番外編短編・宿場の看板娘
ベラは元聖女だった。本当は何の力もないが、パフォーマンス力でのしあがった。
順調に聖女をやっていたが、聖衣という女が現れ、ベラの活動は全部終わった。それどころか、どこにも居場所がなくなり、結局、聖衣に頼り、ゼレナ村の宿場に行く事に。
「ベラ! あんたの事は聞いてるわよ。さあ、歓迎する!」
宿場ではエルフ一家に歓迎されてしまった。特にラーラというエルフの娘は人懐っこく、すぐに打ち解けてしまった。
こうしてベラは宿場に住み着き、働くようになった。宿場の仕事がない時は、農家に行き、収穫を手伝ったりした。
そうこうしているうちに、ラーラと共に宿場で看板娘となり、意外と楽しく過ごしていた。宿場や村のみんなは優しいし、聖女の時のストレスが消えてしまった。
あの仕事も案外ストレスだったのだ。常にニコニコ笑い、歌ったり、踊ったり、嘘のパフォーマンスするのも全部性に合わない事に気づいてしまった。
それに上司でもあった司祭への復讐心も消えた。本当は友達を殺した司祭も憎かった。常に復讐の機会をうかがっていたが、もう面倒になってしまった。今はこの村で看板娘をやっているのが楽しい。
聖衣は復讐が神様がやってくれると言っていたけれど……。
風の噂で新しい魔王が就任し、司祭が捕まったという話も聞いたが、どうでも良くなってしまった。
「あれ、聖衣! それにイアンじゃん。どうしたの?」
宿場の門や玄関を掃除していると、なぜか二人がいた。しかも変な派手な卵を持っていて、これからお祭りでもするような間抜けな雰囲気だ。
「え? また異世界転移しちゃったの?」
「そうなのよ、ベラ。困ったわー」
聖衣は言葉ではそう言っていたが、さほど困惑している様子はなかった。
「そうなんだよな。まあ、しばらくゼレナ村で休暇でもとろうかと思うね」
イアンも同様に呑気そうだ。
「まあ、よく分からないけれど、おかえり?」
「うん、ただいまベラ!」
「おお、帰ってきたぜー」
二人を宿場に迎えた。
こうして旅人を迎えるのも悪くない。看板娘らしく、精一杯もてなそう。
それに二人がいるから賑やかな生活になりそうだ。聖女だった時は聖衣に敵対心も持っておたが、今は普通に友達になれそうだ。
「あれー? 聖衣にイアン! わー、久しぶり! 何この変な卵は!」
ラーラの大きな声が宿場に響く。賑やかな休暇は始まったばかりのようだ。




