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前編

先にお伝え致します。

かなり、オチはバッドエンドです。

そんなん胸くそ悪いやん! と、思われない方のみ、お進み下さい。

 目覚めた時、私は泣いていた。

 また救えなかったからだ。

 前作で悪役令嬢として退場した、リアジニア・バートエル様を……。


 やり直しは決まって、リアこと、リアニジア様が断罪された、翌朝からである。これでもう4度目になるので、さすがに覚えた。間違いない。

 どうせなら断罪劇の前まで戻らせろよと思うが、どうやらゲーム終了後の世界にしか干渉できないようなのだ。


 私はセテカ・ヴァーサンレイ。

 男爵家の長女であり、ゲーム『薔薇王国の学園』略して薔薇学の主人公でもある。

 母が亡くなり後妻を迎えた父と、義母、その間に産まれた弟との4人暮らしだ。

 待望の長男誕生ということで寮付きの学園に追いやられた私だったが、持ち前のガッツと楽天的思考で苦難を乗り越え、出会ってしまった王太子様とイイ仲になってしまい、婚約者候補達を蹴散らしゴールインしたのが、前作のあらすじ。

 その時リアが、他の婚約者候補達を庇うようにして私の前に立ちはだかってしまったが為に、卒業パーティにて王太子セルジュから引導を下されてしまったのが、昨日の話である。

 今朝は、あの『昨日』から2年、遡っているけれど。

 私が高等2年生になり、リアが卒業だった年だ。


 引導の中身は、ゲームには出なかった。

『追って沙汰する!』とのみ告げられ、しおしおと退場したリアの後ろ姿が消えたら、2人の世界になり背景が変わって、エンドマークが付くというゲームだった。

 余韻少なめ、ある意味、清々しい。


 なので、そんな世界に転生してしまった主人公(元プレイヤー)としては、退場したリアの行く末が気になるのである。出来れば断罪を撤回して、元の生活に戻してあげたい、と、奮闘する日々なのだ。

 いや、リアに生まれ変わらせろよ、ってぇ話なんだけど。

 なんでセテカなのよ。

 まぁよくある乙女ゲームの主人公と違って、セテカは、ふてぶてしいし打たれ強いし男漁りしないし女受け良いし、かと思えば結構悩むし、なかなか人生ハードモードだったし。

 なんつーか、プレイしててセテカみたいな人生じゃなくて良かったと思うぐらい苦労人かつ、報われた時のハッピーエンドが本当に幸せになれるゲームだったのだ。

 逆ハーエンドが封じてある辺りも、好感度が高い。今どきは一途なキャラのがウケるし、キャラ全員攻略したいと思えば、それだけやり直せば済むことだ。


 どれだけ生まれ直しても、セルジュが恋人の設定は変わらない。私たちの愛は、揺るぎないものとなっている。

 つまり、前作の王道エンドは変えられないってことだ。


 それを覆して、謹慎処分を受けているリアを連れ出してセルジュをくっつけようと画策して、嫌われて捕まって火あぶりの刑に処されたり、娼館に売られようとしてるリアをセルジュに買わせようと目論んで、用心棒に見つかって殺されたり、島流しにされたリアを追って航海したは良いものの、嵐に遭って死んだりと、バッドエンドも甚だしい人生を繰り返している。


 これはもう、リアを救うことを諦めて、セルジュと仲良く平穏に過ごしたほうが良いのか? と、志を変えてみているのが、今回の人生なのだが……。


「時に」


 と、セルジュがお茶を飲む手を止めて、私に言う。


「リアジニア・バートエルを幽閉して2週間が経った。君は彼女に、どうなって欲しい?」


 ま た か よ。


 というセリフはおくびにも出さないが、転生してからこっち、リアのことを言おうが言おまいが、必ず話題に登り、選択させられるのである。

 ゲームか? 強制力とやらか?


「私ごときが願いを言える立場ではありません。真偽をつまびらかにし、然るべき御沙汰をお与えになるのがよろしいかと」


 内心ドキドキしながら受け答える。

 回答を丸投げしたのは、今回が初めてだ。


 前は恩赦を乞い、いくら君の頼みでも……と複雑な顔をされてしまった。

 ここからセルジュに嫌われ、バートエル家の不正までもが発覚し、処刑されるはめになったのだ。


 2度目は、諸悪の根源になった公爵家の剥奪を提案したが、なんと娼館送りとなった。

 3度目は、この国に縛られているから駄目なのかと考え、国外追放を提案し、島流しとなった。

 おかしいなぁ、国外追放になった悪役令嬢は、たいてい幸せになっているのに。


「真偽をつまびらかに……と言うことは、君は先だっての私の采配に、異論があるということか?」


 うわ、そう来たか。

 私は涼しい顔を決め込みつつも、内心、冷や汗ダラダラで応えた。


「いいえ。あの場をお治めになった殿下のなさりようは、ご立派でした。だからこそ御沙汰をくだすとなれば、より堅固な証拠が必要かと存じます」


「ふむ。証拠か……」


 と、私の言葉を飲んでくれたようなので、ホッとした。正解だったようだ。

 そんなこんなで、事あるごとに選択を迫られる。

 前世とは違った回答を出さないと、またバッドエンドに陥るので、こっちも必死である。リアを救いたい気持ちに変わりはないが、自分も殺されかねないので油断が出来ない。


 せっかく王太子様と恋仲になれてるなら、ちょっとぐらいキャッキャウフフさせろよ!

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