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最強聖女〜異世界転移しましたが、このチートスキルは「聖」過ぎます〜  作者: 地野千塩


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第42話 裏切られました

 夢を見ていた。また日本にいた時の夢だった。教会で父の説教を聞いていた。


 夢の中では受難節だった。これはイースター前、イエス・キリストの十字架の犠牲を想う時期ではあるが、説教の内容もいつもと異なったりする。他のペンコステの時も説教内容が変わる。ペンコステは聖霊(神の霊)が降った教会誕生を祝う日であるが、クリスチャン以外の日本人で知っている人は少数だろうが。


 そんな感じで説教は時期によって変わるが、受難節では主にイエス・キリストの十字架について語られる事が多い。


 父は裏切り者のユダからの仕打ちや十寺架までの経緯を語った後、目が真っ赤だ。泣きそうになっていた。夢の中だろうか。いつもと少し違う表情だった。


「こんな酷い裏切りを受けてもイエス様が絶対にユダを責めなかった。復讐や言い返す事もせず、正しくお裁きになる天の父に全てお任せになりました」


 父の説教を聞きながら私も泣きそうになっていた。裏切られた時、私だったらどうするか。言い返してしまうかもしれない。逆に嘆き悲しみ、悲劇のヒロインになったかもしれない。


 そう思うと、とても私は神様のようにできない。


「だから神様は裏切られた人の気持ちが誰よりも分かる。上から目線で偉そうにしている神様じゃないんだ!」


 父の説教はヒートアップし、自身が裏切られた経験も語っていた。


「我々の苦しみも痛みも全部イエス様が代わりにになってくれた。だからもう、傷つく事も悲しむ事もない。どんな辛くても恨むな、悲劇のヒロインするな、復讐するな、喜ぶんだ! どんな時も神様を想って喜ぶんだよ、聖衣!」


 説教なのに、なぜ私個人に語りかけているの?


「お、お父さん? どういう事?」


 そう呟いた時、目が覚めた。頭は痛いが、死んではいない。服は泥だらけだったが、これはベラと一緒に指輪を探した時についたものだ。身体は異常はなさそう。


 鳥の鳴き声や風の音が聞こえる。それに何か獣の鳴き声が聞こえる?


 目をはっきりと開け、あたりを見回す。なぜか自分は森の中にいたが、檻に閉じ込められていた。まりで森の中にある鳥籠状態だ。鍵は開かない。


「イ、イアン?」


 柵の近くでイアンが倒れている事に気づく。頭や頬を叩いたが、いびきをかきながら眠っていた。命には別状はなさそうだが、この状況でよく呑気に寝られるな……。


「よお、聖女様。寝覚めたかい?」


 柵の外には、司祭がいた! その後ろにはカイリスもいる。この時、はっきりとカイリスに裏切られたと自覚した。


 司祭の後ろにいるカイリスは、下衆い目だった。いつものカイリスとは全く違う目をしていた。もう別人と言っていいだろう。


「あんた、裏切ったわね!」

「いいや、俺はずっと司祭様の味方だよ。お前らが勝手に俺を味方だと勘違いしただけだろ?」


 そう語るカイリスは蛇のように身をクネクネさせていた。この態度だけでも腹が立ってくる。言っている事も屁理屈だし。カイリスが日本にいたら「それってあなたの感想ですよね?」が口癖になっていそう。


「ナナさんはあんた達の正体は知ってるの?」

「知らんよ。あいつの両親からして俺に全部お金の事を任せているからな。ぶっちゃけ、あの店が潰れかけたのは俺のせいだね? 売り上げをよく横領してたから」

「このクズ!」


 汚い言葉だが、ついつい言ってしまう。カイリスがここまでの人だとは全く分からなかった。


「ふふ、聖女さーん。そんな事言って良いの?この檻出たくないの?」

「そうよ、司祭、さっさと出しなさい!」


 司祭の嫌味っぽい口調にも腹が立ってきた。イライラしながら言い返す。柵越しの彼らの顔を見る度にイライラしてくる。


「出すわけないだろ。お前は俺らの顔に泥を塗ったんだよ。あげく民衆を唆した。俺らの宗教も無くなったのは、お前のせい!」

「そんなのベラにインチキやらせたからでしょ。いいから、早くここから出してよ!」


 私は叫ぶが、二人ともニヤニヤ笑っているだけだった。焦りと怒りで私の顔は汗でベタベタだ。手もじっとりしてきて気持ち悪い。


「っていうか魔王はどこにいるのよ? これは魔王の命令ね?」


 核心を疲れたのか、二人とも微妙な顔。カイリスに至っては目が泳いでいた。こうなったのも魔王が裏にいたのか。魔王=悪魔だと結論づけていたが、まさかここまでするとは?


「っていうか、聖女さん。そんな余裕でいいの? もうすぐ夕方になるし、この森って獣がいるっていう噂。ほら、鳴き声が聞こえるでしょ?」


 司祭の言う通り、何かの動物の声はする?


「じゃあね、聖女さん! 素晴らしいカミサマの力で何とか頑張ってね!」

「うん、頑張って!」

「ちょ、あんた達待ちなさいよ。この檻の鍵を開けなさいって!」


 必死に叫ぶが、司祭もカイリスもあっという間消えてしまった。


 代わりにどこから獣の声がする。空はまだ明るいが、夜になるのも時間の問題だろう。


 これは絶対絶命だった。一刻も早くこの檻から出なければいけないが、柵は鉄製でびくともしない。もしかしたら獣だったら。この檻も壊せるかもしれないが、そうなった時は一瞬で……。


 カイリスに裏切られた。今は怒りと悲しみでいっぱいだ。


 それなのに、夢の中で聞いた父の説教を思い出してしまう。


「喜びなさい、聖衣」


 ってこの状況で? 無理すぎる!


「イアン、イアン! 起きて! とんでもない事が起きたよ!」

「うーん、むにゃむにゃ。聖女の白パン食べたい」

「呑気に夢見てないで、起きて!」


 楽しい夢の中にいるイアンだが、起こすしかない。再びイアンの頭をバンバン叩き、目を醒させた。


「なんだよ、聖衣。せっかく良い夢見てたのにー」


 イアンはあくびをしていた。まだまだ夢の中という感じの細い目。


「……って事で私達カイリスに裏切られた。絶対絶命だから、この状況は」

「何だって! あー!」


 現実を話すと、イアンの目は丸くなり、頭を抱えていた。


「ヤバいじゃん、聖衣。このままだったら死ぬんじゃ?」


 イアンの言う通りだった。


 風が吹き抜けた。夏の割には冷たい風で、私の顔の汗も引いていく。いや、これは風のせいだけではないかも。


「そうだね?」


 一体どうすれば?


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