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最強聖女〜異世界転移しましたが、このチートスキルは「聖」過ぎます〜  作者: 地野千塩


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第13話 情報屋を探しましょう

 元いた世界にはレディファーストというものがあった。女性を前に行かせて歩かせるが、意外と起源は男尊女卑のものだったららしい。


 果たしてこの異世界は男尊女卑な所なのだろうか。ラーラ一家の様子を見る限りは、男女差などはなさそうだったが、スラム街に入った途端、イアンは私の前を庇うように歩き始めた。


 さっきまでは二人並んで歩いていたが、今は目の前にイアンの広い背中が見える。忠犬や残念イケメンだと思っていたものだが、こうして見ると男らしく頼れる存在なのか?


 もっとも、このイアンのおかげで、前を歩く時に不安は無い。ラブホテルや酒場だらけで、生ゴミが散乱している場所だったが、手の平の汗は止まっていた。


 まだ昼間だからか、スラム街の住人も大人しそうではあった。もっともゾンビや吸血鬼っぽい容姿の異世界人が路上で飲んだり、薬を吸っている姿を見るのは楽しくはない。薬も違法なものと思われる。現代日本では見られないような光景だったが……。


「イ、イアン。このスラム街っていつからあるの?」

「さあ。けっこう昔からあった気がするが、思い出せないな」

「思い出せない?」

「うん。幼少期の記憶とかも無いんだよな。気づくと王都で、城で働いていたというか?」

「な、何それ……」


 イアンに聞くと、なぜか幼少期も記憶の無い者も多いらしい。一説には魔法で記憶が制御されていると言われている。


「何の為に記憶が制御? 全く意味がわからない」


 生ゴミの匂いに鼻をつまみつつ、イアンに聞くが、本人は全くこの事は気にしていないようだった。これが異世界というものか。異文化過ぎるが、こんなものなのかもしれない。


「あ、あの子……」


 ラブホテルの側では、子供が一人踞っているのが見え、イアンとの会話を止めた。


「子供が倒れてるよ。助けなきゃ」

「いやいや、このスラム街では珍しい光景じゃないです。放っておきましょう。それに子供じゃなくて、小人族の女だ」

「小人族?」

「いわゆるホビット。変態魔族に人気で、身体売っている子も多い」

「そんな……」


 そんな話を聞くと、ますます放って置けない。見た目が子供というのも余計にそう思ってしまう。


「やっぱり、助けなきゃ……」

「今は情報屋を探す事を優先させましょう。元いた世界に帰りたくないんですか? それに助けてそれで終わり? 一旦身体が良くなっても、どうせこの街で身体売る生活です」

「でもイアンはその仕事辞めたでしょ」

「俺はいいんですよ。男だし、日雇いの仕事もいっぱいある。やっぱこの国は女より男の方が選択肢があるんです」


 この国は元いた世界のように男女平等が進んでいるわけでは無いようだった。悔しくなってくる。


 自分の行動は、かえって良くないのかもしれない。それでも、このまな小人族の女を放っておく事ができなかった。


 私はイアンの言葉など無視して小人族の女に近づいた。


 体格は小学三年生ぐらいとほぼ同じだったが、腕や足が炎症ができ、痛そう。小人族の身体賀どうなっているかは不明だが、性交渉でそうなった可能性も考えられ、心が痛む。


「あなた、大丈夫?」


 小人族の女と目線を合わせるようにしゃがみ、話しかけた。イアンは背後で何かブツブツ言っていたが無視だ。イアンに何を言われても、今はこの子を助けたい気持ちが勝った。


「大丈夫? 声は出せる?」

「う、うん……。でも私なんかを愛してくれる人なんていないから。みんな身体目当て。それにこんな風に稼いでいる私は、悪い子。もしかしたら村の人たちに石を投げつけられるかも」


 怯えて震ええていた。確かにそんな仕事は良くはないが、この子がは捨て犬のように見えてしまう。助けたい。助けなきゃ。身体の熱い思いに火がつき、私は必死に祈っていた。


「大丈夫。神様はあなたの事を許し、愛してるから!」


 最初はなかなか皮膚炎はしつこかった。何度か祈っても消えなかったが、神様の事を口にしたr途端、すーっと皮膚が癒されていった。


 この子には神様の概念や宗教については何も説明していない。それでも、何か伝わったのか、涙を流していた。


「大丈夫、大丈夫。そんな石を投げる村人なんていないから。大丈夫」

「え、ええ!」


 ようやくこの子の涙も止まり、立ち上がっていた。目に生命力も戻り、今にも駆け出しそうだ。


「聖衣様、やっぱり、優しいな……」


 イアンは呆れているような、複雑そうな表情を浮かべていたが、もう何も文句も言ってこなかった。


「私は宿場にいるから、また困ったら来てね」

「ええ、聖女様、ありがとう」

「いや、私は聖女様ではないんですが……」


 自分がこの子を癒した事は、長期的に見てよかった事かは謎だった。それでも元気そうに立っている姿を見ると、安心しかなかった。


「ところで、聖女様たちは何をしているの? こんな所に何か用?」

「実は……」


 手短に事情を説明すると、小人族のこの子は情報屋の家を知っているという。


「本当?」


 まさかの幸運だった。こんな幸運目当てに癒したわけでもないが、ありがたい。


「聖衣様、さっそく情報屋の家に行きしょう!」

「ええ、もちろん!」


 こうして小人族の女とも別れ、情報屋の家に行く事になった。


「ありがとう、聖女様」


 小人族の女からは、お礼と共に別れた。果たして本当に癒してあげた事は良かったのか。そに答えはわからないが、彼女を笑顔を見ていたらホッとしてきた。


「さすが聖衣様。すぐ癒せるとは!」

「さっきは放って置けって言ってなかった?」

「いや、やっぱり、助けてあげた方がいいかなって。長期的な事はともかく」

「本当に調子いいんだからー」


 そんな事を話しながら、情報屋の家に向かっていた。イアンも忠犬的な態度から、フランクになってきた気がする。やっぱ聖女扱いは勘弁すて欲しい。中犬的な態度も困る。イアンとは対等な友達になりたいと思っていた。

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