ポーカーフェイスな女神と終末のお笑いライブ
真がアパートに帰ると、神を名乗る二人がそこにいた。
「何だよアンタら、不法侵入!?」
「あなたが……だんでらいおんの、大野真ね?」
一人は白い翼を生やした金髪碧眼の天使のような少女、名前はリーチェ。無感動な瞳を動揺する真に向けて言った。
真は相方の実と、【だんでらいおん】というコンビ名で売れない芸人をやっている。実が書いてくるネタは『淀川の河童が恩返しに来た』『朝起きたら足がキャタピラになっていた』等々、奇抜なものばかり。
しかし、真はそれを指摘することができず絶賛迷走中。
そしてもう一人は白くて長い髪、髭、眉毛をモジャモシャと生やしたやたら背が低いお爺さんだった。少女の従者を名乗る彼は語り始めた。
「今日も地球のどこかで戦争により命が奪われ、環境破壊により多くの生物が絶滅の危機に瀕しておる……人類の手によって!」
「爺さん? ……急に重たい話を始めた!?」
「神々は罪深き人類を滅ぼすべきとする者と、存続させるべきとする者とで対立しておる。協議の結果、人類に試練を与える決断をしたのだ。
人類の手により『神々の長の娘・リーチェ様を笑わせることができたなら、存続を認める』――と」
リーチェは笑いという感情を持たずに生まれた。神々が手を尽くすも笑わせられる者はいなかった。そこで神々は人類に彼女を託すことにした。
「厳正なるくじ引きで人類代表に選ばれたのが、お主らじゃ。だんでらいおん」
「くじ引き!? 人類の行く末をいい加減な方法で決めるな!」
いろんな話を一度に聞き、真の精神は限界に達し頭を掻きむしる。
「話が大きすぎて実感がない……。ドッキリか何か……そうだ、そうに決まってる! ほら出ていけ、警察呼ぶぞ!」
「信じられぬか? やれやれ仕方ないのう、――あれを見るのじゃ」
従者は窓の外、夜空に浮かぶ満月を指差した。
次の瞬間、――満月が弾け飛ぶように消滅した!
翌日の朝。ニュースでも報じられ、世界中で大混乱が巻き起こった。
(俺らがウケなかったら、世界が滅亡する?)
尻に火が付いた真は相方の実とともに、リーチェを笑わせるために、必死になってネタ作りに励むこととなった。
極限の状況の中で、皮肉な事に【だんでらいおん】は芸人の高みへと駆けあがっていくのであった。
ジャンプSQの漫画「ショーハショーテン」と
なろラジの出したお題「ポーカーフェイス」というワードを
聞いて思いついたこの短編
こぼれ話は活動報告で!!