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最強聖女〜異世界転移しましたが、このチートスキルは「聖」過ぎます〜  作者: 地野千塩


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第28話 異世界でも礼拝できます

 いよいよ明日、ナナさんのパン屋がリオープンする日だ。


 私はパン作りは諦め、接客や宣伝を中心に頑張ることになった。カイリスさんの協力もうけ、移動販売もできるようになったし、チラシも作ってくれた。


 今日はこのチラシを街中に配りに行ってへとへとだ。もっとも日本にいた頃は教会でチラシ配りの仕事もあったので、難しくはなかった。日本でも暗く棒読みで言っても受け取ってもらえない。明るく、堂々と笑顔で配っていると、興味を持ってくれる人も多かった。


 ナナさんやイアンは連日パン付作りでへとへと。明日の朝からもパン作りの本番となるので、今日は休んでいたが。


 ラインナップも日本のいた頃の高級食パン路線を参考にした。素材や製法にこだわった高級食パンを目玉にし、安価の黒パンや雑穀パンで入口を広げる戦略をとった。移動販売でも安価のパンを中心に売り、最終的に高級食パンに辿り着くようにする。


「そんな戦略で上手く行くかなぁ」


 ナナさんは、その点については不安そうだった。パン屋の二階のリビングで夕食をとった後、急に不安が襲ってきたらしい。


「大丈夫ですよ、ねえ、聖衣様」

「ええ。とにかくやってみないと! パンの味はパーフェクトなんだし、食べて貰えるチャンスがあれば、絶対に売れるから!」


 イアンと私は、鼻息荒く励ました。それにこの後、礼拝もやってみることにした。


 意外と思われるだろうが、礼拝は別にして教会で行わなくても良い。神様を信じた者が二人以上集まった場所なら、家でもパチンコ屋でもキャバクラでも神社でもどこでも良い。もちろん異世界パン屋の二階のリビングでもオッケーだった。そもそもこの異世界は一応宗教らしきものはあるが、教会は無い。


 礼拝といっても、讃美歌を歌って、祈るだけではあったが。あと私が知っている範囲で聖書の知識を語ったり。


 カイリスさんもこの礼拝に誘ったが、忙しいと断られた。なんの為にするのかと言われた。確かの礼拝をする理由を問われると難しい。日本でも個人的に神様を信じるだけの人たちも増えているらしいが。


「あれ? 讃美歌歌っていたら、なぜか気分が落ち着いてきたんだけど」


 不安そうにしていたナナさんだったが、讃美歌を歌った後、憑物がとれたような目をしていた。


「そうなのよ。人は元々神様を賛美するように創られたから、讃美歌歌うと元気になるんだよ」

「えー、私はこの世界の住人だよ。そんな神様に作られたとかわからない」


 ナナさんの突っ込みは、もっともだった。この世界や住人は一体誰が創ったのかは、全く解明できていない。とはいえ、やたらと共通点も多いし、全く関係がないという事はないかもしれない。


 今のところが、元いた世界のパラレルワールド説。悪魔が神様の真似して創った世界という仮説をたてていたが、真相は不明。この世界の謎については、仮説の段階で止まってしまっていた。


「でも、そんな神様に創られたと思うと自信が出てくるよ。俺も何か目的があって作られたのかな?」

「そうよ、イアン。神様は何の目的もなく何かを創ったりしない。イアンもきっと神様にやって貰いたいミッションがあるはず」

「そうか、そう思うと自信出てきたかも。私もパン屋としてのミッションがある?」


 何か悟ったようで、ナナさんの表情はさっきまでと別人だ。


「きっとそうだよ。そういう人間の才能は、全部神様からのもの。ナナさんもパン屋として、神様のミッションがあるはずだよ!」

「わー、なんかそう言われると、自信は出てきた! 大丈夫。きっと明日のリオープも大丈夫そう!」


 ナナさんのホッとした表情を見ながら、私も同じ気持ちだった。リオープンという大きなミッションがあるが、今は何の不安もなかった。こもミッションも神様から与えれたものと思えば、ナチュラルに自信も出てくるものだ。自己肯定感も神様からくる感じだ。


「俺の神様からのミッションって何なんだ? ナナさんはパン屋、聖衣様は癒しの賜物があるけど、俺は……」


 珍しくイアンはいじけていた。


「イアン君は、場を華やかにする力があるよ。つまりイケメンって事」

「ナナさんの言うとおり。イアンは、イケメンなのが才能かもよ? 賜物は人類全員に必ずあるから」


 それを悪用したのがホストの仕事だったわけだが、今は彼の持つ明るい空気感に私もだいぶ救われていた事に気づく。


「そうか。俺ってイケメンか?」

「だったら、近所のマダムや主婦の接客はイアンくんに頼もうかな」

「グッドアイデアですよ! イアンに接客されたら、女性は気持ちが華やかになるかも?」

「いや、聖衣様に褒められると照れるなー」


 珍しいイアンは顔を真っ赤にし、照れていた。という事でイアンはパン作りもしつつ、店の接客も担当する事になった。


「よし! 明日はみんなで頑張りましょう!」


 少し大きな声を出し、みんなで気合いも入れた。


 礼拝した後は全く不安もなくなった。心地よい緊張感があるだけだ。


 やっぱり礼拝は良いものだ。こうして皆んなと集まり、賛美して祈っているだけでも、心が満ち足りる。


 本当は教会で毎週日曜日の朝に礼拝したいものだが……。


 日本で一緒に礼拝を捧げていた仲間の姿も思い出す。普段はホームシックなんて全くなかったが、これだけは少し寂しくもなった。


 異世界にも教会があれば良いと思うが、そう思うのは、さすがにワガママ? 特に宗教が根付くガーリア地方で教会なんて建てられない。


 ちょっと頭の浮かんだ事だったが、必死に追い払っていた。

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