番外編短編・俺は情報屋
大きな地震があり、世界が終わったような気がしたのだが……。
情報屋のフーゴは、いつも飲んでいるバーで周辺を見回す。さっき聖衣とイアンが情報を聞きに来て、魔王の噂も教えてやったが。
「あいつらの事は気になるな」
情報屋として二人のその後を調査してみたが、行方不明になっていた。という事は元いた世界に帰れたのだろう。良い事だ。
しかし、魔王の事は気になる。噂では新しい魔王が就任したと聞いたが。
その事も気になったフーゴは、人脈を使い、調べていた。お金もかなり使ったが、新しい魔王の情報は全く得られなかった。調べようとすると、頭痛が起きたり、目の前が真っ白になったりした。これは魔王の情報に魔術がかけられているようだ。
フーゴはダークエルフだ。魔術は使えない。もう新しい魔王の情報を得るのは断熱したと決めた頃だった。
「フーゴさーん、なぜかまた異世界転移してしてしまいました」
聖衣とイアンと再開した。聖衣はカゴを右手に持っていたが、中にはカラフルな卵。イアンも似たような卵を抱えており、なんとも間抜けな雰囲気だった。異世界転移後なんてもう少し悲壮感を持っても良いのでは?
「そうですか。新しい魔王の事は何も分からないんですか」
新魔王の事を伝えても、聖衣はあまりショックは受けていないようだった。
「まあ、仕方ないっすよね。このまましばらくゼレナ村で生活しようと思います! まあ、新魔王は見つけ次第エクソシストすればいっかな」
イアンも能天気に卵を持ち上げていた。確かに今魔王の事を考えても仕方がないかもしれない。フーゴもケラケラと笑ってしまう。
「っていうか、この妙な卵は何だ?」
「イースターエッグです。元いた世界ではポピュラーなお祭りです」
「へえ」
聖衣からイースターの話を聞き、異文化も面白い。
「じゃあ、フーゴさん。しばらくよろしくお願いします!」
「おお」
「俺もよろしく!」
笑顔で帰っていく二人を見ながら、フーゴの気も抜けてきた。まあ、魔王についても後でゆっくり調べればいい。
情報屋として誇りをかけて再び調べてみるか。きっと彼らの役に立てるだろう。
こんな酒浸りのオッサンだが、仕事の誇りはあるんだ。そう思うと、今飲んでいる酒も美味しく感じるものだった。




