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最強聖女〜異世界転移しましたが、このチートスキルは「聖」過ぎます〜  作者: 地野千塩


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第41話 復讐は神様がします

 翌日、私とイアンは神殿に向かっていた。本当はパン屋の仕事の日だったが、ナナさんに事情を話すと、快く送り出してくれた。


「うちは聖女の白パンや高級食パンで経営安定したし、それぐらい構わないよ! うちの方が聖衣ちゃん達には恩があるんだから」


 ナナさんに温かい言葉も貰い、涙が出そうだ。この異世界から離れるのは寂しいが、前を見るしか無い様だった。


「うわ、神殿は相変わらずですね」

「そうね……」


 神殿は昨日と特に変わっていなかった。柱もぼろぼろ。落書きの増えているよで、ベラだけでなく、司祭を馬鹿にしたような似顔絵もあった。趣味が悪すぎて、良い気分はしない。


「まあ、誰かいるかも。庭の方から音がするよ、行ってみましょう」

「おお」


 庭の方に行くと、意外な人物がいた。聖女ベラだった。昨日もここでベラの姿を見かけたが、一体何をしているのか?


 しかも土を掘り起こし、何か探しているようだった。生贄の被害者の白骨も見える。あまり良い場所でもないのに、ベラは一体何をしているの?


「何してるの?」

「あんたには関係ないでしょ!」


 ベラはあくまでも強気だ。意地もはっているのだろう。私の言う事は聞きそうにないので、イアンに頼んだ。


「ベラちゃん、どうしたたんだよ。イケメンの俺に話してみ?」

「イケメンとかキモいから! 自分で言うなっ!」


 それでも私よりはイアンには話す気になったらしい。


 ベラはここで友達の形見を探していると言う。一緒に生贄として呼ばれた友達の指輪。


 数年前、まだ子供だったベラは友達と共に生贄として誘拐された。それでもベラは司祭に気に良いられて聖女へ。一方友達は司祭に生贄とそて殺されたという……。


「だから私はバカな聖女のふりをしながら、司祭に復讐するチャンスを狙っていたのよ。許せない。許せないわ……」


 過去の辛い経験を話すベラは泣いていた。顔は涙や鼻水で酷い状態。アイドルのような聖女の面影はどこにもない。血の通った一人の人間だと思う。嫌いになれない。


「わたった。私も友達の形見を探す」

「俺も探すわ」

「は? あんた達にそんな事して何の得があるのよ?」


 何の得もない。徳も積まれないだろう。それでも目の前で泣いている人がいて、黙っていられない。


 腕まくりし、土を掘り起こした。爪に泥も入るし、多数の白骨を見るのは胸が痛いが、今はベラの事が大事だった。イアンも同じ気持ちだったらしい。イアンも服や手が汚れるのを気にせず、友達の形見を探していた。


 何時から探していたかわからない。すぐには見つからなかったが、もう諦めかけた時、土の奥に光っているものが見えた。指輪だった。


「ベラ、もしかしてこれは指輪?」

「う、嘘。これがそうよ……。ああ……」


 ベラはその場にしゃがみ込み、再び泣き始めてしまった。こんなベラを見ていたら、悲しくなってしまう。なぜか私も泣いてしまっていた。イアンも鼻をグズグズさせている。


「何であんた達も泣いてるのよ!」

「わかんない。ただ、あんたが可哀想で」

「同情とか要らないし!」


 相変わらずベラが意地を張っていたが、指輪が見つかった事で安堵したらしい。涙を止め、落ち着きを取り戻していた。


「指輪も見つかったし、私はこれから司祭に復讐しに行く」

「ちょ、ベラ辞めなよ、復讐なんて」

「そうっすよ。指輪が見つかったんならいいだろ。っていうか司祭の居場所は知ってるのか?」


 ベラはイアンには比較的心を開いていたようで、首を振っていた。


「知らない。でも司祭はカイリスの親戚だし、何か知ってるかもしれない」

「え、カイリスってあの会計士の?」

「そうよ。知らなかったの?」


 初耳だった。司祭とカイリスさんが親戚だったとは、一度も聞いた事はない。ナナさんからも聞いた事がない。もしかしたら、なんらかのの理由でカイリスさんは秘密にしていた?


「でも、本当に復讐なんてやめな。それでベラちゃんは幸せになれるかよ?」


 イアンはカイリスさんの事より、ベラの事が気になっていた。


「そうだよ。復讐してベラは幸せになれる? 友達は帰ってくる?」


 ベラは黙ってしまった。指輪を見つめながら再び泣きそうな目を見せていた。


「大丈夫。復讐は神様がやってくれるから。聖書にそう書いてあるから」

「は? 神様? 聖書?」

「聖女対決の時にいったでしょ。すごい最強の神様がいるって。神様のざまぁの方が何万倍怖いから」

「信じられない……」


 ベラの反応はもっともだったが、私達が無邪気なに神様の事を話すので、戦意も削がれてしまったらしい。復讐は辞めると言う。


「でも、これからどうしよう。お金は聖女時代の溜め込んだものがあるけど、この街で暮らすには無理ね……」


 ベラは今後の事を心配していた。思わずイアンと私は顔を見合わせる。どうやら同じ事を考えていたらしい。


「だったらゼレナ村に行ったら?」

「それがいい。ゼレナ村の宿場へ行ったらいいんじゃない?」


 ちょうどゼレナ村のラーラは、私達がいなくなって寂しいと手紙をくれていた。これはグッドアイディアだ。宿場にベラがいたら、ラーラとともに看板娘となるのも良いんじゃない?


「良いの?」

「宿場には手紙書いておくよ」

「それがいい。この街にいたら危険かもしれないし、ゼレナ村へ逃げた方がいいだろ?」


 結局、ベラはゼレナ村へ行く事を決めていた。食べ物が美味しい村だというと余計にやる気を見せていた。見た目と違って食い意地が張っているのかもしれない。


「ベラちゃん、もう復讐心なんて持つなよ。ベラちゃんが幸せになる事が一番良いんだから」

「う、うん……。ありがとう、さよなら」


 こうしてベラは去って行った。最初はとんでもない悪役だと思ったが、実際はそうでもなかった。私には心を開かなかったが、イアンには普通の娘らしい表情も見せていたし、ゼレナ村でも上手くやっていくだろう。


「でも私達は魔王を探さないと」

「そうだよな。復讐はしないけど、ラスボスの魔王を倒さんとな。エクソシスト討伐するぞ!」


 神殿では魔王の居場所は分からなかった。でも司祭とカイリスさんが親戚という情報を得た。司祭の居場所がわかれば、魔王の居場所もわかるかもしれない。


 私達は神殿から、郵便局へ行ってラーラに手紙を送ると、カイリスさんの会計事務所へ直行すた。


 呼び鈴を鳴らすが出てこない。扉は開けっぱなしだったので、勝手に入る事のした。


「いないわね……」


 事務所にカイリスさんの姿はない。ただ、事務所の壁に魔王を崇める護符などが壁に張ってあるのに気づく。癒しの祈りをした時はあっさり神様を信じていたはずだが……。


「聖衣、これ見てよ! カイリスさん、パン屋の会計も誤魔化してるよ?」

「え、どういう事?」


 イアンに手渡された帳簿を見ると、カイリスさんが色々と数字を誤魔化している証拠があった。パン屋の売り上げの一部をカイリスさんのポケットマネーのしている記録もあり、裏切られた気分だ。確かにみんな数字に弱いので、お金に関しては全部カイリスさんに丸投げしていたが……。


「カイリスさん、まさか裏切り者だったの?」

「ショックだよ、信頼してたのに!」


 珍しくイアンも怒り、地団駄を踏んだ時だった。


 事務所の扉が開いた。カイリスさんだけでなく、司祭までいた!


「そうさ、俺は裏切り者だよ!」

「お前達には死んで貰おう」


 大人二人に囲まれてしまい、私とイアンはあっという間に縛られ、薬を飲まされ眠らされた。


 どういう事?


 薄れゆく意識の中、死んでしまう未来しか見えなくなっていた。


 もう希望も消えそうだった。

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