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声なき私の生きる場所  作者: 三月うみ
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プロローグ

 今日は快晴。白とグレーを基調としたホルボーン城が青の背景によく映えている。

 ホルボーン国は大陸の東に位置する、商売が盛んな国家である。現在の国王に代替わりしてからは隣国との交易にも力を入れ、「多くの友好国を持っている」と国外からの評価も少しずつ上がってきた。

 ホルボーン城の正門から伸びる大通りは城下町を貫き、その付近は商店街として栄えている。食料品、日用品、武器、防具、薬…なんでも揃うのがこの商店街の魅力である。商店街に店を構える商人たちは皆はつらつとしていて、城下町は活気に溢れていた。


「ミア様の馬車はもう出発したって本当かい?」


 肉屋を営んでいるふくよかな体型の女性がホルボーン城を見上げる。空は快晴だが、このところ城の周りはどこかどんよりとした雰囲気に感じられた。

 たしかに先日、ホルボーン城を専門にしている情報屋が「国王の息子トリアが自殺した」と号外を配っていた。国王の息子トリアは18歳。聡明で人当たりもよく、他国からの評判も良い。式典の際に国民の前に姿を見せた時はやさしくもさわやかな笑顔を見せ、女性たちが次々と心臓を射抜かれたと話題になった。次期国王として現国王から厳しく教育されていたと聞くが、トリアに一体なにがあったのか。そもそも国民にはその号外が真実なのかどうかを確かめることはできず、その後も正確な情報を知ることは叶わなかった。

 このどんよりとした雰囲気はそれが影響しているのだろうか。国民の間で憶測とデマが広がりつつあった。

 そんな国民に新たな情報が舞い込んだ。それは国王の娘で、自殺したとされるトリアの妹ミアが友好国であるトラぺティアに嫁ぐことが決まったというものだった。


「ああ、朝早くにな。パン屋の親父さんが仕込みの時に蹄の音が聞こえたって言っていたよ。」


 肉屋の奥から出てきた店主の男性は女性に答えながら煙草に火を付けた。パン屋の仕込みは朝が早い。そんな人の気配が少ない時間に王女はトラペティアに向かったということだろう。

 トラペティアはホルボーンから馬車で5日はかかる。交易の友好国ではあるが、人の交流は少なく、国民からすると「どこか遠い国」という印象でしかなかった。


「ああ、そうなのかい。きっとミア様もお心を痛められていると思うけれど、トラペティアでも頑張ってほしいねえ。」


 それでも自分の国の王女様が国から出て行ってしまう、それだけで女性をはじめ国民は少し寂しさを感じていた。


「どうかお元気で、ミア様。」

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