使えないと追放された操舵手が、実は最高ランクの冒険者でした
初投稿です。宜しくお願いします。
何番煎じか分からない追放ものです。
大陸アガリアレプト。
国家間のみならず、魔族を率いた魔王との戦争が繰り広げられている世界。
とある国の王は、魔王を倒す為、とある若者に聖剣を託した。
……実際には誰も抜けないと言われた聖剣を勝手に引き抜き、引き抜けたが為に委ねる他なかったのだが、それは国家機密事項である。
その若者は多少性格に問題はありつつも、”勇者”と呼ばれ魔王軍との戦争を続けていた。
その勇者達は今、とある街に向かって歩いていた。
「――あークソッ!! 役に立たねぇな!! お前はよぉ!! えぇ? エア?!! お前をクビにしても良いんだぞ!!」
怒鳴っているのは”勇者”ルーク。
後ろから付いてくる青年に声を荒げている。
「……」
エアと呼ばれたもっさりした髪の青年は身を縮め、ジッと耐えている。
背は高いのだが、眼を覆う髪に、自信なさげな態度が、彼を小さく見せていた。
「それに、戦闘になったら逃げまどってるだけだしね」
そうエアを軽蔑の表情で見ているのはシーフのステリス。
彼女の言う通り、エアは操舵手としては有能なのだが、戦闘においては役に立っていなかった。
「ステリスの言う通りですよ。私達は”勇者パーティー”なんですから、その一員であるならばそれなりに戦えないと困ります」
ステリスに続くのは、とある国の王女で、国に知らせず勝手にルークについて来たネレーだ。
魔術師として高い才能を持つ。
「まぁまぁ、彼がいないと飛空艇が誰が操縦するんですか?」
そうルーク達を嗜めるのは、教会より派遣された神官のリリアだ。
”勇者”達は特別に、技術大国であるコーデリアから飛空艇を譲り受けていた。
エアと呼ばれた青年は、その操舵手として冒険者組合で雇った人間である。
「ったく、少しは戦えねぇのか?! その腰の魔銃とやらはお飾りか?!」
ルークの言う通り、エアの腰には銃が装備してある……が、彼はそれを使うところを見た事がなかった。
「……悪い」
エアが謝ると、尚更ルークは怒り出す。
そしてとうとう堪忍袋の緒が切れたのか、
「――あぁもううぜぇなぁ!! 冒険者組合でもっと優秀な操舵手を雇うから手前はクビだ!!」
「……え?」
エアが驚くが、ルークは続ける。
「手前よりちゃんと戦える、臆病者じゃない奴を雇うっつってんだ! 冒険者組合も嘘吐きやがって! 何が『この大陸で一番腕の立つ操舵手ですよ』だ!!」
「ちょっとルークさん。それは止めた方が……」
リリアがチラリとエアを見る。
「あぁ?! いつも手前は突っかかってくるなぁリリア! お前は俺の仲間だろ?! 俺とコイツ、どっちの味方だ?! 俺だろ?!」
「……」
リリアが黙ると、ルークは「わかりゃいいんだよ」と言ってエアに向き直る。
「あーもう! 手前の顔なんざ見たくねぇ! 今すぐ俺の前から消えろ!!」
ルークの言葉に、エアは――
「分かった」
そう答え、腰にぶら下げた魔銃を手に取ると、上に掲げ、
パン!!
撃った。
魔弾が、空高く飛んでいく。
「な、び……ビビらせやがって! 何の真似だ?!」
「……暫くすればわかる」
「あぁ?! ――っ?!」
突如、突風が吹き荒れた。
そしていつの間にそこにいたのか、空からゆっくりと一隻の飛空艇が降りてくる。
白銀のボディの特徴的な形の飛空艇だ。
「……な、なんだ?!」
「何?!」
「飛空艇?!」
ルーク達が驚き、飛空艇を見上げていると、飛空艇はルーク達の前に着陸した。
「手前、この飛空艇はなん――ぶわっ?!」
ルークの顔に何かがぶつかり、ルークはそれを手に取る。
それは髪の毛だった。
ふと、ルークは横にいるエアを見る。
そこには、いつもの野暮ったい気弱そうな青年ではなく、目付きの悪い青年が不敵な笑顔を浮かべて立っていた。
「……おい、エア?」
ルークがエアに何かを言おうとした時、着陸した飛空艇のハッチが開き、中から人が出てくる。
それはまるで人形の様な、造花の様な美貌の白髪の少女だった。
少女はエア達の姿を視認すると、真っすぐエアの元に向かってきた。
「キョウ、迎えに来たわ」
「おう、待たせて悪かったな。アリサ」
エア――キョウと呼ばれた青年は、アリサと呼んだ少女に笑いかける。
「俺はクビだとよ」
「そ。……それはおめでとう」
表情を変えぬ儘、アリアが拍手をする。
「他の連中は?」
「中で貴方を待ってるわ。……”キャプテン”」
「その呼び方は止めろって言ってるだろ? 今の俺は”リーダー”だ」
「――おい! エア、これはなんだっつてるだろ!!」
怒鳴るルークを一瞥し、舌打ちしてから、
「説明する義理はねぇが、まぁ良いだろうさ。……エアなんて冒険者組合に登録された操舵手なんかいねぇって話だ」
「……は?」
「俺はあくまでも手前等のお守だ。”勇者”が魔王を倒そうって事になれば、人間同士の戦争も終わるだろうし、士気も上がるって事で、あの王様と冒険者組合に頼まれてな。俺が活躍しちゃ、”勇者”の名も形無しだろ?」
「はぁ?! 何を言って――」
「……はぁ、だからあれ程忠告したのに」
そうポツリと呟いたのはリリアだった。
「私ももう付き合いきれません。エアさ……キョウ様、私を貴方の飛空艇に乗せて貰って宜しいですか?」
「おう、お前さんなら歓迎だ」
キョウはすんなりと許可を出した。
「リリア?!」
「リリアさん?!」
「何を言ってるのリリア!!」
3人が戸惑いの声を上げる。
戸惑っている3人に、リリアは親切にも教えてあげた。
「皆様、あの紋章を見た事は?」
そう言って、眼の前に鎮座する飛空艇のボディに描かれた紋章を指差す。
「……まさか?!」
声を上げたのはステリスだった。
「あれは”白銀の翼”の紋章!! SSランクの冒険者?!」
「……なんですって?!」
「は?!」
ネレーも、ルークもその名を知っていた。
”白銀の翼”は、異質な冒険者チームだ。
冒険者には珍しく飛空艇を拠点としており、大陸中を股にかけて数多の活躍をしてきた元空賊の冒険者チームである。
過去の経歴には不明な点も多いが、人間の国家間での戦争や魔王軍との戦いでも華々しい戦果を挙げてきた。
所属するメンバーも有名な一級以上の冒険者達であり、特に魔銃を操る”リーダー”の強さは常軌を逸しているとも。
「つー訳だ。……ま、後は頑張ってくれ”勇者”サマ。早く魔王を倒さなきゃ、俺達が倒しちまうぜ? 別の国から依頼されてるしな」
「……は?!」
「行くぞ2人共」
「えぇ」
「はい」
驚き過ぎて何も言えない3人を尻目に、キョウはアリサとリリアを連れて飛空艇に歩き出す。
そして飛空艇の中に入り、操舵室に向かう。
そこには既に”白銀の翼”のメンバー全員が揃っていた。
「待たせたな野郎共。子守りは仕舞いだ。俺達への次の依頼は……『魔王軍の征伐』。だな? アリサ」
「えぇ、リーダー」
「良し! 稼ぎ時だ! 手前等気張れよ!!」
「「「「おおおおおぉぉぉぉっ!!」」」」
キョウは舵を握ると、操舵し始める。
その顔には獰猛な獣の様な笑みを浮かべていた。




