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三原色  作者: aoi
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集結

●緑 愛梛


「それでは運動会の実行委員会議を始めます」私は宣言した。


運動会の実行委員は各クラスから男女1名ずつ選出され、今日の会議は

・実行委員長の決定

・運動会のスローガンの決定

を生徒会が司会進行で会議を行い、細かい係決めは2学期が始まってから生徒会、実行委員と各委員会の委員長が内容を詰めていく。


「早速、実行委員長を決めていきましょう。誰か立候補する方はいますか?推薦でも良いですよ」


「私は……横溝君を推薦します」ゆかりが挙手をして、言った。


赤佐君がホワイトボードに横溝紅紫と書いた。


「推薦してくれてありがとう」横溝君が紫の方を見て言った後、私の方を見て、「実行委員長に立候補するよ。責任を持って、必ず良い運動会になるよう務める」


まだ立候補と推薦の段階だが、会議室の中はもう実行委員長は横溝君だと決定したような空気が漂っていた。


「分かりました。それじゃあ、実行委員長は横溝君で良いですか?」

と私が聞くと、実行委員達が私の方を見て頷いたり、“良いと思います”という返事が聞こえた。



「続いてはスローガン。入れたい言葉やスローガンがあったら言ってください」


「一致団結」山吹君が真面目な表情で言った。


「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンを入れたいです」紫が笑顔で言った。


「“勝利を掴め”を入れたいな。勢いづくし」横溝君が力強く言った。


「万里一空」瑠璃が静かに言った。


他の実行委員達も、案を出し合い決定したスローガン

“ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン 〜皆で勝利を掴め〜”

になった。中々決まらなかったので、横溝君の鶴の一声で決まった。


「これで委員長とスローガンが決まったので、明日の始業式に発表します。横溝君、皆の前で話すスピーチ考えておいてね」


「あぁ。任しとけ。皆の思い出に残る忘れられない運動会してみせるよ」


私は微笑みながら、横溝君の方を見て頷いた。

「それでは、今日はここまで。明日から2学期が始まります。元気に登校してきてくださいね。それでは解散」


私がそう言うと、実行委員たちは帰っていった。赤佐君がホワイトボードに書いてある内容を消しているので、私も手伝った。


「会長」赤佐君が視線をホワイトボードに向けたまま、静かに言った。「時間あります?話したいことがあって」


「何改まって。大丈夫だよ。話って何?」


「ここの片付けが終わった後、体育館裏の教員用駐車場に来てくれませんか?そこでお話が」


ここでは話せない内容だと察した私は、彼のお誘いに応じた。

校舎から出て、体育館裏に着いた私は、

「で、話って何?受験生は忙しいんだよ?」


「すいません。合わせたい人が居て。そろそろ来るはずです」


私は彼の予想外の返事に少々困惑した。私の気持ちを置き去りに赤佐君の後ろから現れたのは1人の女性。どこかで見たことがある。


「来ました、紹介します。記者の土田さんです」赤佐君が私の方を見て、女性を手で指しながら言った。


「記者の土田です。貴方が赤佐君が言ってた会長ね」土田さんが握手をしようと、手を差し伸べてきた。


「はい。緑愛梛と言います。失礼ですが、どこかでお会いしました?」私は握手をしながら言った。


「多分……図書館ね。貴方にも紙を渡した記憶がある」土田さんは笑顔で言った後、手を離した。


「思い出しました。私は友人を待ってて、その時に受け取りました」


「会長も受け取ってたんですね。今日はその件で話がありまして」赤佐君は続けた。「会長にも協力してほしいんです。この学校にいる火災事件の犯人探しに」


「どういうこと?うちの生徒が関わってるの?何で赤佐君は記者の人と知り合いなの?」私は赤佐君の方を見て言った。


「疑問だらけのようだから私から説明するね」土田さんが言った。「赤佐君とは8月1日に図書館の前で紙を配っている時に、声を掛けられたの」


「こんな回りくどい書き方じゃ情報は集まりませんよって言ってしまったんです」赤佐君は申し訳なさそうに言った。


「まぁその通りだから、言われてもしょうがないんだけどね。それで私と赤佐君で協力しようって決めたの。協力する理由は火災事件の説明の時にするから」


「わかりました」私は頷いた。


 「火災が起きたのは今から3ヶ月前、“フクシア”というレストランで起きた」土田さんが言った。

「火災の規模は小火。出火場所は建物の外側で店が燃えているのを見たお客さんの1人がパニックになって店から出ていこうとした。そのパニックが店にいたお客さん全員に感染っちゃって店全体がパニックになり、1つしかない出入り口に人が集中しちゃって、押されて転んだり、頭を打って怪我をしたりした人が出たんだけど結局火災は店長が消化器ですぐ消して建物は無事だったの。消防も警察もイタズラでやったんだろうって」


「それでうちの生徒とどう関わりがあるんですか?」


「小火が起きた場所の近くに、貴方達が通う学校の校章つきのボタンが落ちてたの。だから犯人じゃなくても、何か知ってるんじゃないかと思って、学生がよく行く図書館で情報を収集していたの。紙を配ってね」


「それで俺が困ってそうな土田さんを見て、思わず声をかけたんです。事件の話を聞いて生徒会なら協力できると。犯人なら突き止めるべきですし、潔白なら証明もできますし」


「そうだね」私は言った。「わかりました。私達生徒会も協力します。何か私達で出来ることはありますか?」


「それじゃ今、火災事件の詳細が書いてある紙を渡すから、学校の掲示板に貼って情報を求めてますって生徒会の方で発信してほしい」


「わかりました」赤佐君は土田さんの方を見て言った。「あの……聞きたいことがあるんですけど良いですか?」


「いいよ。何?」


「その同じ様な火災事件は起きてるんですか?連続性があるなら共通点を探せば犯人も見つかるかなって」


「いいえ。そのお店だけ。それ私も気になって調べたけど無かったから良く覚えてる」


「そうですか……他に土田さんが調べていて気になることはありませんでしたか?」赤佐君は考え込むような声で聞いた。


「あっそういえば」土田さんは言った。「レストランのオーナーは火災事件の被害届出さなかったらしいの」


「それは気になりますね」


「他にも調べて気になることがあったら知らせるね。それじゃ紙渡しとく。電話番号もその紙に書いてあるから。赤佐君達も何か分かったら連絡ちょうだい」土田さんが私に紙をくれた。


「分かりました。わざわざ来ていただいてありがとうございました」私は紙を受け取ると、深くお辞儀した。


土田さんは教員用の駐車場から出ていった。


「話ってこのことだったんだね」私は赤佐君の方を見て言った。


「はい。すいません、驚かせるようなことしてしまって」


「良いよ別に。うちの生徒が関わってるかもしれないことだもん、生徒会が責任を持って調べないとね」


「ですね。会長が受け取った紙、貼ってきます

「そう?じゃあお願いします」


「はい。それじゃあまた明日学校で。お疲れ様でした」

「じゃあね。お疲れ様」



私は校舎に入っていく赤佐君に手を振って、学校をあとにした。


●日記


8月31日(水) 曇のち晴れ


今日、私は学校に行った。

着々と話が進んでいく、順調すぎるくらいに。

絶対に仇は討つからね待っててね。

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