだろう。

 本気を出せば、一瞬で終わる。

 だが別に私の力を不必要に見せつけて、自慢するつもりもない。

 ということで、初戦以降は、適度に打ち合ってみせる。


(あんまり強い相手もいないな)


 そう思ってふと隣の試合場を見る。

 マルスという金髪の少年と、一人の背の高い茶色の髪の生徒の試合だった。


「ブルーノだ」

「やらなくてもいいだろ、こんな試合」


 どうやら茶色の髪の少年は、帝都の中等学校の大会で優勝した事があるという。

 確かに私と同じくらいの背丈があり、十四歳にしてはたくましい体つきだ。

 表情も自信満々だった。


(だけど……)


 私は金髪の少年を見る。

 表情は穏やかで、肩の力も抜けている。

 対してブルーノという少年の方は、余裕たっぷりな見た目をよそおってはいるが、体のあちこちが固い。


「はじめ!」


 掛け声とともに、試合が始まる。


(これは……やばいな、マルスとかいうやつ)


 はた目にはブルーノの方が優勢なように見えたろう。

 勢い勇んで攻めるブルーノと、距離をとってかわすマルス。

 だがマルスは完全に距離を把握し、ブルーノの攻撃を完璧に見切っていた。


 決着はあっけなくついた。

 ブルーノが突っ込んでくるところを、マルスがひらりとかわして、胴を薙ぐ。


「やめ!64番の勝ちだ」


 審判の声があがる。

 周囲はしんとしていた。

 まさかブルーノが負けるとは思っていなかったのだろう。


(決勝に上がってくるのは、マルスだな)


 そして私の想像通りになった。


「今から決勝戦を始めます。64番と82番は試合場へ」


 結局私とマルスの対戦になる。

 私は正面のマルスを見る。

 特に表情は変わっていない。


「はじめ!」


 私はゆっくりと呼吸を整える。

 はじめて会った時から、ただものではないと思っていた。

 試合の始まる前から、この少年が私の相手だと思っていた。

 

 どのような技を使ってくるのか。

 いやそのような考えすら、邪念かもしれない。

 ゆっくりと距離が縮まる。


(大丈夫だ)


 私は自分に言い聞かせる。

 いつになく緊張して体が硬い。

 

 ただの練習試合だと自分に言い聞かせる。

 どんな攻撃だろうと、初動を見切ってしまえば怖くない。

 とはいえ、距離が近い場合、見てからかわしては人間の反応速度では間に合わない。


 ほとんどの剣士は、攻撃の前に予備動作がある。

 それを見切ってかわす。

 もちろん熟練すればするほど初動はわかりにくくなる。

 

 だがいけるはずだ。

 元帝国騎士団の剣士や熟練の冒険者だった師範たちの攻撃も、私は見切る事ができた。

 ましてや相手は、未熟な十四歳の子供だ。

 

 結果的に勝負はあっけなくついた。

 私たちはじりじりと距離をつめる。

 そしてあと一歩で私の剣が届き、マルスの剣が届かない距離になった瞬間だった。


「!」


 マルスは一瞬で距離をつめてきた。

 全く予備動作がわからない。

 こんな事は初めてだった。


 だが私の体は自然と動いていた。

 迫りくる剣をかわし、自然とマルスの胴体に軽く剣を触れる。

 もちろんできる限り手加減した。


「やめ。82番の勝ちだ」


 時間にして数十秒といったところだろう。

 あっというまについた勝負に、周囲の人間は、若干気の抜けたような不満げな表情だった。


「優勝は、82番、セシル・シャンタルだ」

 

 私の名前が告げられ、右手が掲げられる。

 勝利のポーズというのは、異世界でもさほど変わらないものだなと、私はふと思った。


 私は少しもやもやした気持ちだった。

 マルスの攻撃の初動は全くわからなかった。

 私が勝ったのは、人間の域を超えた反射神経があったからだ。

 技術で言えば、負けていたかもしれない。


 だがまぁ仕方ない。

 前世でも特に運動が得意というわけではなく、今世でもたかだか何年か修行しただけなのだから。

 自惚れすぎは良くない。

 これが今の実力なのだから、これから伸ばしていけばいい。

 

 それに、この試合は幾分か成績に加算されるらしい。

 魔法の授業では、魔術理論以外は点をとれそうもない。

 こちらで補えればありがたい。

 私はそう気を取り直すことにした。


「さすがですね、セシルさん。兄以外であれをかわされたのは初めてですよ」


 マルスが話しかけてきた。


「いや、運が良かっただけだよ。強かったよマルスは。私が今まで戦った中で一番」


 正直な気持ちだった。


「ありがとうございます」


 マルスは軽く笑みを浮かべると、去っていった。

 私は周囲を見る。

 特に私たちに注目しているようでもない。

 周囲が話している様子をきくと、勝負があっけなくついて、興味を失ったという雰囲気だった。


「聞いたよ!剣術実習のトーナメントで優勝したんだって?」


 夕食の時にエマが話しかけてくる。


「うん。まぁ新入生ばかりだし、たまたまね」

「でもすごいじゃん。やっぱり強いんだねぇ、セシルは」


 無邪気なエマの言葉が、少し恥ずかしい。


「エマは剣術実習は受けないの?」

「あたしはいいかなぁ。基本の護身講習だけで」


 確かにみんながみんな、戦いの技術が必要なわけではない。

 夕食が終わった後は、エマの部屋で少しだけ歓談するのが日課だった。


「それより魔術実習が憂鬱なんだよね」

「なんで?セシルだったら大丈夫じゃない?」


 普通はそう考えるだろう。

 実用レベルで魔術を使えないという人間は多いが、全く使えないという人間はおそらくこの学校にはほとんどいない。

 ましてや聖女を目指す人間ならば。


「あのさ……実はさ」


 私は思い切って口を開いた。

読んでいただき、ありがとうございます。

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