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三原色  作者: aoi
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邂逅

●山吹 薫


今日は蝉の鳴き声で人間の話し声が掻き消え、突き刺すような強い日差しで茹だるような暑さだ。

俺は赤佐を待つ間、木陰に隠れて暑さを凌いでいた。図書館の入口前で1人の女性が、歩いている人に紙を配っているのが見えた。ヒールが地面を叩く音がとても速く次々と配っているが、一人ひとりにはとても丁寧に話をしている。その女性の直向きさに見入っていると、目が合い、女性が小走りで近づいてきた。黒縁のメガネを掛けて、トートバッグを持っている。背は俺よりも少し低いくらいで、モデルのような綺麗な人だ。


「あの……これもし良かったら」と女性は天使のような笑顔で紙を渡すと、すぐに他の人の方へ行った。

俺は渡された紙の内容を見たが、意味が分からなかった。これから遅れてくる友人なら解いてくれるにちがいない。



「ごめん、遅れた」赤佐が俺の方へ走りながら言った。噂をすればだ。

「あぁ、大丈夫だ」俺は言った。「それよりさっき、お姉さんから紙を貰ったんだけどさ、これどういう意味だ?」

「なんだ?」赤佐は顰めるような顔で、俺の持っている紙を覗き込むように見た。


〈紙の内容〉

警官 (男性・32) 消防士 (男性・30) 医師 (女性・42)

シェフ(女性・35)サラリーマン(男性・23)大学生(女性・19)


心当たりのある方、情報求む。


「これは……謎解き……なのか?」赤佐は言った。


「全然どういう意味分からないんだよな」


「とりあえず、暑いから図書館に入ろう。暑い中待たせて本当にごめん」


「いや、日陰にいたから大丈夫だ」


俺達は図書館に入っていった。外の暑さから開放され、清々しい気持ちになった。

階段を昇って学習室を目指していると、ちょうど学習室から出ていく男性がいた。俺達に気付くと、笑顔で近付いてきた。


「横溝先輩」赤佐は静かな声で言った。


「もしかして、もしかすると赤佐君か。実行委員の顔合わせ以来だね


「お久しぶりです」赤佐は軽く会釈をして言った。


「こんな所で会うとはね。まぁ図書館だから会うか……早めの受験勉強かな?」


「いえ、夏休みの課題をやりにきたんです」


「そうだったのか。隣にいるのは山吹君だね?」


「はい。お久しぶりです」


「君も顔合わせ以来だね。皆で良い運動会にしよう」横溝先輩はいきいきとした声で言った。


俺は横溝先輩の勢いに圧倒された。隣を見ると、赤佐も同じ気持ちなのは見てすぐ分かる表情だった。


「そう言えば横溝先輩」俺は横溝先輩の方を見て言った。「図書館前で配ってた紙見ました?」


「いや、見てないな。見せてくれるか?」


「これです」俺は紙を渡した。


「へぇ〜面白いね」横溝先輩が続けて「謎解きゲームか何かかな?」


「横溝先輩もそう思いますか?」赤佐が言った。


「うーん、まぁでも俺は受験生だから、謎解きは君たち後輩にお願いするよ」そういうと横溝先輩は俺に紙を返した。


「お時間取らせてすいませんでした」


「いや、良いんだ。それでは失礼するよ」

横溝先輩は、トイレの方へ向かって行った。



「ごめん山吹」赤佐は慌てて言った。「急用を思い出した。後で連絡する」

そう言うと赤佐は、俺が声を掛ける間もない速度で階段を降りて、図書館から出ていった。



時は遡ること1時間前


●藍葉 紫


私と愛梛あんなは図書館の2階にある学習室に入ると、奥の方で見覚えのある女性が、6人がけの学習机にこっちを向いて座っているのが見えたので、驚かそうと静かに近付いた。


「瑠璃」私は静かに言った。

驚いた表情で私達を見ると「驚かさないでよ!心臓飛び出るかと思ったじゃん」

「ごめん、ごめん」


私と愛梛は瑠璃と向かい合うように座った。ノートや参考書、ペンなどを取り出していると

「そういえばさ、ゆかりを待っている時にこんなの渡されてさ」

愛梛がバックから取り出したのは、1枚の紙。


「謎解きゲームっぽいね。心当たりのある方情報求む……か」瑠璃は続けた。「警官と消防士が書いてあるから事件が起きたんだね。その心当たりがある方は情報教えてくださいねってことかな?」


「多分……ね。他の職業の人も事件に関わっている人っていうことだよね?」私は確かめるように言った。


「うん。シェフはレストランで場所を指してる。レストランで火災が起きて、消防士が来たんだね」愛梛が私と瑠璃の方を見て言った。


「で、医師が怪我人を治療した。サラリーマンと、大学生はなんだろう?」私は2人に疑問を投げかけた。


「火災の被害者じゃないかな」瑠璃は考え込んだ声で言った。「犯人がいるんだとしたら、紙には“犯人を探せ”とか書いてあるはずだし、情報を求むとしか書いてないから、これは……被害者なんじゃないかな」


「じゃあこの紙に書いてあるのは、サラリーマンと大学生の被害者を出した火災事件に心当たりがある人は情報求むってこと?」

愛梛は瑠璃の方を見て言った。


「うん。年齢も何十代とかじゃなくて、ハッキリ書いてあるということはそれを知る機会がある人。この紙を配ってる人はおそらく記者なんじゃないかな」瑠璃は言った。「愛梛と紫は心当たりある?」


「ううん」「ない」私と愛梛はそろって言った。


「私もない」瑠璃はキッパリ言った。「それじゃ、謎解きは終わりにして私達は受験生だから勉強しよう?」


●日記


8月1日 (月) 晴れ


今日も図書館に言った。

今日は、ようやく私の復讐に一歩近づく大きな出来事が起きた。

必ず私の手で復讐してやる






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