青い森の中に佇む
主人公 アイ 身長 140~150センチ
服装 赤いゴスロリ衣装を着た少女
髪 金髪でツインテール
年齢 15歳で成長が止まっているため不明
容姿 西洋系の可愛い子供
職業 見送人
キーアイテム 玉 対象の命を対価に願いを叶える。ただし対人への物理的や搾取行為はできない
アイは店で食事をしていた。持っている赤い椀の中には様々な野菜が入ったスープ。しょっぱめの味付けが体の疲れを癒してくれる。
一杯、二杯と食べ続け、腹八分目になったところで我に返る。
「仕事をしなくちゃ・・・」口元をタオルで拭い店を出た。
無数の小さな湖がまるで円を描いているように点在している土地の中心に小さな青い森がある。その中にポツンと木の家が建っている。周りには人が住んでおらず、そのおばあちゃんは家の入口に置いてあるハンギングチェアに寝そべり読書をしていた。
本日の依頼主は街はずれに住んでいるこの白髪のおばあちゃん。
「シャルロット様ですね。初めまして。ご依頼をうけましたリュミエールです。」片膝を立てまるで執事の様な所作であいさつをする。
「渡したいもの、映したいもの、話したい事、あなたの思いを残します。」
アイは立ち上がり最後にこう言った。
「準備はできましたか?」
「遠いところからありがとう。」
本を閉じ、切り株の上に置くと立ち上がり、スカートを持ち上げて彼女は挨拶をした。
「もちろん出来ていますよ。さぁこちらへ。」
優しく温かい声が静かな森の中に響き渡る。そして細くて白いその手を差し出した。
アイはその手を握ると木の家へと足を運んだ。
「どうぞ召し上がって」
テーブルに二つのカップが置かれ、中には紅茶が入っている。
「ミルクと砂糖、レモンは好きに加えて頂戴」
アイは砂糖を入れカップの隣に置き、そのまま一気に飲み干した。
砂糖を入れた紅茶はとても甘い、だけどしっかりと香りを楽しめる味をしていた。
鳥のさえずりが少し聞こえ、暖かい部屋が心地良い。
このまま寝ようかと考えてします。
紅茶のおかわりを聞かれたため応じた。
「わたしって他の人より寿命が長いの・・・」
「理由はわからないけど・・・」
シャルロットは天井を見上げた。
「旦那よりも、息子よりも。孫よりも。不思議よね。。」
アイもつられて天井を見上げると、そこには家族の写真が貼られていた。
よくあんな高い天井に貼ったなと思いながら紅茶を飲む。
「わたしがこれから残してほしいのは、声でも写真でもないのよ。」
「わたしが残したいのはこの家と想い」
「誰かがここに立ち寄ったときにゆっくり休んで欲しい、心が疲れた時に休んでほしい。湖にある止まり木にして欲しいのよ。」
「イメージはね、家に入ったときにゆっくり休んで欲しいって声でなく感覚的に感じる様にしたい。」少しだけ声がときめきながら話し始めた。
「つまり休憩所を作りたいのですか。そうであれば、業者にお願いして看板にでもあなたの想いを書けばいいじゃないですか」
アイはすでにカップの紅茶は入っていないが飲んでいる動作をする。
「そこはファンタジーにしたいのよ。それに、別に商売や宣伝がしたいわけではないの。」
椅子に深く座り直し子供のような笑みを浮かべながら女性は話した。
「「なんとなく偶然立ち寄ってみたら」というのが良いの」
もしかしたらこの人は今まで自由に生きる事が出来なかったのかもしれない。
何処かの貴族で、決められたレールを生きざるえない人生だったのだ。
「知ってる?あまり知られていないけどここの森に来る人は落ち込んで癒やしを求める人・・・」
女性は立ち上がり、ゆっくりと窓際に歩き出した。
「もしくは自分の命を絶つためにくるのよ」
「きっと最後くらいはきれいな場所で生涯を終わらせたいという気持ちがあるのかもしれないわね。気持ちはわかる。」
つまり、あまり知られていない自殺スポットなのだろうと想いながら女性を見つめる。
「でもそうやってこの森に来て、ここを偶然見つけて、偶然入って、少し人生について考えて、やっぱり人生は捨てたものじゃないって想えたら素敵じゃない。」
満遍の笑みをこちらに見せた。多分これがこの人が向ける最後の笑みなのだろう。
心地の良い風が家に流れる。
「久しぶりに夢を話したわ」
「それじゃあお願いするわね」女性は家から出た。
椅子に座っている女性の前に鎖につながれている玉を掲げた。
「きれいな玉ね。まるで神話に出てくるドラゴンの瞳みたいに綺麗、中の小さな粒は銀河のよう。。。」
愛でるように玉を見つめている。
「それでは始めますね。」アイの足下と玉が光り始める。
「あなた自身を対価にこの家と想いを残します。」
「ありがとう。最後にあなたに言いたいことがあるの」女性は静かに話した。
「これからもあなたは色々な人とで出逢い色々な事を経験するけど、絶対に感謝されていくと想う。誇りに思って。」そう言うと玉を持っている手を握りしめて微笑んだ。
そして女性の身体と家が光を帯び、そのまま光となって吸い込まれていった。
さっきまでシャルトットが座っていた椅子に座りアイは果実ジュースを飲んでいる。その果実は、皮は赤く、ギッシリとした中身、シャリッとした食感が心地良い。その甘いジュースを飲みながらつぶやいた。
「よくわからないけど、あの人の様に綺麗な心を持った人が世の中にはどれだけいるのかな。」
今まで出会った人の中では多分一番純粋な人だった。
ただそれは異常な気もする。
たくさんの落ち込んだ人と出会っているのになぜあの様な聖女の様になれるのか。
「もしかしたらあの人が一番病んでいたのかしら」
「色々な人を見てきて何か悟った様な感じになる嫌ね。。。」
空を見上げた。大きい入道雲が見える。
しばらくして飲み終えた果実ジュースを床に置いた。
「それじゃあ始めましょうか。」
アイは再び玉を出し、目を閉じた。
少し優しい青色の光を帯びている。そしてその光は建物を覆い優しく消えていった。
「それじゃあ行きましょうか。」
アイは玉をしまい歩いて行った。
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数年後建物はあいも変わらず綺麗な状態で建っていた。色あせることもない。
そして疲れた人々かくる度に癒やされて帰って行く。
ただ何故か帰った人々は誰一人この場所を話さなかった。理由はわからない。
ただここは教える場所ではないと感じたのか。
ただ秘密にしたかったのか。
ただ言えるのは帰った人は2度とここには来なかった。
アイは旅人です。色々なグルメを食べています。何を食べているでしょうか。